宿泊コラム

2025年7月7日

小樽で民泊開業！地域色を活かした運営の秘訣とは？

1.はじめに：小樽での民泊開業と地域性活用の重要性

小樽は、その美しい運河や歴史的建造物、豊かな食文化など、独自の魅力を持つ人気の観光地です。近年、この小樽で民泊事業の開業を検討される方が増えています。

ただ単に宿泊施設を提供するだけでなく、小樽ならではの地域特性を最大限に活かすことが、成功する民泊運営の鍵となります。

地域性を活用することには、以下のようなメリットがあります。

競合との差別化: 小樽ならではの体験を提供することで、他の宿泊施設との違いを明確にできます。
顧客満足度の向上: 旅の思い出に深く残る、地域に根ざした特別な体験を提供できます。
リピーターの獲得: 魅力的な地域体験は、再び訪れたいと思わせる強力な動機となります。
地域貢献: 地元の事業者と連携することで、地域の活性化にも繋がります。

小樽の持つポテンシャルを理解し、それを運営にどう落とし込んでいくかが、地域に愛され、選ばれる民泊となるための重要なステップと言えるでしょう。この記事では、小樽の地域特性を深掘りし、それを活かした民泊運営の具体的なアイデアや開業に向けた基礎知識について解説していきます。

2.小樽の地域特性分析：民泊運営に活かせる魅力とは

(1)歴史的建造物と街並み

小樽は、明治・大正期に北の玄関口として栄えた港町であり、その面影を残す歴史的建造物や独特の街並みが最大の魅力の一つです。特に、小樽運河周辺に立ち並ぶ石造倉庫群や、日本銀行旧小樽支店など、国の重要文化財を含む多くの歴史的建造物が点在しています。

これらの歴史的資源は、民泊のコンセプト設定やデザインに大いに活用できます。例えば、

外観・内装デザインへの反映: 築年数の古い物件であれば、梁や柱を活かしたレトロな雰囲気。新しい物件でも、小樽ガラスや木材を取り入れるなど、歴史や港町の雰囲気を意識したデザイン。
宿泊体験としての提供: 歴史的建造物自体をリノベーションした宿泊施設は、宿泊そのものが特別な体験となります。
景観への配慮: 周囲の歴史的景観に溶け込むような、落ち着いた外観や看板デザイン。

また、坂道が多く、港に向かって下っていく独特の地形も小樽らしさです。この街並みを活かした、散策マップの提供や、高台からの眺望を楽しめる部屋の提供なども検討できます。

活用例	具体的なアイデア
デザイン	石造り風の外壁、ガラス工芸の装飾、古材の利用など
体験	歴史建造物ガイド付き宿泊プラン、街歩きマップ提供など
情報発信	街並みの写真を多用したSNS投稿、歴史的背景の説明など

これらの要素を取り入れることで、小樽ならではの物語性のある民泊を提供し、宿泊客に深い印象を与えることが可能です。

(2)港町の食文化（海産物、日本酒など）

小樽は古くから港町として栄え、豊かな海の幸に恵まれています。新鮮な海産物は、小樽の食文化の大きな魅力の一つです。

豊富な海の幸:
- 新鮮な魚介類（寿司、海鮮丼など）
- ニシンやカニなどの特産品

また、小樽には歴史ある酒蔵があり、高品質な日本酒が造られています。

地元の日本酒:
- 小樽の伏流水を使った清酒
- 港町ならではの魚介に合う銘柄

これらの食文化は、民泊運営において宿泊客に提供できる貴重な体験となります。例えば、以下のようなサービスが考えられます。

提供サービス例	具体的な内容
食事提供（オプション）	地元漁港直送の魚介を使った朝食、地酒の試飲セット
体験プログラムの紹介・手配	寿司握り体験、酒蔵見学ツアー
地元飲食店情報の提供	おすすめの海鮮料理店、隠れ家的な居酒屋情報

新鮮な海の幸や地元の美味しいお酒は、小樽滞在をより印象深いものにし、リピートや口コミにも繋がりやすい魅力です。

(3)芸術・工芸（ガラス工芸、オルゴールなど）

小樽は、運河周辺を中心にガラス工芸やオルゴールなどの芸術・工芸が盛んな街としても知られています。多くの工房や体験施設があり、観光客に人気のアクティビティとなっています。

民泊運営において、この芸術・工芸の魅力を活かす方法はいくつか考えられます。

内装デザイン:
- 小樽ガラスを使った照明や装飾品の配置
- オルゴールのBGM導入
- 地元作家の作品展示
体験プログラムの提供:
- 近隣の工房と提携したガラス工芸体験やオルゴール制作体験の紹介・予約代行
- 民泊施設内で簡単な工芸体験ワークショップの開催（スペースがあれば）

連携できる施設例	特徴
北一硝子、大正硝子館	多彩なガラス製品、体験メニュー
小樽オルゴール堂	豊富なオルゴール、歴史的建造物
その他個人工房	個性的な作品、少人数制体験

こうした地域ならではの芸術・工芸要素を取り入れることで、宿泊体験に深みを与え、ゲストに特別な思い出を提供することができます。

(4)四季折々の自然とイベント

小樽は、季節ごとに異なる自然の表情を見せ、多様なイベントが開催される点も大きな魅力です。これらの要素を民泊運営に積極的に取り入れることで、ゲストに忘れられない体験を提供できます。

春: 桜の開花、新緑の美しい季節です。小樽公園などでの散策が楽しめます。
夏: 港まつりなどの活気あふれるイベントが開催されます。海水浴やマリンアクティビティも人気です。
秋: 紅葉が見頃を迎え、食欲の秋として海の幸や山の幸が豊富になります。
冬: 小樽雪あかりの路は、幻想的な雰囲気を演出し、国内外から多くの観光客が訪れます。スキーやスノーボードといったウィンタースポーツの拠点にもなります。

季節	自然の魅力	主なイベント例
春	新緑、桜	–
夏	港の賑わい、海	潮まつりなど
秋	紅葉、味覚	–
冬	雪景色、イルミ	雪あかりの路など

これらの自然美やイベントを、民泊施設の装飾、提供する情報、体験プログラムなどに反映させることで、ゲストは滞在中に小樽の「今」を感じることができます。季節ごとの魅力を最大限に活かし、リピーターを増やす工夫が重要です。

(5)アクセスの良さ（札幌からの近さ）

小樽は、北海道の中心都市である札幌からのアクセスが非常に良いという点も、民泊運営において大きな強みとなります。JR快速エアポートを利用すれば、札幌駅から約35分で小樽駅に到着します。この手軽さは、国内外からの観光客にとって大きな魅力です。

札幌を拠点に北海道観光を楽しむ旅行者が、日帰りではなく小樽に宿泊する選択肢を検討しやすくなります。例えば、以下のような旅行者層が考えられます。

札幌近郊に滞在し、小樽の夜景や食事を楽しみたい旅行者
札幌のイベントに合わせて来道し、前後に小樽観光を組み込みたい旅行者
新千歳空港から直接小樽へ向かい、旅の始まりや終わりに小樽を選ぶ旅行者

このように、札幌からの「近さ」は、小樽への滞在を促し、民泊の利用機会を増やす重要な要素となります。この利便性を前面に出した情報発信を行うことで、札幌観光との連携を意識した集客戦略を展開できます。

3.小樽の地域性を活かした民泊運営アイデア

(1)コンセプト設定：ターゲット層と地域体験の融合

小樽での民泊開業において、成功の鍵となるのは地域性を活かした明確なコンセプト設定です。どのような旅行者に小樽の魅力を体験してほしいのか、ターゲット層を具体的に定め、その層に響く地域体験を融合させたコンセプトを創り上げましょう。

例えば、以下のようなコンセプトが考えられます。

歴史好き向け: 築100年以上の古民家を改装し、当時の暮らしを追体験できる宿
グルメ旅向け: 地元の漁師や農家と連携し、新鮮な食材を使った料理体験を提供する宿
アート・工芸好き向け: ガラス工房やオルゴール堂巡りの拠点として、制作体験プラン付きの宿
自然満喫向け: 運河や港、近郊の山々を巡るサイクリングやハイキングツアーを企画する宿

ターゲット層のニーズと小樽ならではの地域資源を結びつけることで、単なる宿泊施設に留まらない、思い出に残る滞在を提供できます。

コンセプト設定のポイント：

ターゲット層の年齢、興味、旅行スタイルを明確にする
小樽の地域資源（歴史、食、文化、自然など）を深く理解する
競合施設との差別化を図る独自の強みを見出す

明確なコンセプトは、その後の施設デザインや提供サービス、情報発信の一貫性を保つ上で非常に重要となります。

(2)施設デザイン：歴史的景観や港町を意識した内装

小樽の民泊施設では、その独特の歴史的景観や港町の雰囲気を内装デザインに取り入れることが重要です。ゲストに深い印象を与え、特別な滞在体験を提供することができます。

具体的には、以下のような要素を取り入れることが考えられます。

素材選び:
- 古い倉庫を思わせるレンガ調の壁紙や木材
- ガラス工芸品を取り入れた照明や装飾
- 船具や港に関連するモチーフ（ロープ、浮き球など）
カラートーン:
- 石造りの建物に合わせた落ち着いたグレーやベージュ
- 海や港を連想させるブルーやネイビー
- 歴史を感じさせるセピアトーン

以下のような内装デザインの方向性も有効です。

コンセプト	特徴
ノスタルジック・モダン	歴史的要素と現代的な快適性の融合
ポートサイド・シック	港町の活気と洗練された雰囲気の表現
アーティスト・ロフト	ガラス工芸などを意識したクリエイティブ空間

これらの要素を組み合わせることで、小樽ならではの魅力を最大限に引き出した、記憶に残る民泊空間を創出できるでしょう。

(3)提供サービス：地域食材を使った食事、体験プログラムの企画

小樽での民泊体験をより豊かなものにするために、地域ならではの食や体験をサービスに取り入れることは非常に有効です。

食事サービス例

朝食:
- 近隣の市場で仕入れた新鮮な海産物を使った海鮮丼や焼き魚
- 小樽のパン屋さんやカフェと提携した、地元の食材を取り入れたパンやスイーツ
夕食:
- 小樽の地酒と合わせた、地元の旬の食材を使ったお弁当やケータリング（提携店舗による）
- 近隣の飲食店マップ提供と割引クーポン配布

体験プログラム例

体験内容	特徴
ガラス工芸体験	小樽らしいものづくり体験
寿司握り体験	港町ならではの食文化に触れる
地酒蔵見学ツアー	小樽の歴史ある酒造りを学ぶ
漁港見学＆競り見学	活気ある港町の日常を垣間見る（早朝）

これらのサービスを通じて、ゲストは小樽の魅力を深く体験し、思い出に残る滞在となるでしょう。地元の事業者と連携することで、地域経済への貢献にもつながります。地域の魅力を最大限に引き出す企画を検討しましょう。

(4)情報発信：地域の魅力と連携したプロモーション

小樽での民泊運営において、情報発信は集客の要となります。単に宿泊施設として紹介するだけでなく、小樽の豊かな地域性を前面に出したプロモーションが重要です。

魅力的なコンテンツ作成:
- 歴史的建造物、港の風景、ガラス工芸体験など、小樽ならではの体験を写真や動画で発信します。
- 季節ごとのイベントや旬の味覚情報と連携させ、訪問意欲を高めます。
地域との連携:
- 地元の飲食店や体験施設と協力し、共同でプロモーションを実施します。
- 地域イベントへの参加や情報発信を通じて、コミュニティの一員としての存在感を示します。

発信媒体例	内容例
自社Webサイト・SNS	宿泊施設の詳細、小樽観光情報、体験レポート
観光情報サイト	地域のおすすめスポット紹介と連携
旅行予約サイト	地域色を強調したキャッチコピー

このように、小樽の魅力を最大限に引き出し、地域と連携した情報発信を行うことで、ターゲット層に響く効果的なプロモーションが可能となります。

4.小樽で民泊を開業するための基礎知識

(1)民泊新法に基づく届出

小樽市で民泊を開業するには、まず「住宅宿泊事業法」（通称：民泊新法）に基づく届出が必要です。これは、年間180日という上限内で住宅を活用して宿泊サービスを提供する際の基本的なルールとなります。

届出を行うことで、合法的に民泊を運営できるようになります。主な届出事項は以下の通りです。

届出者の氏名または名称、住所
住宅の所在地
施設の図面
管理者の情報（委託する場合）

届出書類は、住宅が所在する都道府県知事等（小樽市の窓口は市役所）に提出します。

届出が受理されると、住宅宿泊事業届出番号が付与されます。この番号は、広告やウェブサイトに表示することが義務付けられています。

手続き	担当窓口
届出書の提出	小樽市役所（担当部署を確認）
届出番号の取得	小樽市役所より交付

この届出は、民泊事業を開始するための第一歩であり、遵守すべき重要な手続きです。適切な手続きを踏むことで、安心して事業を進めることができます。

(2)小樽市独自の条例・ルール

小樽市で民泊事業を行う際には、民泊新法（住宅宿泊事業法）に基づく届出に加え、小樽市独自の条例やルールを確認する必要があります。

小樽市では、良好な住環境の保全などを目的として、住宅宿泊事業に関する条例を定めています。主な規制内容としては、以下の点が挙げられます。

実施可能区域の制限: 住居専用地域など、事業を実施できない区域が定められています。
期間制限: 年間180日以内という国の制限に加え、市独自の期間制限が課される場合があります。
標識の掲示: 事業施設である旨を示す標識の掲示が義務付けられています。
近隣住民への説明: 事業開始前に近隣住民へ十分な説明を行うことが求められます。

これらの詳細は、小樽市の公式ウェブサイトなどで必ず最新の情報を確認してください。条例やルールに違反した場合、罰則の対象となる可能性がありますので、事前にしっかりと把握し、適切な手続きを行うことが重要です。地域のルールを遵守し、地域住民との良好な関係を築きながら事業を進めていきましょう。

(3)消防法に関する規制と手続き

民泊施設は消防法令上の「簡易宿所」に該当する場合が多く、火災予防のための様々な規制があります。お客様の安全を確保するため、開業前に必ず確認し、必要な手続きを行いましょう。

主な規制と手続きは以下の通りです。

自動火災報知設備の設置: 延べ面積や構造に応じて必要となる場合があります。
消火設備の設置: 消火器の設置場所や種類などが定められています。
避難経路の確保と表示: 誘導灯の設置や避難経路図の掲示が必要です。
消防機関への届出: 消防用設備の設置届や防火対象物使用開始届などを提出します。

手続きの種類	提出先	提出時期
消防用設備等設置届出	消防署	設置工事着工前
防火対象物使用開始届出	消防署	使用開始の概ね7日前まで
消防法令適合通知書交付申請	消防署	民泊新法の届出に必要な場合（任意の場合あり）

小樽市消防本部のWebサイトや窓口で、具体的な基準や手続き方法を確認してください。建物の構造や規模によって必要な設備や手続きが異なるため、専門家（消防設備士など）に相談することも重要です。お客様が安心して滞在できるよう、消防法令を遵守した安全対策を徹底しましょう。

(4)事業計画の策定と資金計画

小樽での民泊開業を成功させるためには、しっかりとした事業計画の策定が不可欠です。まずは、ターゲット顧客層、提供するサービス内容、料金設定などを具体的に計画します。

事業計画の主な項目
- コンセプト・ターゲット設定
- 提供サービス詳細（宿泊、体験など）
- 料金体系
- 集客・プロモーション戦略
- 収支計画（売上予測、経費）

次に、開業に必要な資金を計画します。物件取得・改修費用、備品購入費、許認可申請費用、当面の運転資金などが含まれます。自己資金のほか、金融機関からの借入や補助金・助成金の活用も検討すると良いでしょう。特に、歴史的建造物の改修などには、小樽市独自の支援制度がある場合もありますので、情報収集が重要です。

資金項目例	費用目安
物件取得・改修費	数百万～数千万円
備品購入費	数十万～数百万円
許認可・申請費	数万円～数十万円
運転資金（3～6ヶ月）	数十万～数百万円

計画に基づき、資金調達を進め、余裕を持った資金計画を立てることが、安定した運営への第一歩となります。

(5)地域住民との連携

小樽で民泊を運営する上で、地域住民との良好な関係構築は非常に重要です。騒音やゴミ出しなど、近隣トラブルを防ぐための配慮はもちろん、積極的に地域と関わることで、民泊の運営がより円滑になり、ゲストに提供できる体験の質も向上します。

具体的な連携方法としては、以下のようなものが考えられます。

事前の説明と挨拶
- 開業前に近隣住民へ民泊の概要や緊急連絡先などを説明します。
- 日頃から挨拶を交わし、良好な関係を築きます。
地域情報の共有
- 地域のイベント情報やおすすめのお店などをゲストに積極的に案内します。
- 地域のお店と提携し、割引などの特典を提供するのも良いでしょう。
地域活動への参加
- 清掃活動や祭りなど、地域のイベントに積極的に参加します。

連携のメリット	具体例
信頼関係の構築	トラブル発生時の円滑な解決
質の高いゲスト体験提供	地元ならではの情報提供、体験プログラム連携
事業の持続可能性向上	地域に根差した運営、口コミの促進

地域住民との連携は、単なる義務ではなく、小樽という魅力的な地域で民泊事業を成功させるための重要な戦略の一つです。