宿泊コラム

【民泊廃止届】提出前にココを確認!失敗しない手続きの注意点

【民泊廃止届】提出前にココを確認!失敗しない手続きの注意点

1.はじめに:民泊廃止届の重要性とこの記事でわかること

民泊事業を廃止する際、「民泊廃止届」の提出は、単なる事務手続きではありません。これは、旅館業法や住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき、事業者が法的な義務を果たすための極めて重要なステップです。適切な手続きを怠ると、予期せぬトラブルや罰則に繋がる可能性があり、事業の円滑な終了を妨げることになります。

本記事では、民泊運営者が事業廃止を決断した際に、どのような点に注意し、どのような手順で手続きを進めるべきかを網羅的に解説します。

具体的には、以下の内容を詳しくご紹介します。

  • 廃止届の基本事項:提出義務者、提出先、提出期限
  • 必要書類と手順:書類作成の注意点、提出方法
  • 関連する手続き:税務、契約解除、原状回復など
項目内容
廃止届の目的法的義務の履行、トラブル回避
記事の目的円滑な廃止手続きのための情報提供

この記事を通して、民泊廃止に伴う手続きをスムーズに進め、安心して事業を終了できるようサポートいたします。

2.民泊廃止届を提出する前に確認すべき基本事項

(1)廃止届が必要なケースとは?

民泊事業を終了する際には、特定の場合に限り廃止届の提出が義務付けられています。主に以下の状況が該当します。

  • 民泊事業を完全に終了する場合
    • 自宅の売却、賃貸契約の終了などにより、民泊施設としての利用を完全に停止するとき。
    • 経営上の理由や個人の都合により、民泊事業から撤退するとき。
  • 届出住宅としての利用を停止する場合
    • 民泊事業は継続するものの、届出住宅(住宅宿泊事業法に基づく民泊)としての利用をやめ、他の用途に転用するとき。例えば、自己居住用に戻す、通常の賃貸住宅として貸し出す、店舗に改装するなどです。

特に以下の表にまとめたような状況では、廃止届の提出を失念しがちですのでご注意ください。

状況廃止届の必要性補足
建物売却必要新所有者が民泊を継続しない場合
自己居住への転用必要一時的であっても届け出が必要です
無許可営業への切り替え不要ただし違法行為となり罰則の対象です

いずれのケースも、事業終了後速やかに手続きを行うことが重要です。

(2)提出義務者と提出先

民泊の廃止届は、旅館業法に基づく許可を受けていない「住宅宿泊事業」を行う事業者が提出する義務があります。この届出義務を負うのは、住宅宿泊事業法における「住宅宿泊事業者」です。具体的には、民泊施設を運営していた個人または法人がこれに該当します。

提出先は、都道府県知事(保健所設置市や特別区の場合は市長や区長)です。通常、民泊施設が所在する地域の管轄窓口へ提出します。多くの場合、各自治体の担当部署(例:観光課、生活衛生課など)が窓口となります。

以下に一般的な提出先を示します。

運営形態提出義務者提出先
個人事業主民泊施設の所有者または賃借人施設所在地を管轄する都道府県・市区町村
法人運営法人施設所在地を管轄する都道府県・市区町村

提出方法には、オンライン、郵送、窓口持参などがありますが、自治体によって対応が異なりますので、事前に確認することをおすすめします。

(3)提出期限はいつまで?

民泊の廃止届は、旅館業法や住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき、事業を廃止した日から「10日以内」に提出することが義務付けられています。この期限は非常に重要であり、遅延なく提出することが求められます。

具体的な提出期限は、事業形態によって以下の表のように整理できます。

事業形態根拠法規提出期限
旅館業(簡易宿所など)旅館業法廃止後10日以内
住宅宿泊事業(民泊新法)住宅宿泊事業法廃止後10日以内

この「廃止した日」とは、実際に営業を停止し、事業を終了した日を指します。例えば、最終の宿泊者がチェックアウトした日や、賃貸契約を解除した日などが該当します。

提出期限を過ぎてしまうと、行政指導の対象となるだけでなく、場合によっては罰則が科される可能性もありますので注意が必要です。事業の廃止を決定したら、速やかに手続きを進めるためのスケジュールを立てることをお勧めします。

3.民泊廃止届の提出に必要な書類と手順

(1)主な必要書類一覧

民泊の廃止届を提出する際に必要となる主な書類は以下の通りです。

  • 住宅宿泊事業廃止届出書:所定の書式に、氏名(法人名)、住所、届出番号、廃止年月日、廃止理由などを記載します。各自治体のウェブサイトからダウンロードできることが多いです。
  • 添付書類
    • 届出番号が確認できる書類の写し:住宅宿泊事業の届出番号が記載された書類(例:届出住宅情報通知書)のコピーを添付します。
    • 本人確認書類の写し:個人事業主の場合は運転免許証やパスポートなどのコピー、法人の場合は履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)などが必要となる場合があります。

自治体によっては、上記の他に以下のような書類の提出を求められることもあります。

書類名備考
委任状代理人が提出する場合
住民票の写し個人の場合
登記事項証明書法人の場合
旅館業営業許可証の写し旅館業に切り替える場合など、特定のケース

事前に管轄の自治体窓口やウェブサイトで必要書類を必ず確認し、不足がないように準備を進めましょう。

(2)書類作成時の注意点

民泊廃止届の書類作成にあたっては、以下の点に特にご注意ください。記載漏れや誤りがあると、手続きが滞る原因となります。

  • 正確な情報記入
    • 届出者の氏名・住所、施設の所在地、届出番号など、記載事項は正確に記入しましょう。特に、届出番号は間違いやすいので、交付された書類で確認してください。
  • 添付書類の確認
    • 自治体によっては、廃止届以外に「民泊事業を廃止したことがわかる書類」の添付を求められる場合があります。例えば、賃貸契約の解約書や、管理委託契約の終了通知などが該当します。事前に提出先の自治体のウェブサイトなどで確認し、不足がないように準備しましょう。
  • 記載例の活用
    • 多くの自治体では、廃止届の記載例をウェブサイトで公開しています。これらを参考にすることで、記入ミスを防ぎ、スムーズに書類を作成できます。不明な点があれば、提出先の自治体の窓口に問い合わせるのが確実です。

以下に、特に注意したい記入項目をまとめました。

項目注意点
届出番号交付された届出書で正確に確認
廃止年月日事業を終了した正確な日付を記入
添付書類自治体指定の追加書類を漏れなく準備

これらの点に注意し、不備のない書類作成を心がけましょう。

(3)提出方法と流れ(オンライン/郵送/窓口)

民泊廃止届の提出方法は、主に以下の3通りがあります。提出先となる自治体によって対応している方法が異なるため、事前に確認が必要です。

提出方法特徴
オンライン民泊制度運営システムを通じた提出が可能です。システム上で必要事項を入力し、書類をアップロードします。24時間いつでも手続きでき、手続き状況の確認も容易です。
郵送必要書類を揃え、簡易書留など追跡可能な方法で自治体の担当部署へ郵送します。郵送の場合、書類不備があると返送され、再提出に時間がかかる可能性があります。余裕を持った手続きを心がけましょう。
窓口自治体の担当窓口に直接出向いて提出します。不明な点があればその場で質問できるメリットがありますが、窓口の受付時間内に訪問する必要があります。本人確認書類の持参を求められる場合があります。

いずれの方法でも、提出後に自治体から確認の連絡が入る場合があるため、日中連絡の取れる電話番号を記載するようにしてください。控えが必要な場合は、事前にコピーを取っておくか、窓口で受領印をもらうようにしましょう。

4.廃止届提出に伴うその他の手続きと注意点

(1)税務上の手続き(個人事業の廃業届など)

民泊事業を廃止する際には、税務上の手続きも忘れてはなりません。特に、個人事業主として民泊を運営されていた方は、所轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。

【主な提出書類と提出先】

書類名提出先提出期限
個人事業の開業・廃業等届出書所轄税務署廃業後1ヶ月以内(原則)

この届出書は、事業を廃止した旨を税務署に知らせるための重要な書類です。提出を怠ると、税務署が事業継続中と認識し、不要な税務調査や書類送付が発生する可能性があります。

また、消費税の課税事業者であった場合は、「消費税課税事業者選択届出書」や「消費税の還付申告に関する明細書」などの提出も必要になる場合があります。消費税の還付申告は、廃業に伴う設備売却などで消費税の還付が発生する場合に検討できます。

これらの手続きは、所得税や消費税の確定申告とは別に必要となるものです。不明な点があれば、税務署や税理士に相談することをお勧めします。適切な手続きを行うことで、将来的な税務上のトラブルを未然に防ぐことができます。

(2)契約解除に関する注意点(賃貸契約、管理委託契約など)

民泊を廃止する際は、関連する各種契約の解除手続きを適切に行う必要があります。特に以下の契約については、トラブルを避けるためにも事前の確認と慎重な対応が求められます。

契約の種類確認すべきポイント
賃貸契約・解約予告期間(通常1~3ヶ月前)
・敷金返還条件、原状回復義務
管理委託契約・解約予告期間、違約金の有無
・管理費の精算、鍵の返却
清掃委託契約・解約予告期間、残債の有無
インターネット契約・解約金、工事撤去の要否

これらの契約にはそれぞれ解除条件や違約金に関する規定が設けられていることが多いため、必ず契約書の内容を十分に確認してください。特に解約予告期間を遵守しない場合、余計な費用が発生する可能性があります。また、書面による通知が必要なケースも多いため、口頭でのやり取りだけでなく、記録を残す形で手続きを進めることをお勧めします。契約内容が不明な場合は、弁護士や専門家への相談もご検討ください。

(3)設備撤去・原状回復について

民泊を廃止する際は、宿泊施設として設置していた設備(例:寝具、家電、家具など)の撤去と、物件の原状回復が必要です。特に賃貸物件の場合は、賃貸借契約書に記載された原状回復義務を遵守しなければなりません。

具体的な注意点は以下の通りです。

  • 撤去対象の確認
    • 民泊用に導入した物品はすべて撤去します。
    • 残置物がないよう徹底しましょう。
  • 原状回復の範囲
    • 入居時の状態に戻すのが原則です。
    • 壁や床の損傷、水回りの汚れなども修繕が必要です。
確認事項詳細
賃貸借契約書原状回復義務の範囲、特約事項を確認します。
管理会社/大家事前に相談し、撤去・回復作業のスケジュールや方法を共有しておきましょう。

専門業者に依頼する場合は、早めに見積もりを取り、日程調整を進めることが重要です。完了までには一定の時間と費用がかかるため、余裕を持った計画を立てましょう。

(4)ゲストへの対応(予約キャンセル、返金など)

民泊の廃止に伴い、最も重要かつデリケートなのが既存ゲストへの対応です。円滑な閉鎖のためにも、以下の点に注意し、ゲストとのトラブルを未然に防ぎましょう。

1. 予約キャンセルと返金

  • 速やかな連絡: 廃止が決定したら、すぐに予約済みのゲスト全員に連絡し、廃止の旨と予約キャンセルが必要なことを伝えます。
  • キャンセルポリシーの確認: 利用している予約サイト(例:Airbnb、Booking.comなど)のキャンセルポリシーを確認し、それに従ってキャンセル手続きを進めます。
  • 返金手続き: ゲストからの支払いがあった場合は、速やかに全額返金します。予約サイトを通じて行われることがほとんどですが、直接決済の場合は振込手数料なども考慮し、明確な返金計画を伝えましょう。

2. 代替宿泊先の提示(任意)

義務ではありませんが、ゲストの利便性を考慮し、可能であれば近隣の代替宿泊施設をいくつか提示すると、より丁寧な印象を与えられます。

3. 連絡手段の確保

廃止後も一定期間、ゲストからの問い合わせに対応できるよう、連絡手段(メールアドレスなど)を確保しておくことをお勧めします。

【対応例】

対応項目詳細
予約キャンセル廃止届提出前に全予約をキャンセル
返金速やかに全額返金、手数料負担も考慮
連絡先廃止後も問い合わせ対応可能な連絡先を用意

これらの対応を誠実に行うことで、ゲストからの信頼を損なわず、スムーズな廃止を実現できます。

5.よくある疑問とトラブル回避のポイント

(1)廃止届提出後の再開は可能か?

民泊の廃止届を提出した後、再度民泊事業を始めたいと考えるケースもあるでしょう。結論から申し上げますと、一度廃止届を提出しても、改めて申請手続きを行うことで、民泊事業の再開は可能です。

ただし、再開時には以下の点にご留意ください。

  • 新規申請扱いとなる: 廃止届を提出した時点で、その物件での民泊事業の許可は取り消されます。そのため、再開する際は、完全に新規の民泊事業として、改めて都道府県知事等への届出(住宅宿泊事業法に基づく届出)が必要となります。
  • 必要な書類も再度準備: 新規申請と同様に、住民票、物件の登記事項証明書、消防法令適合通知書など、すべての必要書類を再度準備し、提出しなければなりません。
  • 適用される法令: 再開時の申請は、その時点での最新の住宅宿泊事業法や関連条例が適用されます。以前廃止した時点から法令が改正されている可能性もあるため、最新情報を確認し、それに準拠した準備が必要です。
確認事項内容
申請区分新規申請として扱われる
必要書類全て再提出が必要
適用法令再開時点の最新法令に準拠

このように、廃止後の再開は可能ですが、新規事業と同等の時間と手間がかかることを理解しておくことが重要です。安易な廃止届の提出は避け、将来的な事業計画を慎重に検討することをお勧めします。

(2)提出を怠った場合の罰則

民泊事業を廃止したにもかかわらず、廃止届の提出を怠った場合、民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づき、罰則が科される可能性があります。これは、事業の適正な管理と監督を目的とした法律であり、無届けのまま事業を放置することは、行政が事業の実態を把握できなくなるため、厳しく規制されています。

具体的には、以下のような罰則が規定されています。

  • 罰則の種類
    • 改善命令:都道府県知事等から事業の適正化を求める命令が出されることがあります。
    • 業務停止命令:悪質な場合は、事業の停止を命じられることがあります。
    • 過料:最大で30万円以下の過料が科される可能性があります。
    • 罰金・懲役:特に悪質な場合や、虚偽の届出を行った場合などは、より重い罰則(例:1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方)が適用されるケースもあります。

罰則の適用は、提出遅延の期間や悪質性、是正措置の有無など、個別の状況によって判断されます。無用なトラブルや経済的負担を避けるためにも、廃止が決定したら速やかに届出を行いましょう。

(3)専門家への相談のメリット

民泊の廃止手続きは、届出提出だけでなく税務、契約、ゲスト対応など多岐にわたります。特に複雑なケースや時間がない場合には、専門家への相談を検討することをおすすめします。

<相談できる専門家と主なメリット>

専門家主なメリット
行政書士・廃止届の手続き代行
・必要書類の準備サポート
・自治体との調整
税理士・廃業に伴う税務申告の助言
・所得税や消費税に関する相談
・個人事業の廃業届提出サポート
弁護士・賃貸契約や管理委託契約の解除交渉
・ゲストとのトラブル解決
・法的なリスク回避のアドバイス

専門家に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 正確な手続きの遂行: 複雑な手続きをミスなく進められます。
  • 時間と手間の削減: 煩雑な作業から解放され、本業に集中できます。
  • トラブルの未然防止: 予期せぬ問題発生のリスクを低減できます。

費用はかかりますが、安心して廃止手続きを完了させるための有効な手段となります。ご自身の状況に応じて、適切な専門家にご相談ください。

6.まとめ

民泊運営の廃止届は、単なる書類提出に留まらない重要な手続きです。提出を怠ると罰則の対象となるだけでなく、税務処理や関連契約の解除、ゲストへの対応など、多岐にわたる問題が発生する可能性があります。

スムーズな廃止手続きのためには、以下のポイントを事前に確認し、計画的に進めることが肝要です。

  • 廃止届の基本事項確認: 提出義務者、提出先、提出期限
  • 必要書類の準備: 漏れなく正確に作成
  • 関連手続きの実施:
    • 税務上の廃業届
    • 賃貸契約や管理委託契約の解除
    • 設備撤去・原状回復
    • 既存予約のキャンセル・返金対応

廃止届は、民泊事業の最終的な区切りをつけるための不可欠なステップです。不明な点があれば、行政機関や専門家へ早めに相談し、適切な手続きを行うことで、将来的なトラブルを未然に防ぎ、安心して事業を終えることができます。

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