宿泊コラム

民泊開業の申請代行、行政書士に頼む?フローと費用を解説

民泊開業の申請代行、行政書士に頼む?フローと費用を解説

1.はじめに:民泊開業の申請代行を行政書士に依頼するメリット

民泊事業の開業にあたっては、住宅宿泊事業法(民泊新法)、国家戦略特区法(特区民泊)、旅館業法(簡易宿所)など、事業形態によって煩雑な申請や届出が必要となります。これらの手続きは専門知識が求められ、時間も労力もかかるため、多くの事業者が行政書士などの専門家に代行を依頼しています。

行政書士に民泊申請の代行を依頼する主なメリットは以下の通りです。

  • 専門知識による確実な申請: 法令や各自治体の条例に精通した行政書士が、最新の情報に基づいて正確な書類作成と申請を行います。これにより、不備による遅延や申請の不受理といったリスクを軽減できます。
  • 時間と労力の節約: 多忙な事業者に代わり、書類収集から申請までの一連の手続きを代行してもらうことで、本来の事業運営に集中できます。
  • スムーズな許認可取得: 経験豊富な行政書士は、審査のポイントや注意点を熟知しているため、よりスムーズな許認可取得が期待できます。
依頼のメリット具体的な効果
専門知識の活用申請不備による遅延・不受理リスクの軽減
時間・労力の節約本業への集中、事業準備の効率化
スムーズな許認可取得早期開業、事業開始時期の予測精度向上

特に、初めて民泊事業を始める方や、手続きに不安を感じる方にとっては、行政書士への依頼は開業を成功させるための有効な手段と言えるでしょう。

2.民泊開業の申請代行で依頼できる主な手続き

(1)住宅宿泊事業法に基づく届出(民泊新法)

民泊開業の申請代行で、最も一般的なのが「住宅宿泊事業法」、通称「民泊新法」に基づく届出です。この法律は、一般住宅の空き部屋などを活用して、有料で宿泊サービスを提供する事業を対象としています。

民泊新法における届出は、主に以下の内容を含みます。

  • 事業者の情報: 氏名や住所、事業所の所在地など
  • 宿泊施設の情報: 所在地、構造、用途、利用定員など
  • 特定行為の届出: 宿泊拒否事由など

この届出は、各地方自治体の窓口やオンラインシステムを通じて行うことができます。しかし、必要書類の準備や記載内容の正確性が求められるため、専門家である行政書士に代行を依頼するケースが多く見られます。

届出の種類提出先申請の概要
住宅宿泊事業法に基づく届出地方自治体の窓口、オンラインシステム一般住宅の空き部屋などを活用した宿泊サービスの提供に関する届出。事業者の情報、宿泊施設の情報、特定行為の届出などが必要となります。

代行を依頼することで、煩雑な手続きをスムーズに進めることができ、開業までの時間を短縮できるメリットがあります。

(2)国家戦略特区法に基づく許可(特区民泊)

国家戦略特区法に基づく特区民泊は、自治体が指定する区域において、旅館業法上の「簡易宿所」として営業許可を取得する形態です。民泊新法と異なり、営業日数の制限はありませんが、各自治体が定める条例や要綱に基づいた申請・許可が必要となります。

特区民泊の申請代行を行政書士に依頼する場合、行政書士は主に以下の手続きをサポートします。

手続き内容行政書士のサポート内容
申請書類の作成・提出施設平面図、事業計画書、賃貸借契約書、誓約書などの書類作成支援、自治体への申請書類提出代行。
関係法令・条例の確認特区民泊に関する最新の法令や自治体独自の条例・要綱の確認、それに沿った事業計画の助言。
関係部署との事前相談自治体の担当窓口や消防署など、関係部署との事前調整や確認事項の代行。
許認可取得後の手続き営業許可証の受領、必要に応じた税務署への開業届提出などのアドバイス。

特区民泊は、自治体によって要件や申請プロセスが異なるため、専門家である行政書士に相談することで、スムーズな開業を目指すことができます。

(3)旅館業法に基づく営業許可(簡易宿所)

旅館業法に基づく許可は、住宅宿泊事業法(民泊新法)とは異なり、より本格的な宿泊施設としての営業を可能にするものです。中でも「簡易宿所」は、民泊開業において比較的取得しやすい許可と言えます。

許可の種類主な要件例
簡易宿所・延べ面積33平方メートル以上
・客室の延べ面積の合計が70平方メートル以上
・各客室の床面積が7平方メートル以上
・宿泊者が10人未満の場合は、1人あたり3.3平方メートル以上の床面積
・消火設備、非常照明設備、避難経路の表示設置
・衛生的な構造
・用途地域による制限など

この許可を取得することで、年間180日数の制限なく、より自由な営業が可能となります。ただし、建物の構造や消防設備、衛生面など、法で定められた基準をクリアする必要があります。これらの基準を満たすための改修工事が必要となる場合もあり、専門的な知識が求められます。そのため、申請手続きをスムーズに進めるためには、行政書士などの専門家への依頼を検討するのが一般的です。

3.行政書士への民泊申請代行依頼の一般的な流れ

(1)専門家(行政書士)の選定と相談

民泊開業の申請手続きは複雑で、専門知識が不可欠です。そのため、多くの事業者は行政書士に代行を依頼しています。行政書士は、民泊新法(住宅宿泊事業法)、特区民泊(国家戦略特区法)、簡易宿所(旅館業法)といった、それぞれの法制度に基づく申請・届出の専門家です。

行政書士を選ぶ際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。

  • 民泊申請の実績: 過去の相談実績や許可取得事例を確認しましょう。
  • 得意分野: 依頼したい民泊の種類(新法、特区、旅館業)に詳しいか確認が必要です。
  • コミュニケーション: 疑問点や不安を丁寧に説明してくれるか、相性を確認しましょう。

まずは、複数の行政書士事務所に相談し、実績や説明内容を比較検討することをおすすめします。無料相談を実施している事務所も多いので、積極的に活用しましょう。

確認事項ポイント
実績過去の申請・届出件数、許可取得率
得意分野依頼したい民泊の種類への専門知識
コミュニケーション説明の分かりやすさ、質問への対応の丁寧さ
費用見積もりの明確さ、追加費用の有無

(2)契約締結と必要書類の準備

行政書士に民泊の申請代行を依頼することが決まったら、まずは正式な契約を締結します。契約内容には、依頼する手続きの範囲、費用、スケジュールなどが明記されているか確認しましょう。

その後、申請に必要な書類の準備を進めます。行政書士は、どのような書類が必要か、具体的な書き方や注意点などを丁寧にサポートしてくれます。一般的に必要となる書類は以下の通りです。

申請の種類主な必要書類
民泊新法(届出)届出書、事業計画書、本人確認書類、物件の所在地・所有権を証する書類(賃貸借契約書など)
特区民泊(許可)許可申請書、事業計画書、本人確認書類、物件の所在地・所有権を証する書類、誓約書など
簡易宿所(許可)許可申請書、平面図、付近見取図、事業計画書、本人確認書類、誓約書など

※上記は一般的な例であり、自治体や物件の状況によって必要書類が異なる場合があります。

行政書士と連携しながら、漏れなく正確に書類を準備することが、スムーズな申請の鍵となります。不明な点があれば、遠慮なく行政書士に確認するようにしましょう。

(3)行政機関への申請・届出

行政書士に依頼した場合、煩雑な申請書類の作成や提出は専門家が行います。これにより、申請者は本業に集中しつつ、スムーズな手続き進行が期待できます。

具体的には、依頼者は行政書士に委任状を提出し、必要書類を預けます。行政書士は、依頼者から提供された情報や書類に基づき、正確かつ漏れのない申請書類を作成します。

申請・届出は、以下のいずれかの方法で行われるのが一般的です。

  • 電子申請: 多くの行政機関では、オンラインでの申請システムを導入しています。行政書士は、このシステムを通じて申請書類を提出します。
  • 郵送申請: 電子申請が難しい場合や、書類の原本提出が必要な場合は、郵送にて申請書類を送付します。
  • 持参申請: 直接、担当部署の窓口に書類を持参して申請を行う場合もあります。
申請方法メリットデメリット
電子申請スピーディー、控えが残りやすいシステム操作が必要、一部書類は原本提出
郵送申請時間や場所を選ばない郵便事故のリスク、確認に時間がかかる
持参申請担当者と直接やり取りできる、不明点解消時間や場所が指定される

行政書士は、各行政機関の申請要件や提出方法を熟知しているため、不備による差し戻しや遅延のリスクを最小限に抑え、円滑な手続きを実現します。

(4)行政機関による審査・現地調査

申請書類の提出後、行政機関による厳正な審査が行われます。この段階では、提出された書類の内容確認に加え、物件の現地調査が実施されることが一般的です。

現地調査での主な確認事項

  • 用途地域: 建築基準法上の用途地域が、民泊営業に適しているか確認されます。
  • 防火・避難設備: 消防法に基づく基準を満たしているか、避難経路や消火設備などが適切に設置されているか確認されます。
  • 近隣への配慮: 騒音や衛生面など、近隣住民への影響がないかなども考慮される場合があります。

行政書士は、これらの審査や現地調査をスムーズに進めるために、申請者と行政機関との橋渡し役となります。万が一、審査で不備が指摘された場合でも、迅速かつ的確な対応をサポートしてくれるでしょう。

(5)許認可・登録の取得

無事、行政機関による審査・現地調査を通過すると、民泊事業の開始に必要な許認可や登録が完了します。これにより、晴れて民泊施設を運営できるようになります。

申請の種類によって、許認可・登録の形式は異なります。

申請の種類許認可・登録の形式
民泊新法(届出)届出受理済証の受領
特区民泊(許可)許可証の受領
簡易宿所(許可)営業許可証の受領

行政書士に依頼した場合、これらの許認可証や届出済証の受領も代行してもらえることが一般的です。これにより、ご自身で行政機関に出向く手間が省け、スムーズな開業準備を進めることができます。

なお、許認可・登録後も、関連法規の遵守や定期的な報告義務などが生じる場合があります。行政書士は、こうした法改正や義務に関する情報提供、継続的なサポートも行ってくれるため、安心して事業を運営していくための強力なパートナーとなり得ます。

4.民泊申請代行の費用相場と注意点

(1)代行費用に含まれる内容

民泊開業の申請代行を専門家である行政書士に依頼した場合、その費用には一般的に以下のような内容が含まれています。

  • 書類作成・確認: 届出や許可申請に必要な書類の作成、または既存書類の確認・修正を行います。
  • 申請書類の提出: 作成した書類を行政機関へ提出する手続きを代行します。
  • 役所とのやり取り: 申請内容に関する行政機関からの問い合わせや、追加書類の提出指示などに対応します。
  • 現地調査の同行・準備: 必要に応じて、現地調査への同行や、調査に向けた事前準備のサポートを行います。
サービス内容含まれる場合が多い含まれない場合がある
書類作成・確認
申請書類の提出
役所とのやり取り
現地調査の同行・準備
許認可後の手続き(登録等)

ただし、代行費用に含まれるサービス範囲は行政書士事務所によって異なるため、事前に契約内容をしっかり確認することが重要です。特に、現地調査の同行や、許認可取得後の登録手続きなどが別途費用となるケースもありますので、ご自身の状況に合わせて必要なサポートが含まれているか確認しましょう。

(2)依頼する申請の種類による費用の違い

民泊の開業にあたり、行政書士に申請代行を依頼する場合、その費用は申請する制度の種類によって異なります。一般的に、手続きが煩雑で専門知識がより必要とされるものほど、費用は高くなる傾向があります。

申請の種類費用の目安(行政書士報酬)
民泊新法(届出)10万円~15万円程度
特区民泊(許可)15万円~25万円程度
簡易宿所(許可)25万円~40万円程度

上記はあくまで目安であり、地域や物件の状況、行政書士事務所によって費用は変動します。例えば、民泊新法に基づく届出は、他の制度に比べて手続きが比較的簡便なため、費用も抑えめになることが多いです。一方、特区民泊や簡易宿所は、自治体ごとの条例や要件が細かく定められており、許可を得るためのハードルも高いため、調査や書類作成に手間がかかることから、依頼費用も高くなる傾向が見られます。

また、これらの費用には、申請書類の作成や役所への提出代行などが含まれますが、物件の調査費用や登記費用などが別途必要になる場合もあります。依頼前に、どこまでのサービスが含まれているのかを明確にしておくことが重要です。

(3)悪質な代行業者の見分け方

民泊開業の申請代行を依頼する際には、悪質な業者に注意が必要です。以下のような点に注意して、信頼できる業者を選びましょう。

  • 実績や評判が不明確: 過去の依頼実績や利用者の声が公開されていない、または確認できない業者は避けるのが賢明です。
  • 過度に安い料金設定: 相場よりも著しく安い料金を提示する場合、追加料金が発生したり、手続きが不十分だったりする可能性があります。
  • 「必ず許可が取れる」といった断定的な表現: 許認可は行政の判断によるものであり、代行業者が結果を保証することはできません。
  • 資格の有無の確認: 民泊申請代行は、原則として行政書士法に基づく「行政書士」資格を持つ者でなければ行うことができません。資格を持たない無資格者が代行することは法律で禁止されています。
確認すべきポイント具体的なチェック項目
資格・許認可行政書士証票の提示、登録番号の確認
契約内容料金体系、業務範囲、キャンセルポリシーの明確さ
説明の丁寧さ申請手続きや必要書類に関する説明が分かりやすいか
情報公開所在地、連絡先、ウェブサイトなどの情報が充実しているか

無資格業者に依頼した場合、手続きが不備で許可が下りない、あるいは無効となるリスクがあります。必ず行政書士などの有資格者に依頼するようにしましょう。

(4)無資格業者に依頼するリスク

民泊の開業申請は、専門的な知識を要する手続きであり、無資格の業者に依頼することは大きなリスクを伴います。無資格業者に依頼した場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 書類の不備による申請不受理: 法律や条例に基づいた正確な書類作成が求められますが、知識不足により不備が生じ、申請が受理されないケースが考えられます。
  • 高額な報酬の請求: 依頼したものの、実際には手続きが進まず、不当に高額な報酬を請求されるといった詐欺的な手口も存在します。
  • 個人情報の漏洩: 申請に必要な個人情報や物件情報を預けることになりますが、悪質な業者によっては情報管理がずさんで、情報漏洩のリスクも否定できません。
  • 法的責任を問われる可能性: 業者に委託したからといって、申請に関する最終的な責任がなくなるわけではありません。不備があった場合、開設者自身が行政処分を受ける可能性もゼロではありません。
リスクの種類具体的な被害例
申請不受理・遅延開業時期の遅れ、機会損失
経済的損失不当な高額請求、返金されない
個人情報漏洩悪用、プライバシー侵害
法的責任行政指導、業務停止命令、罰金

これらのリスクを避けるためにも、民泊の申請代行は、法律で定められた業務範囲で資格を持つ行政書士などの専門家へ依頼することを強く推奨します。

5.まとめ

民泊開業の申請は、その種類や地域によって手続きが複雑化することがあります。特に、住宅宿泊事業法、国家戦略特区法、旅館業法といった複数の法令が関わる場合、専門知識を有する行政書士への代行依頼は有効な選択肢となります。

行政書士に依頼することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 専門知識による的確なアドバイス: 法令や条例に精通しているため、スムーズな申請が可能です。
  • 煩雑な書類作成の負担軽減: 必要な書類の準備や作成を代行してもらえます。
  • 申請プロセスの迅速化: 専門家が適切な手続きを進めることで、開業までの時間を短縮できる可能性があります。
依頼する申請の種類費用相場(目安)
民泊新法届出10万円~15万円
特区民泊許可15万円~25万円
簡易宿所営業許可25万円~40万円

※上記はあくまで目安であり、地域や物件の状況により変動します。

悪質な代行業者の見分け方や、無資格業者に依頼するリスクも考慮し、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。ご自身の状況に合わせて、行政書士などの専門家への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

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