宿泊コラム

ゲストハウスと民泊の違いは?初心者向けにわかりやすく解説!
1.はじめに
近年、旅行や出張時の宿泊先として、「民泊」や「ゲストハウス」といった選択肢が増えています。ホテルや旅館とは異なるこれらの宿泊施設は、それぞれに魅力や特徴があり、利用者のニーズも多様化しています。
しかし、「民泊」と「ゲストハウス」の具体的な違いについて、よく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、これから宿泊施設を利用したい方、あるいは開業を検討されている方に向けて、民泊とゲストハウスの違いを分かりやすく解説します。
- 本記事で解説する内容
- 民泊とゲストハウスの定義と特徴
- 主な違い(法律、施設、利用者など)
- 開業を検討する際のポイント
- 運営に役立つシステム・ツール
これらの情報を知ることで、ご自身の目的に合った宿泊施設を選んだり、開業に向けた第一歩を踏み出したりする助けとなるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
2.「民泊」とは?その特徴
「民泊」とは、一般の住宅の全部または一部を活用して旅行者などに宿泊サービスを提供するものです。近年、増加する訪日外国人観光客や国内旅行者の多様なニーズに応える形で注目されています。
民泊には主に以下の特徴があります。
- 一般住宅を活用: マンションの一室や一軒家など、既存の住宅を利用することが多いです。
- 多様な宿泊形態: 家全体を貸し切るタイプから、家主居住型で部屋の一部を貸し出すタイプまで様々です。
- 暮らすような体験: ホテルとは異なり、現地の生活に近い体験ができる点が魅力とされています。キッチンや洗濯機などが利用できる施設が多い傾向にあります。
法的には、主に2018年に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて運営されています。この法律により、届け出を行うことで年間180日以内であれば合法的に住宅を活用した宿泊サービスを提供できるようになりました。その他、旅館業法や特区民泊といった異なる法制度で運営される場合もあります。
主な特徴をまとめると以下のようになります。
特徴 | 内容 |
---|---|
施設タイプ | マンション、一軒家など一般住宅 |
宿泊形態 | 貸し切り、家主同居など |
設備・サービス | キッチン、洗濯機など生活設備が充実 |
法的位置づけ | 民泊新法、旅館業法、特区民泊など |
3.「ゲストハウス」とは?その特徴
ゲストハウスは、比較的安価に宿泊できる簡易宿泊施設の一種です。ホテルや旅館とは異なり、個室だけでなくドミトリー(相部屋)タイプの部屋があるのが特徴です。
ゲストハウスの主な特徴
- 料金: 比較的リーズナブル
- 施設: ドミトリーと個室がある場合が多い
- 設備: キッチンやリビングなどの共用スペースがある
- サービス: 必要最低限のサービス(食事提供がない場合が多い)
- 雰囲気: アットホームで利用者同士の交流が生まれやすい
共用スペースで他の宿泊者と交流したり、自分で簡単な調理をしたりと、自由に過ごせるのが魅力です。バックパッカーや一人旅の方に特に人気があります。
タイプ | 部屋 | 設備 |
---|---|---|
ゲストハウス | ドミトリー、個室 | 共用キッチン、リビングなど |
このように、ゲストハウスは価格を抑えつつ、他の旅行者との交流や自由な滞在を楽しめる宿泊スタイルと言えます。
4.民泊とゲストハウス、主な違いを比較解説
法律上の位置づけと必要な手続き
民泊とゲストハウスでは、根拠となる法律や必要な手続きが大きく異なります。
項目 | 民泊 | ゲストハウス |
---|---|---|
根拠法 | 住宅宿泊事業法(民泊新法)など | 旅館業法 |
必要な手続き | 都道府県知事等への届出 | 都道府県知事等からの許可 |
手続きの難易度 | 比較的容易 | 比較的複雑 |
建築基準法 | 住宅としての基準 | 旅館としての基準 |
消防法 | 住宅としての基準に加えて、一定の要件あり | 旅館としての基準(より厳しい基準) |
民泊は「住宅宿泊事業法」に基づき、届出を行うことで合法的に営業できます。一方、ゲストハウスは「旅館業法」に基づき、「簡易宿所」などの種別で許可を得る必要があります。旅館業法に基づく施設は、消防設備や建築基準など、住宅宿泊事業法よりも厳しい基準を満たす必要があります。そのため、手続きの難易度や必要な改修工事の規模も異なります。
宿泊提供が可能な日数
民泊とゲストハウスでは、宿泊を提供できる日数が大きく異なります。
民泊(住宅宿泊事業)は、年間提供日数に上限があります。これは「住宅宿泊事業法(民泊新法)」によって定められており、届け出を行った住宅で宿泊サービスを提供できるのは、年間180泊まで(※)と決められています。この日数を超えて営業することはできません。
一方、ゲストハウスは旅館業法に基づいて運営される簡易宿所の一種です。旅館業法には、宿泊提供日数に関する特別な制限はありません。そのため、旅館やホテルと同様に、年間を通じて日数の上限なく宿泊サービスを提供することができます。
宿泊施設タイプ | 年間提供日数 | 根拠法規 |
---|---|---|
民泊 | 180泊まで | 住宅宿泊事業法 |
ゲストハウス | 上限なし | 旅館業法(簡易宿所) |
※自治体によっては、条例でさらに厳しい日数制限を設けている場合もあります。事前に確認が必要です。
このように、年間を通して安定的に営業したい場合はゲストハウス、副業的に期間限定で運営したい場合は民泊、といった視点で検討することも重要です。
施設構造と提供されるサービス内容
民泊とゲストハウスでは、施設の構造や提供されるサービス内容にも違いがあります。
民泊は、一般的に個人宅やマンションの一室などを利用するため、ホテルのようなフロントや共用スペースが少ない傾向にあります。サービスも最低限のアメニティ提供や清掃が中心で、オーナーとの交流は限定的かもしれません。
一方、ゲストハウスは宿泊施設として設計・運営されていることが多く、共有のリビングやキッチン、シャワールームなどが用意されています。スタッフが常駐している施設もあり、他の宿泊者やスタッフとの交流が生まれやすい雰囲気があります。サービスとしては、地域情報を提供したり、イベントを企画したりするところもあります。
以下に主な違いをまとめました。
項目 | 民泊(住宅宿泊事業) | ゲストハウス(簡易宿所) |
---|---|---|
施設構造 | 個人宅、マンションの一室など | 宿泊施設として設計、共有スペースあり |
サービス | 最低限のアメニティ | スタッフ常駐、交流機会、地域情報提供など |
交流 | 限定的 | 他のゲストやスタッフとの交流機会が多い |
このように、それぞれ異なる構造とサービス内容を持っています。
利用するゲスト層と滞在目的
民泊とゲストハウスでは、利用するゲスト層や滞在目的にも違いが見られます。
施設タイプ | 主なゲスト層 | 主な滞在目的 |
---|---|---|
民泊 | 家族、グループ、カップル、長期滞在者 | 観光(プライベート空間重視)、帰省、出張、一時滞在 |
ゲストハウス | 一人旅、バックパッカー、学生、ビジネス客 | 交流、節約、長期滞在(多拠点生活など)、体験 |
民泊は、一軒家やマンションの一室を貸し切るスタイルが多いため、プライベートな空間を重視する家族やグループ旅行、または暮らすように滞在したい長期滞在者に人気です。観光や出張、帰省など、様々な目的で利用されます。
一方、ゲストハウスはドミトリー(相部屋)や個室があり、共有スペースで他の宿泊者との交流が生まれることが特徴です。そのため、一人旅のバックパッカーや学生など、旅先での出会いや交流を求める方に多く利用されます。宿泊費を抑えたい方や、多拠点生活で手軽に移動したい方にも選ばれています。
開業費用や運営コスト、収益性の傾向
開業費用や運営コスト、収益性は、民泊とゲストハウスで異なります。
一般的に、既存の住宅を利用する民泊は、新築や改修が必要なゲストハウスに比べて初期費用を抑えやすい傾向があります。ただし、物件の取得費や改修範囲によっては高額になることもあります。
運営コストも、清掃やリネン交換、消耗品費、光熱費などがかかりますが、規模が小さい民泊の方が総額は抑えられがちです。ゲストハウスは共有スペースの管理やスタッフ人件費が発生するため、コストが高くなる傾向があります。
収益性については、稼働率や料金設定によって大きく変動します。民泊は手軽に始められる反面、集客や運営の手間がかかる場合があります。ゲストハウスはリピーターや長期滞在者が見込める場合があり、安定した収益につながる可能性があります。
以下に傾向をまとめます。
項目 | 民泊 | ゲストハウス |
---|---|---|
開業費用 | 比較的抑えやすい(物件による) | 高くなる傾向 |
運営コスト | 規模が小さい場合は抑えやすい | 共有部管理、人件費で高くなる傾向 |
収益性(傾向) | 稼働率・集客努力に依存、不安定要素も | リピーター等で安定収益の可能性も |
どちらも独自の魅力があり、それぞれの特性を理解した上で計画を進めることが重要です。
5.どちらを選ぶ?(開業を検討する方へ)
必要な手続きや難易度
ゲストハウスと民泊では、開業に必要な手続きやその難易度が異なります。
ゲストハウスは、旅館業法に基づく「簡易宿所」としての許可が必要です。この許可を得るためには、建築基準法、消防法、食品衛生法など、様々な法規制への適合が求められ、自治体との事前協議や検査など、手続きは比較的複雑で時間もかかります。
一方、民泊は主に以下の3つの法律に基づきます。
- 住宅宿泊事業法(新法民泊)
- 旅館業法(特区民泊)
- 国家戦略特別区域法(特区民泊)
中でも一般的な「住宅宿泊事業法」に基づく民泊は、都道府県知事等への届出で済み、旅館業許可に比べて手続きは比較的簡略化されています。ただし、年間提供日数に上限があったり、住宅要件があったりします。
手続きの難易度を比較すると、以下のようになります。
種類 | 根拠法 | 主な手続き | 難易度 |
---|---|---|---|
ゲストハウス | 旅館業法(簡易宿所) | 許可申請(各種法令適合) | 比較的高い |
民泊 | 住宅宿泊事業法など | 届出または許可申請 | 比較的低い |
どちらの形式を選ぶかによって、開業までのハードルが大きく変わってきます。
初期投資とランニングコスト
民泊とゲストハウスでは、開業に必要な初期投資や日々の運営にかかるランニングコストに違いがあります。
- 民泊(簡易宿所の場合):
- 初期投資:既存の住宅を活用する場合、リフォーム費用や備品購入費が中心となり、比較的抑えられるケースが多いです。ただし、消防設備などの設置費用がかかる場合があります。
- ランニングコスト:光熱費、清掃費、インターネット費用、消耗品費、予約サイトの手数料などが主な費用となります。
- ゲストハウス(簡易宿所や旅館業の場合):
- 初期投資:建物の改修・改築費用、内装費、ベッドや共用設備の購入費など、大規模な改修が必要な場合や物件取得から始める場合は高額になる傾向があります。
- ランニングコスト:民泊と同様の費用に加え、人件費(常駐スタッフ)、物件の賃料や固定資産税、より充実した共用部分の維持管理費などが加わります。
項目 | 民泊 | ゲストハウス |
---|---|---|
初期投資 | 比較的抑えられる傾向(既存活用の場合) | 高額になる傾向(改修・取得規模による) |
ランニングコスト | 光熱費、清掃費などが中心 | 上記に加え、人件費、賃料、維持管理費などが加わる |
どちらの形態も、立地や規模、提供するサービス内容によって費用は大きく変動します。事業計画段階でしっかりとした資金計画を立てることが重要です。
見込める収益と運営スタイル
民泊とゲストハウスでは、見込める収益や適した運営スタイルが異なります。
民泊は、空き家や自宅の一部を活用しやすいため、初期投資を抑えやすい傾向があります。運営スタイルとしては、普段住んでいる家の一部を提供したり、副業として運営したりと、比較的柔軟なスタイルが可能です。ただし、年間180日という宿泊提供日数の上限があるため、収益には限界があります。
一方、ゲストハウスは旅館業法の許可が必要となり、専用の施設を用意することが一般的です。初期投資やランニングコストは民泊よりも高くなる傾向がありますが、宿泊日数の制限がないため、稼働率が高ければより大きな収益を見込めます。運営スタイルとしては、専業として、または従業員を雇用して本格的に取り組むことが多いでしょう。
以下に簡単な比較を示します。
項目 | 民泊 | ゲストハウス |
---|---|---|
収益の上限 | 年間180日制限あり | 制限なし |
運営スタイル | 柔軟(副業、自宅活用など) | 本格的(専業、従業員雇用など) |
初期投資 | 比較的抑えやすい | 高くなる傾向 |
どちらを選ぶかは、ご自身の予算やかけられる時間、目指す収益規模によって検討が必要です。
6.運営効率化に役立つシステム・ツール
チェックイン手続きの自動化システム
ゲストハウスや民泊の運営において、フロント業務、特にチェックイン手続きは手間のかかる作業の一つです。これを効率化するために役立つのが「チェックイン手続きの自動化システム」です。
このシステムを導入することで、対面での手続きを減らし、ゲスト自身がタブレット端末などで情報を入力したり、本人確認を行ったりすることが可能になります。これにより、以下のようなメリットが期待できます。
- 運営コストの削減: 人員配置の効率化
- ゲストの利便性向上: スムーズなチェックイン体験
- 感染症対策: 非対面での手続きが可能
具体的な機能としては、以下のようなものがあります。
機能例 | 内容 |
---|---|
オンライン事前チェックイン | ゲストが来館前に情報を登録できる |
タブレット受付 | 現地でゲストが情報を入力し、本人確認を行う |
宿泊者名簿の自動作成 | 法令遵守に必要な名簿を自動で作成 |
これらのシステムを活用することで、人的リソースを他のサービス向上や清掃業務などに充てることができ、運営全体の質を高めることができます。
入退室管理のためのスマートロック
民泊やゲストハウスの運営において、ゲストの入退室管理は重要な業務の一つです。特に無人の施設では、鍵の受け渡しや管理が負担となることがあります。そこで役立つのがスマートロックです。
スマートロックを導入することで、以下のようなメリットがあります。
- 鍵の受け渡しが不要になる: ゲストに暗証番号や一時的なデジタルキーを事前に伝えるだけで、現地での立ち会いや鍵の受け渡しが不要になります。
- セキュリティの向上: 物理的な鍵と異なり、鍵の紛失や複製のリスクを減らせます。また、ゲストごとに異なる暗証番号を設定し、チェックアウト後に無効化することも可能です。
- 管理業務の効率化: 遠隔で鍵の状態を確認したり、開閉履歴を管理したりできます。
スマートロックの種類には、暗証番号式、カードキー式、スマートフォン連携式などがあります。
種類 | 特徴 |
---|---|
暗証番号式 | 事前に番号を伝えればOK。導入コストが比較的低い。 |
スマートフォン連携 | アプリで操作。遠隔管理がしやすい。 |
導入を検討する際は、設置場所のドアタイプや必要な機能、予算などを考慮して選ぶと良いでしょう。スマートロックは、運営の効率化とゲストの利便性向上に貢献するツールと言えます。
予約・顧客管理システム
民泊やゲストハウスの運営において、予約受付から顧客情報の管理、さらには清算業務までを一元化できるのが予約・顧客管理システムです。紙やエクセルでの管理に比べて、圧倒的に効率化が進みます。
主な機能は以下の通りです。
- オンライン予約受付機能
- 宿泊者情報の登録・管理
- 予約状況のカレンダー表示
- 売上・清算管理
- メールでの自動返信やリマインダー送信
特に複数の予約サイトを利用する場合、予約重複を防ぐためにもこのシステムの導入は非常に有効です。導入することで、管理の手間を大幅に削減し、より質の高いサービス提供に注力できるようになります。システムによっては、チェックインシステムやスマートロックとの連携も可能です。
複数予約サイトを一元管理するシステム
民泊やゲストハウスを運営する上で、複数の予約サイト(OTA: Online Travel Agent)を利用することは集客のために非常に有効です。しかし、サイトごとに予約状況を手動で管理するのは手間がかかり、ダブルブッキングのリスクも高まります。
そこで役立つのが、これらの予約サイトを一つのシステムでまとめて管理できる「サイトコントローラー」と呼ばれるツールです。
サイトコントローラーの主な機能
- 予約情報の一元管理: 各サイトからの予約情報を自動で取り込み、一つの画面で確認できます。
- 在庫の自動連携: あるサイトで予約が入ると、他のサイトの空室情報を自動で減らします。これにより、ダブルブッキングを防ぎます。
- 料金・プラン設定の効率化: 複数のサイトの料金やプラン情報を一括で変更できます。
サイトコントローラーを導入することで、予約管理にかかる時間を大幅に削減し、より効率的な運営が可能になります。主な機能は以下の表にまとめられます。
機能名 | 説明 |
---|---|
予約一元管理 | 各サイトの予約をまとめて確認 |
在庫自動連携 | 予約が入ったら他のサイトの在庫を自動調整 |
料金・プラン一括変更 | 複数のサイトの料金やプランをまとめて更新 |
これらのシステムを活用することで、運営の負担を軽減し、サービス向上に集中できます。
7.まとめ:違いを理解して賢く選択
ここまで、民泊とゲストハウスのそれぞれの特徴や違いについて解説してきました。改めて、主な違いを表でまとめます。
比較項目 | 民泊 | ゲストハウス |
---|---|---|
法律上の位置づけ | 住宅宿泊事業法(民泊新法)、特区民泊など | 旅館業法(簡易宿所) |
宿泊日数 | 年間180日上限(原則) | 上限なし |
施設構造 | アパート・一戸建てなど既存住宅活用 | ドミトリー、個室など(共用スペースあり) |
サービス | 無人運営・セルフサービス中心 | スタッフ常駐・交流促進 |
どちらを選ぶかは、開業を検討されている方の目的や運営スタイルによって異なります。
- 初期投資を抑え、既存物件を有効活用したい → 民泊が適している場合があります。
- 宿泊日数に制限なく運営し、ゲストとの交流を重視したい → ゲストハウス(簡易宿所)が適している場合があります。
必要な手続き、初期費用、運営スタイルなどを十分に比較検討し、ご自身の目的に合った宿泊事業を選択することが重要です。この記事が、その一助となれば幸いです。