宿泊コラム

180日上限ってどう数える?民泊新法の営業日数カウント方法を分かりやすく解説

180日上限ってどう数える?民泊新法の営業日数カウント方法を分かりやすく解説

1.はじめに:民泊運営者が知るべき「180日上限」の基本

民泊運営者の皆様にとって、安定した事業継続のために最も重要なルールのひとつが、住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)に定められた「年間180日」の営業日数上限です。この日数をどのように数えるべきか、また、その上限を超えた場合にどのような影響があるのかは、多くの運営者様が抱える疑問点でしょう。

この上限は、単に「宿泊があった日」を指すのか、それとも「宿泊を受け付けた日」も含まれるのか、といった具体的なカウント方法が不明確な場合、思わぬ法規制違反に繋がりかねません。

本記事では、この180日上限の正しい理解と、それを踏まえた上で、いかに合法的に民泊事業を運営し、収益を最大化していくかを詳細に解説していきます。皆様の疑問を解消し、安心して事業を進めていただくための一助となれば幸いです。

  • 重要ポイント:
    • 民泊新法における営業日数上限
    • 正しいカウント方法の理解
    • 安定運営のための必須知識
項目内容
制限日数年間180日
対象事業住宅宿泊事業(民泊新法に基づく)
目的宿泊施設の適正な運営と地域住民との調和

2.民泊新法における180日上限の定義と目的

(1) 180日上限とは?基本的なルールを解説

民泊新法(住宅宿泊事業法)の最も重要なルールの一つに「年間180日上限」があります。これは、住宅宿泊事業者が民泊として宿泊サービスを提供できる日数が、年間で最大180泊までに制限されているというものです。

この「180日」は、住宅宿泊事業法第3条第1項に定められており、簡易宿所やホテル・旅館といった他の宿泊施設とは異なる、住宅を活用した民泊特有の規制として導入されました。

具体的には、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を区切りとし、その期間内に宿泊者が実際に宿泊した日数の合計が180泊を超えてはならないとされています。この上限は、事業者が届け出を行ったすべての住宅に適用されるため、複数の物件を運営している場合でも、それぞれの物件で180日を超えないように管理する必要があります。

項目内容
制限日数年間180日(泊)
対象期間毎年4月1日~翌年3月31日
対象施設住宅宿泊事業の届出を行った住宅

この上限は、地域の住環境への影響を考慮し、住宅の住居としての性格を維持するために設けられています。

(2) なぜ180日なのか?制度の背景と意図

民泊新法(住宅宿泊事業法)が定める年間180日という上限は、地域住民とのトラブル抑制と、旅館業法に基づく既存宿泊施設との公平性確保を目的として設定されました。これは、住宅地における宿泊施設の無秩序な増加を防ぎ、生活環境の維持を図るためのものです。

具体的には、以下のような意図があります。

  • 生活環境の保全:
    • 騒音やゴミ出しなど、民泊による地域住民への影響を最小限に抑えるため。
    • 住宅地が実質的なホテル街となることを防ぐため。
  • 既存事業者とのバランス:
    • 旅館業法に基づき厳格な規制を受けるホテルや旅館との競争条件を調整するため。
    • 民泊が旅館業法の抜け道とならないようにするため。

この180日という日数は、通常の住居としての利用と、短期宿泊施設としての利用のバランスを取るために設けられたものです。これにより、事業者は計画的な運営が求められ、無許可の「ヤミ民泊」を排除し、健全な民泊市場の育成を目指しています。

目的具体的な内容
生活環境の保全住民トラブル防止、住宅地の住環境維持
公平性の確保既存宿泊施設との競争条件の調整
健全な市場育成無許可民泊の排除、計画的な事業運営促進

このように、180日上限は単なる規制ではなく、民泊が社会に受け入れられ、持続的に発展するための基盤を築くための重要な要素なのです。

(3) 180日を超過した場合の罰則とリスク

民泊新法(住宅宿泊事業法)において、年間180日の上限を超えて営業を継続することは、法律違反となります。無許可で営業を行った場合、以下のような罰則が科せられる可能性があります。

  • 罰則の種類
    • 改善命令・業務停止命令: まず行政指導として、改善命令や業務停止命令が出されることがあります。
    • 罰金: 3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられる可能性があります。
    • 刑事罰: 悪質なケースでは、刑事罰の対象となることもあります。

このような罰則に加え、以下のようなリスクも発生します。

リスクの項目具体的な内容
信用失墜違反行為が公になると、事業者としての信用が大きく損なわれます。
事業停止最悪の場合、事業の継続が不可能となり、多大な経済的損失を被る可能性があります。
近隣トラブル違法な運営は近隣住民とのトラブルを悪化させ、地域からの反発を招くことにもつながります。

これらのリスクを避けるためにも、180日上限の厳守は民泊運営における最重要事項の一つと言えるでしょう。常に日数を正確に把握し、適切な運営を心がけることが不可欠です。

3.「180日」の正しい数え方:宿泊日数?営業設定日数?

(1) 実際に宿泊された日数をカウントする

民泊新法(住宅宿泊事業法)における180日の上限は、「実際に宿泊者が滞在した日数」を指します。これは、物件を民泊として提供可能に設定した日数、つまり「営業設定日数」とは異なる点に注意が必要です。たとえ予約を受け付けていても、宿泊者が実際にチェックインし、宿泊していなければ、その日は日数としてカウントされません。

具体的なカウント方法は以下の通りです。

  • 宿泊日数のみをカウント:
    • 宿泊者がチェックインした日を1日と数えます。
    • 宿泊者が滞在した期間の日数を合計します。
    • たとえ予約が入っていても、宿泊者がキャンセルしたり、実際に宿泊しなかった場合はカウントされません。

例えば、ある月に以下のような予約状況があった場合:

日付状況カウント
1日~3日宿泊あり3日
4日~5日予約ありで未宿泊0日
6日~8日宿泊あり3日

この場合、実際に宿泊があったのは1日~3日と6日~8日のみですので、合計6日が180日上限の対象としてカウントされます。営業設定日数を数える必要はありませんので、民泊運営者は実宿泊日数の管理を徹底することが重要です。

(2) 営業設定日数と宿泊日数の違い

民泊新法における180日の上限は、「実際に宿泊された日数」をカウントします。これは、多くの方が誤解しやすい点であり、非常に重要です。

具体的には、以下の違いを理解しておく必要があります。

  • 営業設定日数(リスティング公開日数)
    宿泊サイトなどで物件を予約可能に設定している期間のことです。例えば、1年間365日ずっと予約を受け付けていたとしても、実際に予約が入らなかった日はカウントされません。
  • 宿泊日数(実際に宿泊された日数)
    宿泊者が実際に物件にチェックインし、滞在した日数のことです。この日数が「180日」のカウント対象となります。
項目定義180日上限の対象
営業設定日数予約を受け付けている期間×
宿泊日数実際に宿泊者が滞在した期間

したがって、予約サイトで予約をオープンにしているだけでは日数は消費されず、実際に宿泊があった日だけがカウントされると覚えておきましょう。これにより、効率的な運営計画を立てることが可能になります。

(3) 年間を通じてのカウント期間とリセット

住宅宿泊事業法(民泊新法)における180日の上限は、毎年4月1日から翌年の3月31日までの1年間でカウントされます。この期間を「事業年度」と呼び、この1年間で宿泊提供日数の合計が180泊を超えないように管理する必要があります。

具体的には以下のようになります。

期間カウント対象
4月1日~翌年3月31日宿泊提供日数

例えば、2023年4月1日から2024年3月31日までの期間で180日を上限とし、2024年4月1日になると、その年の新たな180日カウントがスタートし、前年度の宿泊日数はリセットされます。

したがって、年度が変わるごとに日数がリセットされるため、毎年新しい気持ちで宿泊提供日数を計画することが可能です。ただし、年度末に近づくにつれて残りの日数を意識し、計画的に運営を進めることが重要です。自治体によっては独自のルールを設けている場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。

4.180日を超えて合法的に運営を継続する方法

(1) 特定の地域で適用される「特区民泊」の活用

民泊新法による年間180日の宿泊日数上限は、多くの民泊運営者様にとって課題となりがちです。しかし、特定の地域では「国家戦略特別区域法」(通称:特区民泊)に基づく条例が定められており、この上限を超えて民泊運営が可能です。

特区民泊は、地方自治体が指定した区域に限り、旅館業法の特例として民泊を認める制度です。この制度を利用すれば、宿泊日数の上限が撤廃され、年間を通して民泊運営を行うことができます。ただし、特区民泊には以下のような特徴や条件があります。

  • 認定基準: 施設の面積要件(25㎡以上など)、滞在期間(最低2泊3日など)、近隣住民への説明義務など、自治体ごとの厳しい認定基準を満たす必要があります。
  • 主な実施地域:
    • 東京都大田区
    • 大阪府
    • 大阪市
    • 八尾市
    • 寝屋川市
    • 千葉市
    • 北九州市
    • 新潟市

ご自身の物件がこれらの地域に該当するか、また詳細な要件については、各自治体のウェブサイトで確認されることをお勧めします。特区民泊の活用は、年間を通じた安定的な収益確保に繋がる強力な選択肢となるでしょう。

(2) 簡易宿所としての許可取得

180日を超える運営を検討されている場合、旅館業法の「簡易宿所」としての許可取得は、合法的な選択肢の一つです。簡易宿所とは、宿泊施設の形態の一つで、旅館業法に基づき、都道府県知事の許可を受けて営業します。この許可を取得すれば、民泊新法による年間180日の営業日数制限を受けずに、通年での宿泊事業が可能となります。

ただし、簡易宿所の許可取得には、民泊新法よりも厳格な要件が課せられます。主な要件は以下の通りです。

  • 施設要件:
    • 建築基準法、消防法、旅館業法の基準を満たす必要があります。
    • フロント、帳場、適切な客室面積、換気設備、衛生設備などが求められます。
  • 運営要件:
    • 宿泊者名簿の記帳、衛生管理、防火管理などの義務があります。
    • 管理者の常駐が必要となる場合もあります。
項目民泊新法(住宅宿泊事業)旅館業法(簡易宿所)
営業日数年間180日まで制限なし(通年)
許可要件比較的緩やか厳格

簡易宿所への移行は、初期投資やランニングコストが増加する可能性がありますが、長期的な視点で見れば、安定した収益源を確保できる有効な手段と言えるでしょう。専門家への相談を通じて、ご自身の物件が簡易宿所としての要件を満たせるか、また収益性が見込めるかを確認することをおすすめします。

(3) 宿泊施設以外の活用(マンスリー賃貸、レンタルスペースなど)

180日の上限がある民泊新法下でも、事業を継続する方法はあります。その一つが、宿泊施設以外の用途で物件を活用することです。

例えば、以下の方法が考えられます。

  • マンスリー賃貸への転用:
    • 短期滞在者向けに家具家電付きで提供し、宿泊ではなく賃貸契約を結びます。
    • 民泊新法の規制対象外となり、180日の上限に縛られません。
  • レンタルスペースとしての活用:
    • 日中の時間帯をワークスペース、撮影スタジオ、イベントスペースなどとして貸し出します。
    • 宿泊を伴わないため、民泊新法が適用されません。

これらの方法は、物件の稼働率を上げ、安定した収益を確保するための有効な手段です。ただし、それぞれの利用形態には別途、賃貸借契約や利用規約の作成、消防法や建築基準法などの確認が必要となる場合がありますので、専門家への相談をおすすめします。多角的な視点で物件の活用を検討することで、180日を超えても収益を得る道が広がります。

5.180日上限内で収益を最大化する運営戦略

(1) 予約管理と稼働率の最適化

180日の上限内で収益を最大化するためには、精密な予約管理と稼働率の最適化が不可欠です。まず、利用可能な宿泊日数を効率的に使い切ることが重要になります。

稼働率向上のためのポイント:

  • 早期予約の促進: 早割プランの導入や、予約開始の告知を積極的に行い、早期の予約を促します。
  • 繁忙期・閑散期の料金調整:時期区分料金設定の方向性繁忙期強気の料金設定閑散期割引・キャンペーンで集客
  • OTA(オンライン旅行会社)の活用: 複数の予約サイトに登録し、露出を増やすことで、より多くの利用者にアプローチします。ただし、サイトごとの手数料も考慮し、最適な組み合わせを見つけることが大切です。
  • キャンセルポリシーの最適化: ゲストに安心して予約してもらえるよう、柔軟かつ明確なキャンセルポリシーを設定し、無断キャンセルや直前キャンセルによる機会損失を最小限に抑えます。

これらの戦略を組み合わせることで、限られた180日の中で最大限の宿泊実績を確保し、収益性を高めることが可能になります。

(2) 魅力的な部屋作りと集客強化

180日の上限がある中で収益を最大化するためには、提供する宿泊施設の魅力を高め、効率的に集客することが非常に重要です。

まず、ゲストが「泊まってみたい」と感じる魅力的な部屋作りを心がけましょう。

  • コンセプトの明確化: 和モダン、北欧風、ビジネス向けなど、ターゲットを絞ったコンセプト設定
  • 清潔感の徹底: 清掃は最も重要です。細部にわたる徹底した清掃で高評価に繋がります。
  • 快適な設備: Wi-Fi、エアコン、キッチン家電、アメニティなど、ゲストが快適に過ごせる設備を充実させましょう。特に、周辺情報や緊急連絡先をまとめたハウスガイドは必須です。

次に、効果的な集客戦略を展開します。

  • 質の高い写真: 明るく、清潔感があり、部屋の魅力を最大限に引き出す写真を掲載してください。
  • 魅力的な紹介文: 部屋の特徴、周辺観光スポット、アクセス方法などを具体的に記述し、ゲストの期待感を高めます。
  • レビュー管理: ゲストからのレビューには真摯に対応し、良い評価を積み重ねることが信頼と集客に繋がります。

これらの工夫により、限られた宿泊日数の中で高い稼働率を維持し、収益を最大化することが可能になります。

(3) 適切な費用管理と収益性向上

180日の上限内で収益を最大化するためには、費用管理と収益性向上が不可欠です。まず、固定費と変動費を正確に把握し、無駄な支出を削減しましょう。

費用削減のポイント

  • 清掃費の見直し: 自社清掃の導入や、清掃業者との契約内容の交渉。
  • 消耗品の選定: 大容量パックの購入や、コストパフォーマンスの良い商品の選択。
  • 広告宣伝費の最適化: 効果の薄い広告を停止し、費用対効果の高いチャネルに集中。

次に、収益性を高めるための施策を検討します。特に、限られた日数で高い収益を得るためには、単価の向上が重要です。

施策名内容期待効果
料金設定の最適化季節変動やイベントに合わせたダイナミックプライシングの導入高稼働率と高単価の両立
付加価値サービスの提供レンタル品(Wi-Fi、自転車など)、近隣施設の割引券提供顧客満足度向上と単価アップの機会創出

これらの取り組みにより、180日という制限の中でも、安定した収益確保を目指すことが可能です。

6.まとめ:賢い日数管理で安定した民泊運営を

民泊新法における180日上限は、適法な民泊運営を行う上で最も重要なルールの一つです。この日数は「実際に宿泊者が滞在した日数」でカウントされることを理解し、年間を通じた計画的な運営が求められます。

賢い日数管理は、安定した収益確保の鍵となります。例えば、以下のようなポイントを意識しましょう。

  • 稼働率の最適化: 繁忙期に集中的に予約を受け入れ、閑散期は別の活用方法を検討するなど、メリハリのある運営を心がけます。
  • 予約状況の可視化: カレンダーツールなどを活用し、リアルタイムで残りの宿泊可能日数を把握しましょう。

また、180日を超過しそうな場合の選択肢も理解しておくことが重要です。

選択肢特徴
特区民泊地域によっては日数上限がない場合も
簡易宿所旅館業法の許可で日数制限なく運営可能
他の活用法マンスリー賃貸、レンタルスペースなど

これらの知識を活かし、ご自身の物件や地域の特性に合わせた最適な戦略を立てることで、法律を遵守しながらも収益を最大化し、安心して民泊運営を継続できるでしょう。

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