宿泊コラム

民泊運営者は必見!管理業務の登録義務と申請方法をサクッと理解
1.はじめに:民泊運営における管理業務の重要性
民泊運営は、単に空き部屋を貸し出すだけでなく、宿泊者の安全確保や周辺住民とのトラブル防止など、多岐にわたる管理業務が伴います。これらの業務を適切に行うことは、民泊事業を安定して継続させる上で非常に重要です。
管理業務がおろそかになると、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 宿泊者とのトラブル: 設備故障、緊急時の対応遅れなど
- 近隣住民とのトラブル: 騒音、ゴミ出しルール違反など
- 法令違反のリスク: 消防法、旅館業法、住宅宿泊事業法など
特に、2018年に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により、民泊運営には様々なルールが定められました。この法律は、適正な民泊運営を促進し、地域社会との共存を図ることを目的としています。
本記事では、この民泊新法を踏まえ、民泊の管理業務において「登録が必須となるケース」や「登録が必要な場合の具体的な手続き」について、分かりやすく解説していきます。適切な管理体制を構築し、スムーズな民泊運営を目指しましょう。
2.民泊の管理業務、登録は必須?
(1)管理業務の外部委託が必要なケース
民泊を運営する上で、管理業務の外部委託が必要となる主なケースは、住宅宿泊事業法(民泊新法)によって明確に定められています。特に、宿泊施設の提供を宿泊客に直接行わない「不在型」の民泊を運営する場合、住宅宿泊管理業者への管理業務委託が義務付けられています。
具体的には、以下のいずれかに該当する場合は、管理業務を外部に委託しなければなりません。
- 家主不在型の場合
- 宿泊施設に住宅宿泊事業者(家主)が居住しておらず、宿泊客の滞在中に住宅宿泊事業者が不在となる場合です。これは多くの民泊運営者に当てはまります。
- 届出住宅の居室数が6室以上の場合
- たとえ家主が施設内に居住していても、提供する客室数が6室以上になる場合は、住宅宿泊管理業者に管理を委託する必要があります。これは、規模の大きな民泊施設が対象となります。
委託が必要なケース | 具体例 |
---|---|
家主不在型 | 投資用物件を民泊利用する場合など |
居室数6室以上 | 大規模な一軒家、複数部屋を貸し出す場合など |
これらのケースでは、適切な管理体制を確保するため、専門の管理業者に業務を委託することが法律で義務付けられています。
(2)自分で管理する場合:登録は不要?
民泊を運営する上で、ご自身で管理業務を行う場合は、原則として「住宅宿泊管理業者」としての登録は不要です。これは、ご自身が住宅宿泊事業を営む者(届出住宅の所有者または賃借人)であり、その届出住宅の管理を自ら行うためです。
ただし、ご自身で管理する場合でも、以下の点にご注意ください。
- 管理業務の範囲:
- 宿泊者の募集(ウェブサイト掲載など)
- 宿泊者との契約締結
- 鍵の受け渡し
- 滞在中の問い合わせ対応
- 緊急時の対応
- 清掃、衛生管理など
上記のような管理業務全般を、ご自身で適切に実施できる体制が求められます。
- 周辺住民への配慮:
- 騒音やゴミ出しなど、近隣トラブルへの迅速な対応が必要です。
- 緊急連絡先を明確にし、24時間対応できる体制を整えることが推奨されます。
ご自身で管理を行う場合でも、住宅宿泊事業法に基づく「住宅宿泊事業者」としての届出は必須となりますので、混同しないようご注意ください。管理業務のすべてを責任持って遂行できる体制が整っていれば、登録不要で運営が可能です。
3.住宅宿泊管理業者の登録が必要な場合とは
(1)登録の対象となる者
住宅宿泊管理業者の登録が必要となるのは、主に以下のケースに該当する方々です。
ケース | 説明 |
---|---|
家主不在型の場合 | 民泊施設に家主(届出住宅に居住する者)が常時居住しない形態で民泊を運営する場合、住宅宿泊事業者は、その管理を「住宅宿泊管理業者」に委託することが義務付けられています。この場合、委託を受ける側が登録の対象となります。 |
管理業務を請け負う場合 | 上記の家主不在型民泊の管理業務を事業として請け負う方は、法人・個人の別を問わず、住宅宿泊管理業者の登録をしなければなりません。具体的には、清掃、問い合わせ対応、鍵の受け渡し、緊急時の対応など、民泊の運営に関わる管理全般を代行する事業者です。 |
ご自身が民泊を運営する事業者であり、かつ家主不在型で管理業務を外部の第三者に委託せず、ご自身で管理を行う場合は、住宅宿泊管理業者としての登録は不要です。ただし、この場合でも住宅宿泊事業としての届出は別途必要となりますのでご注意ください。
このように、住宅宿泊管理業者の登録は、家主不在型民泊の管理を「業務として」引き受ける場合に必須となる制度です。
(2)登録の要件(誰でもなれる?)
住宅宿泊管理業者として登録するには、以下の要件を満たす必要があります。これらの要件は、民泊の適切な運営と利用者の安全を確保するために設けられています。
- 法人または個人事業主であること
- 法人の場合:役員全員が要件を満たす必要があります。
- 個人の場合:本人または法定代理人が要件を満たす必要があります。
- 欠格事由に該当しないこと
具体的には、以下のような場合が欠格事由に該当します。欠格事由の例詳細暴力団員等であること過去に暴力団関係者であった場合も含まれます。破産手続開始の決定を受け復権を得ていないこと破産手続き中でないこと、または既に復権している必要があります。禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者特定の犯罪歴がないことが求められます。住宅宿泊事業法に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者過去に民泊関連法規で罰則を受けていないことが必要です。登録を取り消されてから5年を経過しない者過去に登録を取り消された場合、一定期間は再登録できません。
これらの要件を満たし、適切な事業運営ができることが、登録の前提となります。
4.住宅宿泊管理業者の登録申請プロセス
(1)登録申請の流れとステップ
住宅宿泊管理業者の登録は、国土交通大臣に対して行います。主な流れは以下の通りです。
- 事前準備:登録要件を満たしているか確認し、必要書類を準備します。
- 申請書の提出:国土交通省の地方整備局等へ登録申請書および添付書類を提出します。郵送または持参での提出が一般的です。
- 書類審査・実地調査:提出された書類が審査され、必要に応じて営業所への実地調査が行われる場合があります。
- 登録通知:審査を通過すると、登録の通知が届き、登録番号が付与されます。
具体的なステップは以下の表をご確認ください。
ステップ | 内容 |
---|---|
ステップ1 | 申請書類の作成・準備(会社定款、役員名簿、宅地建物取引業免許証の写しなど) |
ステップ2 | 申請書類の提出(管轄の地方整備局等へ) |
ステップ3 | 審査・照会(書類内容の確認、場合によっては追加資料の提出指示) |
ステップ4 | 登録通知・登録簿への記載 |
登録申請は、宅地建物取引業の免許申請と類似しており、専門的な知識が求められる場合があります。不明な点があれば、行政書士などの専門家への相談もご検討ください。
(2)申請に必要な書類リスト
住宅宿泊管理業者の登録申請には、以下の書類が必要です。漏れがないように事前に準備しましょう。
- 申請書類
- 登録申請書(様式第一)
- 誓約書
- 宅地建物取引業者の免許証の写し(宅建業者である場合)
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第3条の登録を受けていることを証する書面(賃貸住宅管理業者である場合)
- その他、法人・個人の区分に応じた添付書類
- 法人申請の場合の添付書類
- 履歴事項全部証明書
- 役員全員の略歴書
- 役員全員の住民票の写し
- 役員全員の身分証明書
- 個人申請の場合の添付書類
- 住民票の写し
- 身分証明書
- 略歴書
【必要書類の例】
書類の種類 | 内容 |
---|---|
登録申請書 | 申請者の情報、管理業務の概要などを記載します。 |
履歴事項全部証明書 | 法人の登記事項を証明するものです。 |
住民票の写し | 申請者または役員の現住所を証明するものです。 |
身分証明書 | 申請者または役員に禁錮以上の刑に処された経歴がないことを証明します。 |
略歴書 | 申請者または役員の職務経歴を記載します。 |
これらの書類は、国土交通省のウェブサイト等で最新の様式を確認し、正確に記入・準備することが重要です。
(3)申請にかかる費用と期間
住宅宿泊管理業者の登録には、以下の費用と期間がかかります。
【登録申請にかかる費用】
区分 | 金額(税込) | 備考 |
---|---|---|
登録免許税 | 90,000円 | 国に納める税金です。 |
この登録免許税は、申請時に収入印紙で納付します。その他、行政書士に申請代行を依頼する場合は別途報酬が発生しますが、ご自身で申請する場合は上記の登録免許税のみです。
【登録申請にかかる期間】
申請書類を提出してから登録通知が届くまでの期間は、約30日〜40日程度が目安です。ただし、書類に不備があった場合や、提出時期によって審査が混み合っている場合は、これよりも時間がかかることがあります。
スムーズな登録のためには、事前に必要書類をしっかりと準備し、内容に漏れや誤りがないかを入念に確認することが重要です。早めに準備を始め、余裕を持ったスケジュールで申請を進めましょう。
5.まとめ:スムーズな民泊運営のために
民泊を運営する上で、管理業務の登録は、ケースによって必須となることがあります。特に、ご自身が不在の間に宿泊者を受け入れる場合や、清掃・設備点検などを外部に委託する場合は、住宅宿泊管理業者の登録が必要となる可能性が高いです。
登録の要否を判断するポイントは以下の通りです。
- 住宅宿泊管理業者の登録が「必須」となる主なケース
- 家主不在型で、住宅宿泊管理業者に管理業務を委託する場合
- 家主が登録を受けていない状態で、家主不在型で運用する場合
ご自身で管理される家主居住型の場合でも、適切に管理が行われていることが重要です。
登録が必要な場合は、国土交通省への申請が必要です。要件を満たし、必要な書類を準備して手続きを進めましょう。
申請先 | 費用 | 期間 |
---|---|---|
国土交通省 | 約9万円 | 数週間~数ヶ月 |
適切な管理体制を整えることで、利用者からの信頼を得て、トラブルを未然に防ぐことができます。また、住宅宿泊事業法を遵守することは、安心して民泊を運営するための大前提です。ご自身の民泊運営形態に合わせた管理体制を構築し、スムーズで安心な民泊運営を目指しましょう。