宿泊コラム

節税対策になる?資産管理会社を使った資産移動の基礎知識
1. はじめに:資産管理会社による資産運用が注目されている背景

近年、富裕層を中心に資産管理会社による資産運用が注目されています。従来は、大企業のオーナーなどが事業承継対策として活用することが多かった資産管理会社ですが、近年では、以下のような背景から、個人事業主やサラリーマン層からも注目を集めるようになっています。
資産管理会社が注目されている背景
- 超低金利時代の長期化による資産運用ニーズの高まり
- 老後資金不足への不安の高まり
- 相続税・贈与税の負担軽減への関心の高まり
このような背景から、効率的な資産運用や節税対策として、資産管理会社が注目されています。
2. 資産管理会社とは?

法人格を持つ会社を通じて資産を管理
資産管理会社とは、文字通り「資産を管理するための会社」です。 個人とは別に法人格を持った会社を設立し、その会社名義で不動産や株式などの資産を保有・管理します。
項目 | 説明 |
---|---|
誰が | 個人事業主や会社員など、誰でも設立可能 |
何を | 不動産、株式、預貯金など |
個人が直接資産を持つのではなく、資産管理会社を通して間接的に管理するのが特徴です。 資産を「個人」から「会社」に移すことで、税負担の軽減や資産の分散など、様々なメリットを享受できる可能性があります。
個人事業主でも活用可能
資産管理会社は、会社員だけでなく、個人事業主でも活用できます。事業で得た利益を効率的に運用し、将来に備えたいと考えている個人事業主の方にも、資産管理会社は有効な手段となり得ます。
法人形態 | メリット |
---|---|
個人事業主 | ・事業所得と給与所得を組み合わせることで、所得分散効果による節税が可能 ・事業用資産を会社で保有することで、事業リスクの軽減を図れる |
資産管理会社 | ・資産管理会社から個人事業主へ家賃収入を得ることで、安定収入の確保が可能 ・事業承継をスムーズに行うための準備ができる |
ただし、個人事業主が資産管理会社を活用する場合は、事業の規模や内容、将来の展望などを考慮した上で、慎重に判断する必要があります。
3. 資産管理会社を使うメリット

節税効果
– 所得税・住民税の軽減
資産管理会社を設立することで、所得税・住民税の負担を軽減できる可能性があります。
個人事業主やサラリーマンの場合、事業や給与から得た所得に所得税・住民税が課されます。所得が多いほど税率が高くなる累進課税制度を採用しているため、高所得者ほど税負担が大きくなります。
一方、資産管理会社の場合は、法人税率が適用されます。個人の所得税率と比較して、法人税率の方が低いケースが多いため、結果として税負担を軽減できる可能性があります。
区分 | 税率 |
---|---|
所得税 | 1%~45%(累進課税) |
住民税 | 10%(均一課税) |
法人税(所得800万円以下) | 15%(均一課税) |
上記はあくまで一般的な税率であり、所得や控除、税制改正などによって変動する可能性があります。
– 相続税の軽減
資産管理会社を相続税対策として活用するケースが増えています。これは、個人のまま資産を保有する場合と比べて、相続税評価額を圧縮できる可能性があるからです。
相続税評価 | ||
---|---|---|
個人 | そのままの評価額 | |
資産管理会社 | 会社の株式評価のため、評価額が圧縮される可能性 |
具体的には、資産管理会社の株式を評価する際には、会社の純資産価値や収益力などを考慮します。そのため、個人が保有する場合に比べて評価額が低くなる可能性があります。さらに、生前に計画的に株式を贈与することで、相続時の相続財産を減らし、相続税負担を軽減できる場合があります。
資産の分散によるリスク管理
資産管理会社を活用するメリットの一つに、資産の分散によるリスク管理が挙げられます。
個人名義で保有しているすべての資産を、法人名義に移すことで、個人と法人で資産を分散させることができます。
分散 | 内容 |
---|---|
個人名義 | 現金、貴金属、一部不動産など |
法人名義 | 現金、株式、不動産など |
上記のように分散して資産を保有することで、例えば、個人に何か万が一のことがあった場合でも、法人名義の資産は守られる可能性が高まります。
また、保有資産を異なる金融商品に分散投資したり、複数の場所に分散して不動産を保有したりするなど、資産管理会社を通じて多角的なリスク分散を進めることも可能です。
事業承継の円滑化
資産管理会社は、事業承継を円滑に進めるためにも有効な手段となりえます。事業用資産を後継者にスムーズに引き継ぐことは、事業の安定的な継続のために非常に重要です。
個人事業主が事業用資産を後継者に相続や贈与する場合、多額の相続税や贈与税が発生する可能性があります。しかし、事前に資産管理会社に事業用資産を移しておけば、後継者は会社の株式を相続または贈与することで、事業用資産を低い税負担で取得できる可能性があります。
項目 | 個人的に事業承継する場合 | 資産管理会社を経由して事業承継する場合 |
---|---|---|
手続き | 相続・贈与の手続き | 株式の相続・贈与の手続き |
税金 | 相続税・贈与税 | 相続税・贈与税(評価額が圧縮される可能性あり) |
後継者への負担 | 多額の税金が発生する可能性 | 比較的低い税負担で事業を承継できる可能性 |
このように、資産管理会社を活用することで、後継者への負担を軽減しつつ、円滑な事業承継を実現できる可能性があります。
ただし、事業承継に資産管理会社を利用する場合には、事業の規模や内容、家族構成などを考慮した上で、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
経費計上による節税
資産管理会社を運営する上で必要な費用は、経費として計上できます。
経費項目 | 内容 |
---|---|
事務所家賃 | 資産管理会社が事務所を借りる際に発生する家賃 |
人件費 | 従業員を雇用した場合の人件費 |
接待交際費 | 事業に関する接待や交際にかかった費用 |
旅費交通費 | 事業で移動する際の交通費や宿泊費 |
通信費 | 電話代、インターネット代など |
これらの経費を経費計上することで、会社の利益を圧縮し、納税額を抑える効果があります。結果として、個人で資産を保有するよりも節税につながる可能性があります。
4. 資産管理会社を使うデメリット・注意点

設立・維持費用がかかる
資産管理会社は、設立時だけでなく、運用していく上でも費用が発生します。
費用項目 | 概算費用 | 備考 |
---|---|---|
会社設立費用 | 20万円~ | 定款認証費用、登録免許税、司法書士報酬など |
税理士報酬 | 15万円~/年 | 決算申告、税務相談など |
社会保険料 | 従業員を雇用する場合 | |
事務所賃料 | 事務所を借りる場合 |
このように、会社設立費用以外にも、ランニングコストとして税理士報酬や社会保険料、事務所賃料などがかかります。 これらの費用を考慮すると、ある程度の資産規模がない場合は、メリットを享受できない可能性があります。 資産管理会社を検討する際は、専門家にも相談し、費用対効果をしっかり検討することが重要です。
会社運営の手間が発生
資産管理会社は、その名の通り会社として運営していく必要があります。そのため、会社設立後も以下のような業務が発生します。
業務内容 | 具体的な作業内容 |
---|---|
会計処理 | 売上や経費の管理、決算処理など |
税務申告 | 法人税や消費税などの申告 |
株主総会・取締役会の開催 | 事業報告や決算の承認、重要な意思決定など |
社会保険関連の手続き | 従業員を雇用する場合、社会保険の加入手続きなどが必要です |
これらの業務は、専門知識が必要となる場合もあり、専門家に依頼すると費用が発生します。また、ご自身で対応する場合でも、時間や労力を割く必要があります。
不適切な運用は税務調査のリスク
資産管理会社は、節税効果が期待できる一方、その運用には注意が必要です。税務当局の厳しい目に晒される可能性もあり、不適切な運用を行った場合には、税務調査の対象となり、追徴課税を受けるリスクがあります。
リスクとなる行為 | 内容 |
---|---|
過大な所得の圧縮 | 必要以上の経費計上や、著しく低い役員報酬を設定するなどして、利益を不当に圧縮すること |
私的な利用と事業用の混同 | 会社の資産を私的に利用したり、私的な費用を会社の経費として計上すること |
親族への不当に有利な取引 | 適正価格よりも低い価格で親族に資産を売却するなど、不当に有利な条件で取引を行うこと |
架空の取引による経費の計上 | 実際には存在しない取引をでっち上げ、経費を水増しすること |
不十分な帳簿書類の作成・保存 | 取引の記録を適切に残さず、税務調査時に証拠書類を提示できないこと |
資産管理会社を設立する際には、これらのリスクを十分に理解し、適切な運用を行うように心がけましょう。
5. 資産管理会社設立の判断基準

所有資産の規模
資産管理会社設立を検討するにあたっては、所有資産の規模は重要な要素となります。なぜなら、資産規模が小さすぎる場合、会社設立・維持費用の方が節税効果を上回る可能性があるからです。
資産規模 | 資産管理会社設立の適否 |
---|---|
小規模 | 費用対効果が低い可能性 |
中規模 | 検討の余地あり |
大規模 | 設立するメリットが大きい |
一般的に、不動産や株式など、ある程度の規模の資産を保有している方は、資産管理会社設立のメリットを受けやすいと言えます。逆に、預貯金のみなど、資産規模が小さい場合は、費用対効果の観点から慎重に判断する必要があります。
事業計画との整合性
資産管理会社は、あくまでも事業を行うための会社です。そのため、設立前に事業計画をしっかりと策定し、資産管理会社と整合性が取れているかを確認する必要があります。
例えば、以下のような点が挙げられます。
項目 | 内容 |
---|---|
事業目的 | 資産管理会社の事業目的は何か?(不動産賃貸業、株式投資など) |
事業内容 | 具体的にどのような事業を行うのか?(物件情報、投資先など) |
将来の見通し | 事業を通じて、どの程度の収益を見込んでいるのか?また、事業期間はどの程度を想定しているのか? |
これらの項目を検討することで、資産管理会社の設立が本当に事業計画に合致しているのか、そして、将来的にも有効な手段であるのかを判断することができます。
専門家への相談
資産管理会社設立は、法的・税務的な専門知識が必要となる複雑なプロセスです。そのため、弁護士や税理士などの専門家へ相談することが重要になります。
専門家 | 相談内容例 |
---|---|
弁護士 | 会社設立に関する法的手続き、定款作成、株主間契約書の作成、不動産取引に関する法的アドバイス |
税理士 | 資産管理会社の設立形態、税務上のメリット・デメリット、資産移動の方法、事業計画の妥当性、税務申告 |
不動産鑑定士 | 資産管理会社へ移動する不動産の適正価格の評価 |
専門家は、お客様の状況に合わせて、最適なアドバイスやサポートを提供します。
資産管理会社設立を検討する際は、早急に専門家へ相談し、疑問点を解消しておくことが大切です。
6. 資産管理会社にできること

不動産賃貸業
資産管理会社は、収益不動産を所有し、賃貸収入を得る不動産賃貸業を行うことができます。
メリット | 説明 |
---|---|
賃貸収入の安定化 | 法人名義で賃貸契約を締結することで、安定的な家賃収入を得ることが期待できます。 |
経費計上による節税 | 不動産管理会社に支払う管理手数料や修繕費を経費計上することで、法人税の節税につながります。 |
相続対策 | 相続時に、不動産を分割する必要がなく、円滑な事業承継を進めることができます。 |
資産管理会社を通じて不動産賃貸業を行う場合、賃貸経営に関する知識や経験が必要となる場合もあります。専門家と連携しながら、適切な管理体制を構築することが重要です。
株式投資
資産管理会社は、株式投資を行うことも可能です。 資産管理会社を通じて株式投資を行うことで、以下のようなメリットがあります。
メリット | 内容 |
---|---|
利益の再投資による資産増加 | 株式投資で得られた利益を、さらに株式投資に再投資することで、効率的に資産を増やすことができます。 |
配当金の受け取り | 保有する株式の配当金を受け取ることができます。 |
売却益の獲得 | 保有する株式を売却することで、売却益を得ることができます。 |
ただし、株式投資にはリスクが伴うため注意が必要です。 資産管理会社だからといって必ずしも利益が出るわけではありません。 株式投資を行う場合は、事前に専門家へ相談するなど、慎重に進めるようにしましょう。
生命保険加入
資産管理会社は、生命保険に加入することができます。個人で加入するよりも、節税メリットが期待できる場合があるためです。
メリット | 内容 |
---|---|
保険料を経費計上できる | 保険料を経費として計上することで、法人税・住民税の節税につながります。 |
満期保険金が利益になる | 満期保険金は、受取時に利益になりますが、法人税率が適用されるため、個人の所得税率と比較して節税になる可能性があります。 |
死亡保険金が非課税になる | 死亡保険金は、資産管理会社の財産となるため、相続税の課税対象から外れます。 |
ただし、保険商品の種類や契約内容によっては、これらのメリットが受けられない場合もあるため、注意が必要です。生命保険加入を検討する際は、専門家によく相談するようにしましょう。
7. 資産移動の具体的な方法
現物出資
資産管理会社に資産を移動する方法の一つに、現物出資があります。これは、現金ではなく、不動産や株式などの資産を会社に拠出することで、その評価額に見合った株式を取得する方法です。
現物出資のメリット | 現物出資のデメリット |
---|---|
手元資金が少なくても資産移動が可能 | 資産評価の手間や費用が発生 |
税務上の注意点が多い |
現物出資を行う場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談し、適正な資産評価や手続きを行うことが重要です。
売買
資産を資産管理会社に移動する方法の一つに、売買があります。これは、個人所有の資産を資産管理会社に売却することを意味します。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
売買 | 売却益が得られる場合がある | 譲渡所得税が発生する可能性がある |
売買する際には、適正な価格で行う必要があります。そうでない場合、税務上問題となる可能性があります。
例えば、市場価格よりも著しく低い価格で売却した場合、贈与とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。逆に、市場価格よりも著しく高い価格で購入した場合、資産管理会社の税務上の利益を圧縮しているとみなされ、法人税が追徴される可能性があります。
そのため、売買を行う際には、専門家である税理士や不動産鑑定士に相談し、適正な価格を算定してもらうことが重要です。
贈与
資産を個人から資産管理会社へ移転する方法の一つに「贈与」があります。贈与とは、無償で財産を譲り渡すことを指します。
メリット | デメリット |
---|---|
手続きが比較的簡単 | 贈与税が発生する可能性がある |
贈与税は、1年間で110万円を超える財産を贈与した場合に発生します。ただし、基礎控除や配偶者控除などの特例もあります。
資産管理会社への贈与を検討する際は、贈与税の負担を考慮する必要があります。税理士などの専門家に相談し、最適な方法を検討しましょう。
8. 資産管理会社設立の手続き

定款作成
定款とは、会社の目的やルールを定めた根本規則です。資産管理会社を設立する際には、まずこの定款を作成する必要があります。
定款には、以下の項目を必ず記載する必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
商号 | 会社の名前 |
目的 | 会社の事業内容 |
本店所在地 | 会社の所在地 |
資本金及び発行株式の総数 | 会社の資本金と発行する株式の数 |
株式譲渡の制限に関する規定 | 株式の譲渡に関するルール |
役員の任期 | 取締役などの任期 |
事業年度 | 会社の会計期間 |
これらの項目は、会社の運営において非常に重要なものです。専門家に相談しながら、適切な内容を記載する必要があります。特に、資産管理会社の目的には、「不動産の賃貸業」「株式投資」「生命保険加入」など、具体的な事業内容を明確に記載することが重要です。
資本金の払い込み
資産管理会社を設立するには、資本金の払い込みが必要です。資本金は、会社の事業活動に必要なお金のことです。
資本金の払い込みは、株式会社設立時の手続きの一つであり、定款認証後、法務局への登記申請を行う前までに行う必要があります。
資本金の払い込み方法には、以下のようなものがあります。
払い込み方法 | 説明 |
---|---|
現金払い込み | 現金を会社の銀行口座に振り込む方法です。 |
現物出資 | 現金以外の財産(不動産、株式など)を会社に拠出する方法です。 |
銀行振込による払込証明書の発行 | 銀行で所定の手続きを行い、払込証明書を発行してもらう方法です。 |
資本金の金額は、事業内容や規模によって異なりますが、1円から設定することができます。ただし、資本金が少なすぎると、会社の信用力に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
資本金の払い込みが完了したら、法務局に会社設立の登記申請を行います。登記が完了すると、資産管理会社が正式に設立されます。
会社設立登記
会社設立の手続きが完了したら、最後に会社設立登記を行う必要があります。これは、設立した会社を法的に有効な存在として認めさせるための手続きです。
会社設立登記は、法務局に対して申請を行います。 申請に必要な書類は、以下の通りです。
書類名 | 内容 |
---|---|
登記申請書 | 会社の基本情報などを記載した書類 |
定款 | 会社の目的やルールなどを定めた書類 |
設立時の貸借対照表 | 会社の資産と負債の状況を示した書類 |
その他 | 場合によっては、上記以外の書類の提出を求められることもあります。 |
これらの書類を法務局に提出すると、審査が行われ、問題がなければ会社設立登記が完了します。会社設立登記が完了すると、晴れて資産管理会社が設立され、事業活動を行うことができるようになります。
9. まとめ:資産管理会社設立は専門家への相談が重要

資産管理会社設立は、節税効果や事業承継の円滑化など多くのメリットが期待できます。しかし、一方で、設立や維持に関する費用や手続き、そして税務リスクなど、注意すべき点も存在します。
資産管理会社設立を検討する際は、安易に決断するのではなく、専門家へ相談することが重要です。具体的には、以下のような専門家が考えられます。
専門家 | 相談内容例 |
---|---|
税理士 | ・節税対策 ・会社設立・運営に関する税務アドバイス |
司法書士 | ・会社設立の手続き |
不動産鑑定士 | ・不動産の適正価格の評価 |
専門家は、個々の状況に合わせて、最適なアドバイスやサポートを提供してくれます。資産管理会社設立を成功させるためにも、専門家の知見を積極的に活用しましょう。