宿泊コラム

民泊を始める前に必読!違法にならないためのルールと対策を徹底解説

民泊を始める前に必読!違法にならないためのルールと対策を徹底解説

1.はじめに:民泊運営で知っておくべき「違法」のリスク

近年、新たな宿泊スタイルとして注目を集める民泊ですが、安易な気持ちで始めると「違法」となってしまうリスクがあることをご存知でしょうか。民泊を運営するためには、守るべき法律やルールが数多く存在します。

これらのルールを知らずに運営してしまうと、思わぬ形で法律違反となり、以下のような事態を招く可能性があります。

  • 罰則の対象となる
  • 近隣住民とのトラブルに発展する
  • 運営自体が困難になる

合法的に安心して民泊を運営するためには、事前にしっかりと法規制や必要な手続きについて理解しておくことが不可欠です。このガイドでは、民泊運営で違法となるケースや、そうならないための対策を分かりやすく解説していきます。ぜひ、民泊運営を始める前の参考にしてください。

2.民泊運営に関する法律と「違法」になるケース

(1)民泊に関する法律の基本(旅館業法、民泊新法、特区民泊)

民泊を合法的に運営するためには、主に以下の3つの法律・制度のいずれかに基づく必要があります。

  • 旅館業法
    ホテルや旅館など、宿泊施設の営業を広く規定する法律です。簡易宿所として許可を取得する方法があります。
  • 住宅宿泊事業法(民泊新法)
    一般的な住宅を活用した民泊のために、2018年に施行されました。届出制度で、年間180日の上限があります。
  • 国家戦略特別区域法(特区民泊)
    国が定めた特定の区域内で認められる民泊です。自治体の条例に基づき、滞在日数などに独自の要件があります。

どの法律・制度を適用できるかは、建物の種類や地域、運営方法によって異なります。ご自身の計画に合ったものを正確に把握することが重要です。

(2)無許可・無届出での営業

民泊を運営する上で、最も基本的な、かつ重要なルールが「無許可・無届出での営業は違法になる」という点です。

日本の法律では、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業は、原則として「旅館業」に該当します。旅館業を営むためには、都道府県知事等からの許可が必要です。

民泊には主に以下の3つの法律が関わりますが、どの制度を利用するにしても、定められた手続きが必要です。

  • 旅館業法: 簡易宿所営業などの許可が必要です。
  • 住宅宿泊事業法(民泊新法): 都道府県知事等への届出が必要です。
  • 国家戦略特別区域法(特区民泊): 区長等への認定が必要です。

これらの許可や届出、認定を受けずに民泊として営業した場合、違法行為となります。

制度必要な手続き
旅館業法許可
民泊新法届出
特区民泊認定

無許可・無届出での運営は、法律違反として罰則の対象となるだけでなく、後述する様々な問題を引き起こす原因となります。合法的に運営するためには、ご自身の物件や運営スタイルに合った制度を確認し、必ず必要な手続きを行いましょう。

(3)年間180日を超える営業(民泊新法の場合)

民泊新法(住宅宿泊事業法)を利用して民泊を運営する場合、最も重要な制限の一つが「年間の営業日数上限」です。

この法律に基づき届け出た民泊は、年間180日までしか宿泊サービスを提供できません。この日数は、チェックイン日を基準に計算され、午前0時から24時までを1日とカウントします。180日を超えて営業した場合、法律違反となります。

運営方法年間営業日数上限
民泊新法180日
旅館業法上限なし
特区民泊上限なし(自治体による)

この180日制限を知らずに営業を続けると、違法状態となり、後述するような罰則の対象となる可能性があります。

違法とならないためには、以下の点に注意が必要です。

  • 営業日数の正確な把握: 予約システムなどを活用し、営業日数を常に正確に記録・管理してください。
  • 計画的な運営: 180日を超えないように、予約受付を計画的に行う必要があります。

この制限は、民泊新法の特徴の一つであり、適切に管理することが合法的な運営には不可欠です。

(4)住宅宿泊管理業務を委託しない(民泊新法の場合)

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき民泊を運営する場合、特定の条件下では「住宅宿泊管理業者」への業務委託が義務付けられています。この委託を怠ると違法となる可能性があります。

具体的には、以下のようなケースで委託が必要です。

  • 家主不在型の場合(届出住宅に住宅宿泊事業者が居住しない場合)

住宅宿泊管理業者は、騒音やゴミ出しに関する近隣からの苦情対応、宿泊者名簿の作成・備え付け、住宅の維持保全に関する対応など、多岐にわたる業務を行います。

委託を怠った場合、法違反となり、罰則の対象となる可能性があります。

違反行為罰則(最大)
住宅宿泊管理業務の未委託など100万円以下の罰金刑

合法的に民泊を運営するためには、家主不在型の場合は必ず国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者に業務を委託する必要があります。

(5)自治体の条例や管理規約に違反するケース

民泊運営においては、国の法律だけでなく、各自治体が定める条例も遵守する必要があります。条例では、以下のような制限が設けられている場合があります。

  • 営業可能なエリアの制限: 住居専用地域での営業が制限されるなど
  • 営業可能な期間の制限: 特定の期間(例:平日の昼間のみ禁止)や日数制限など

また、マンションなどの集合住宅で民泊を行う場合は、その建物の管理規約も重要です。管理規約で民泊が禁止されている場合、運営は違法となります。

確認すべき事項内容
自治体の条例エリア、営業日・時間などの制限を確認
建物の管理規約民泊の可否、細則などを確認

これらの条例や管理規約に違反して運営すると、指導や罰則の対象となる可能性があります。事前の確認と遵守が必須です。

3.「違法民泊」が引き起こす問題点と影響

(1)事業者への罰則(罰金・罰金刑など)

民泊運営において、法律や条例に違反した場合、運営者には厳しい罰則が科される可能性があります。特に、適切な許可や届出を行わずに営業した場合は、旅館業法や民泊新法に基づき、罰金刑や懲役刑が課される場合があります。

具体的な罰則の例としては、以下のようなものがあります。

  • 無許可営業(旅館業法違反の場合): 6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
  • 無届出営業(民泊新法違反の場合): 100万円以下の罰金

また、自治体の条例に違反した場合も、過料などの罰則が定められていることがあります。これらの罰則は、事業継続を困難にするだけでなく、社会的な信用を失うことにもつながります。合法的な手続きを踏むことが、安心して民泊を運営するための大前提となります。

(2)近隣住民とのトラブル

違法な民泊運営は、近隣住民との深刻なトラブルを引き起こす大きな原因となります。

主なトラブル事例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 騒音問題: 深夜の話し声、パーティー音、スーツケースの引きずる音など
  • ゴミ問題: 分別されていないゴミ、指定場所以外への投棄
  • 不審者感: 見慣れない人が頻繁に出入りすることへの不安
  • 共有スペースの利用: エントランスや廊下でのたむろ、喫煙など

これらのトラブルは、住民の平穏な生活を脅かし、苦情や通報につながる可能性があります。合法的な手続きを踏まずに運営している場合、住民からの通報によって自治体や警察の指導・調査が入るリスクが高まります。

トラブルの種類具体的な影響
騒音・ゴミ住民からの苦情、自治体への通報
不審者感地域全体の治安への不安
違法行為の発覚罰金・罰則、運営停止命令

近隣トラブルは、単に迷惑なだけでなく、民泊運営そのものを継続できなくなる事態に発展する可能性がある重要なリスクです。

(3)衛生・安全面での問題

許可や届出をせずに運営される「違法民泊」は、衛生や安全面で様々な問題を引き起こす可能性があります。

  • 清掃・管理の不徹底:
    • 必要な清掃基準が守られず、不衛生な状態になることがあります。
    • 害虫の発生など、宿泊環境が悪化するケースも考えられます。
  • 消防法への不適合:
    • 消火器の設置義務や避難経路の確保など、消防法に基づく安全対策が講じられていない場合があります。
    • 火災発生時のリスクが高まります。
  • 事故発生時の対応:
    • 施設内で事故や怪我が発生した場合、適切な救護体制や保険加入がないことが多く、対応が遅れたり不十分になったりする恐れがあります。

これらの問題は、宿泊する旅行者だけでなく、万が一の際に近隣住民にも影響を及ぼす可能性があります。合法的な民泊運営では、これらの衛生・安全基準を満たすことが義務付けられています。

(4)利用者のリスク

違法な民泊は、運営者だけでなく利用者にとっても様々なリスクを伴います。

リスクの種類具体的な内容
宿泊の中止行政指導や近隣トラブルにより、予約していた宿泊が急に中止される可能性があります。
安全性の問題消防設備が不十分であったり、衛生管理が徹底されていない場合、安全に宿泊できません。
個人情報の漏洩無許可・無届出の事業者に個人情報を提供することになり、悪用されるリスクがあります。
補償の問題事故やトラブルが発生した場合、適切な保険加入がないため十分な補償が得られないことがあります。

また、利用後に違法な施設であったことが判明した場合、旅行保険が適用されないなどの不利益を被る可能性もゼロではありません。合法的に運営されている施設を選ぶことが、安心して民泊を利用するための重要なポイントとなります。利用者は、事前に許可番号や届出番号を確認するなど、合法性を見極めるようにしましょう。

4.「違法」にならないための具体的な対策

(1)適切な許可や届出を行う

民泊を合法的に運営するためには、事業形態に応じた適切な手続きが必要です。主に以下の3つの方法があります。

  • 旅館業法に基づく許可: ホテルや旅館と同様の許可を取得します。営業日数に上限はありませんが、設備基準などが厳格です。
  • 住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出: 年間180日以内の営業の場合に利用できます。比較的始めやすいですが、様々な制約があります。
  • 国家戦略特別区域法(特区民泊)に基づく認定: 国が指定した特定の区域で、条例に定められた日数(多くは2泊3日以上)で運営できます。

どの法律に基づいて行うかによって、必要な手続きや満たすべき要件が異なります。

法律名主な特徴必要な手続き
旅館業法営業日数上限なし、設備基準厳格許可
住宅宿泊事業法年間180日上限、比較的始めやすい届出
国家戦略特別区域法特定区域限定、条例で定める日数(例:2泊3日~)認定

無許可や無届出での運営は、違法行為となり罰則の対象となります。ご自身の物件や運営スタイルに合った方法を選択し、事前に自治体などに相談しながら正確な手続きを行いましょう。

(2)住宅宿泊管理業者に委託する(民泊新法の場合)

民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づいて民泊を運営する場合、特定の条件下では「住宅宿泊管理業者」への業務委託が義務付けられています。これを行わないと違法になる可能性があります。

具体的には、以下のようなケースで委託が必要となります。

  • 家主不在型:届出住宅に届出者(家主)が居住していない場合

住宅宿泊管理業者は、以下の業務を行います。

  • 宿泊者名簿の作成・備え付け
  • 周辺地域の生活環境への悪化防止に関すること
  • 宿泊者の安全確保に関すること
  • トラブル発生時の対応

委託が必要なにもかかわらず、適切な住宅宿泊管理業者に委託しないまま運営することは法律違反となります。信頼できる登録業者を選び、適正な管理体制を構築することが重要です。

(3)自治体の条例や物件の管理規約を確認する

民泊運営において、法律だけでなく、各自治体が定める条例や、マンション・アパートなどの物件の管理規約も非常に重要です。これらに違反すると、たとえ法律上の手続きをしていても、結果として違法な状態となる可能性があります。

主な確認事項は以下の通りです。

  • 自治体条例:
    • 営業可能な地域(住居専用地域などでは制限がある場合が多い)
    • 営業日数に関する上乗せ規制(民泊新法の180日より短く定めている地域も存在します)
    • 周辺住民への周知方法や苦情対応に関する規定
  • 管理規約:
    • 民泊(宿泊業)が許可されているか
    • 騒音やゴミ出しに関するルール
    • 共用部分の使用に関する制限

これらのルールを事前に確認し、遵守することが、合法的な民泊運営には不可欠です。特にマンションなど集合住宅で運営する場合は、管理規約で民泊が禁止されていないか必ず確認しましょう。

(4)運営ルールを明確にし、近隣への配慮を徹底する

合法的な民泊運営には、利用者と近隣住民双方への配慮が不可欠です。騒音やゴミ出しルールなどを明確に伝え、トラブルを未然に防ぎましょう。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • 利用規約の整備:
    • 騒音に関する注意喚起
    • ゴミ出しの分別方法と回収場所・時間
    • 共用部分の利用ルール
  • チェックイン・チェックアウト方法:
    • 非対面の場合でも緊急連絡先を明確に伝える
    • 深夜・早朝の出入りに関する注意
  • 近隣住民への周知:
    • 運営開始の挨拶
    • 連絡先を記載したプレート設置(任意)

また、以下の項目を多言語で記載した案内を室内に設置することも有効です。

項目内容例
騒音夜間(21時~翌朝7時)は特にご配慮ください。
ゴミ出し分別ルールを守り、指定場所へ出してください。
緊急連絡先〇〇(氏名/会社名):電話番号

これらの対策を講じることで、利用者と近隣住民双方にとって快適な環境を維持し、円滑な運営につながります。

(5)消防法に基づいた設備を整える

民泊運営において、利用者の安全確保は最優先事項です。特に消防法に基づく設備設置は、違法状態を避ける上で非常に重要となります。

消防法では、建物の用途や規模に応じて必要な消防用設備等が定められています。民泊施設の場合、一般的な住宅とは異なる基準が適用されることがあります。

具体的には、以下のような設備の設置が義務付けられる場合があります。

  • 自動火災報知設備: 火災発生を早期に感知し、警報を発するもの。
  • 消火器: 初期消火のための設備。
  • 誘導灯: 避難方向を示す照明。
  • 避難器具: 緊急時に安全に避難するための器具(縄ばしご、緩降機など)。

これらの設備は、地域の消防署の指導に基づき、適切に設置・維持管理する必要があります。未設置や点検不備は、罰則の対象となるだけでなく、万が一の火災時に人命に関わる重大な結果を招く可能性があります。

設備の種類設置義務の可能性
自動火災報知設備高い
消火器高い
誘導灯建物の構造による
避難器具建物の構造による

安全な運営のためにも、必ず事前に消防署に相談し、必要な設備を確認・設置しましょう。

5.まとめ:合法的な民泊運営に向けて

民泊運営を成功させるためには、法律や条例を遵守し、違法状態を避けることが最も重要です。適切な手続きを踏まない営業は、罰則の対象となるだけでなく、近隣トラブルや利用者からの信用失墜にもつながります。

合法的な運営を行うためには、以下の点を必ず確認・実行しましょう。

  • 許可・届出の徹底: 旅館業法、民泊新法、特区民泊など、ご自身の運営形態に合った法に基づき、必要な許可や届出を行います。
  • 管理体制の構築: 民泊新法の場合は、住宅宿泊管理業者への委託を検討します。
  • ルール確認と遵守: 自治体の条例やマンション等の管理規約を確認し、定めに従います。
  • 安全・衛生対策: 消防法に適合した設備設置や清掃など、宿泊者の安全と快適性を確保します。
確認事項実施内容
法的手続き許可・届出の申請
管理業務住宅宿泊管理業者への委託(該当する場合)
地域ルール条例・管理規約の確認と遵守
設備・環境消防設備、衛生管理の徹底

これらの対策を講じることで、安心して民泊事業を継続できます。適法な運営を通じて、地域社会との共存を図りながら、質の高い宿泊体験を提供していきましょう。

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