宿泊コラム

第1種中高層住居専用地域で民泊は可能?旅館業との違いと運営条件を解説

第1種中高層住居専用地域で民泊は可能?旅館業との違いと運営条件を解説

1.はじめに:「第1種中高層住居専用地域」とは?

「第1種中高層住居専用地域」とは、都市計画法に基づいて定められた住居系の用途地域の一つです。その名の通り、中高層の住宅が建ち並ぶことを想定した地域であり、静かな住環境を守るための規制が設けられています。

具体的には、以下のような特徴があります。

  • 用途の制限: 主に住宅の建築が中心となります。
  • 建物の高さ: 中高層の住宅(おおむね10階建て程度)の建築が可能です。
  • 商業施設の制限: 比較的小規模な店舗や事務所などは建築できますが、大規模な商業施設や娯楽施設などは制限されます。
  • 騒音・迷惑施設の制限: 工場など、周辺環境に悪影響を与える可能性のある施設は原則として建築できません。

この地域は、良好な住環境の維持が重視されているため、建築物の用途や規模に関しては一定の制限が課せられています。そのため、この地域で事業を検討される際には、その用途が地域の実情に合致しているかどうかの確認が重要となります。特に、宿泊施設としての利用を考える場合、どのような法規制が適用されるのかを正確に把握することが不可欠です。

2.第1種中高層住居専用地域での民泊運営の可能性

(1)旅館業法に基づく宿泊施設運営との違い

第1種中高層住居専用地域では、原則として旅館業法に基づくホテルや旅館といった「営業」を目的とした宿泊施設の運営はできません。これは、同地域が住宅環境の保護を目的としているためです。

一方、民泊は、旅館業法とは異なる「住宅宿泊事業法(民泊新法)」や「国家戦略特別区域法(特区民泊)」といった法律に基づいて運営される場合があります。これらの法律では、一定の条件下で、自宅の一室などを活用した宿泊サービスの提供が認められています。

制度目的第1種中高層住居専用地域での可否
旅館業法に基づく事業営業目的の宿泊施設提供原則不可
住宅宿泊事業法(民泊新法)自宅等を活用した簡易宿泊サービス提供条件付きで可能(後述)
特区民泊特定区域における宿泊サービス提供条件付きで可能(後述)

このように、第1種中高層住居専用地域における宿泊施設の提供は、その運営形態によって可否が分かれます。旅館業法に基づく営業とは異なり、民泊新法や特区民泊であれば、一定の規制のもとで運営できる可能性があります。

(2)民泊新法(住宅宿泊事業法)における規制

民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づき、一般住宅を活用して民泊を運営する場合、第1種中高層住居専用地域でも一定の条件下で可能です。ただし、この法律では、住宅宿泊事業者は「人を宿泊させるサービス」を提供しますが、これは旅館業法とは異なります。

民泊新法における主な規制は以下の通りです。

  • 営業日数制限: 年間180日以内
  • 届出制: 実施する自治体への届出が必要
  • 衛生管理: 衛生的な環境の維持が求められる
  • 騒音・迷惑行為の防止: 近隣住民への配慮が不可欠

特に、第1種中高層住居専用地域は、住環境の保護を目的とした地域であり、建築物や用途に関する制限が設けられています。そのため、民泊新法による運営が可能であっても、各自治体が定める条例によって、さらに細かい規制が課される可能性があります。例えば、特定の用途地域での民泊運営を禁止したり、営業日数に上限を設けたりする条例が存在する場合もあります。

したがって、第1種中高層住居専用地域で民泊新法に基づいた民泊運営を検討される際は、必ず該当する自治体の条例を確認することが重要です。

(3)特区民泊(国家戦略特別区域法)における規制

第1種中高層住居専用地域での民泊運営について、国家戦略特別区域法(特区民泊)の観点から見てみましょう。特区民泊は、国家戦略特別区域内において、自治体が条例で定められた一定の要件を満たす場合に、旅館業法の適用除外として住宅宿泊事業とは異なる形で民泊運営を可能とする制度です。

特区民泊の最大のポイントは、自治体が地域の実情に合わせて条例で規制を緩和できる点にあります。そのため、第1種中高層住居専用地域であっても、特区に指定されており、かつ自治体の条例で一定の要件(例えば、宿泊日数制限の緩和、事業者の居住要件の緩和など)が定められていれば、民泊運営が可能となる場合があります。

制度名根拠法主な特徴
特区民泊国家戦略特別区域法自治体が条例で規制を緩和し、旅館業法の適用除外となる民泊運営を可能にする

ただし、特区民泊の実施状況や条例の内容は自治体によって大きく異なります。第1種中高層住居専用地域で特区民泊を検討される場合は、必ず当該自治体の都市計画課や観光課などに確認し、最新の条例や規制内容を把握することが不可欠です。

3.第1種中高層住居専用地域での民泊運営における注意点

(1)各法律・条例の確認の必要性

第1種中高層住居専用地域で民泊を運営する場合、まずは関連する法律や条例を正確に確認することが不可欠です。民泊には、旅館業法に基づくもの、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づくもの、そして国家戦略特別区域法(特区民泊)に基づくものなど、いくつかの形態があります。

それぞれの法律や条例によって、運営できる地域や、満たすべき条件が異なります。特に、第1種中高層住居専用地域は住居の環境を保護するための用途地域であり、一定の規制が設けられている可能性があります。

法律・条例確認すべき主な内容
旅館業法営業できる地域、施設基準、許可手続き
住宅宿泊事業法届出の要否、年間提供日数制限、地域による制限
国家戦略特別区域法特区指定の有無、特区ごとの条例

さらに、これらの法律に加え、各自治体が独自に定めている条例による規制も存在します。例えば、特定の用途地域での営業を制限する条例や、騒音・ゴミ出しに関する細則などが設けられている場合があります。そのため、事業を行う予定の自治体の都市計画課などに問い合わせ、最新の条例内容を確認することが極めて重要です。これらの確認を怠ると、知らず知らずのうちに法令違反となり、事業継続が困難になるリスクも考えられます。

(2)自治体ごとの条例による追加規制の可能性

民泊の運営にあたっては、民泊新法(住宅宿泊事業法)や旅館業法だけでなく、各自治体が定める条例による追加の規制が存在する場合があります。特に、第1種中高層住居専用地域のように、住居環境の保護を目的とした用途地域では、自治体独自の条例によって民泊運営が制限されるケースが見られます。

例えば、以下のような規制が考えられます。

  • 営業日数の制限: 年間の営業日数を民泊新法で定められた上限よりも短く設定している自治体があります。
  • 周辺地域への影響: 騒音やゴミ問題など、近隣住民への影響を考慮し、特定のエリアでの民泊運営を禁止または制限する条例が設けられている場合があります。
  • 設備要件: 消防設備や断熱材など、安全面や快適性に関する独自の設備要件が課されることもあります。
規制内容例具体的な内容
営業日数制限年間営業日数を180日以内に制限
区域制限特定の住宅密集地域での民泊運営を禁止
設備要件非常用照明器具の設置義務、防音対策の強化など

これらの条例は、自治体によって内容が大きく異なります。そのため、民泊運営を検討されている地域がある場合は、必ずその自治体の担当窓口(都市計画課や観光課など)に確認し、最新の条例内容を把握することが不可欠です。条例を遵守しない場合、罰則の対象となる可能性もありますので、十分な注意が必要です。

(3)近隣住民への配慮とトラブル防止策

第1種中高層住居専用地域で民泊を運営する際には、近隣住民への配慮が不可欠です。静穏な住環境を守るため、以下の点に注意しましょう。

  • 騒音・振動対策:
    • 早朝や深夜の利用は控え、利用者に周知徹底します。
    • 建物の構造上、音漏れが懸念される場合は、防音対策の実施を検討します。
  • ゴミ出しルール:
    • 自治体のゴミ出しルールを遵守し、利用者に分かりやすく説明します。
    • 指定場所以外へのポイ捨ては厳禁です。
  • 共用部分の利用:
    • 廊下や階段などの共用部分を清潔に保ち、他の居住者への迷惑行為がないようにします。
    • 共有スペースでの飲食や大声での会話は控えるよう促します。
  • 緊急連絡体制:
    • トラブル発生時の連絡先を明確にし、迅速に対応できる体制を整えます。
配慮事項具体的な対策
騒音・振動時間帯の制限、防音対策
ゴミ出しルール遵守、利用者への周知
共用部分利用清潔保持、迷惑行為の禁止
緊急連絡連絡先明記、迅速な対応

これらの配慮を怠ると、近隣住民とのトラブルに発展し、運営継続が困難になる可能性もあります。日頃から良好な関係を築くことが重要です。

4.民泊運営の用途地域を調べる方法

(1)自治体の都市計画課等への問い合わせ

第1種中高層住居専用地域で民泊運営を検討されている場合、まずお住まいの自治体の都市計画課や建築指導課などに問い合わせることが重要です。これらの部署では、その地域がどのような用途地域に指定されているか、また、建築基準法や都市計画法に基づく制限事項などを確認できます。

民泊運営が可能かどうかは、単に用途地域だけでなく、以下のような点が関連してきます。

  • 建築基準法上の制限:
    • 建物の用途変更に関する規定
    • 建ぺい率・容積率
  • 消防法上の規定:
    • 避難経路や設備に関する基準
  • 条例による追加規制:
    • 自治体によっては、住環境保護の観点から、特定地域での民泊運営を制限する条例を設けている場合があります。

これらの情報は、自治体の窓口に直接確認するのが最も確実な方法です。問い合わせの際は、以下の情報を伝えるとスムーズです。

問い合わせ事項詳細
対象物件の住所具体的な所在地
希望する用途民泊(住宅宿泊事業、旅館業など)
確認したい内容用途地域、建築法上の制限、条例の有無

正確な情報を得ることで、法的な問題を回避し、安心して民泊運営を進めることができます。

(2)自治体提供の用途地域マップや都市計画図の活用

ご自身が所有する物件の用途地域を調べるには、自治体が提供する情報を活用するのが最も確実です。多くの自治体では、ウェブサイト上で「用途地域マップ」や「都市計画図」といった名称で、最新の都市計画情報を公開しています。

これらのマップや図面は、インターネットで「〇〇市 用途地域」(〇〇にはお住まいの自治体名を入力)などと検索することで見つけられる場合が多いです。

  • 確認方法の例:
    • 自治体の公式ウェブサイトを検索する
    • 「都市計画」「用途地域」といったキーワードでサイト内検索を行う
    • 各自治体の都市計画課などの担当部署に直接問い合わせる

これらの情報源を活用することで、お住まいの地域が「第1種中高層住居専用地域」に該当するかどうかを具体的に把握することができます。

確認できる情報活用方法
用途地域マップ、都市計画図ウェブサイトで閲覧、ダウンロード
担当部署への問い合わせ電話や窓口での直接確認

これにより、民泊運営が可能かどうか、またそのための条件などを、より正確に理解するための第一歩となります。

5.まとめ:第1種中高層住居専用地域での民泊運営は条件付きで可能

第1種中高層住居専用地域は、住宅街としての静穏な環境を守るために建築用途が制限されています。そのため、旅館業法に基づく「簡易宿所」や「下宿」といった形態での宿泊施設運営は原則として認められていません。

しかし、民泊新法(住宅宿泊事業法)の成立により、一定の条件下では第1種中高層住居専用地域でも民泊運営が可能となりました。

法律・事業形態第1種中高層住居専用地域での運営主な条件
旅館業法(簡易宿所等)原則不可用途地域による制限
民泊新法(住宅宿泊事業法)条件付きで可能延べ床面積90㎡以下、年間180日以内の営業、届出制、各自治体の条例による制限
特区民泊(国家戦略特別区域法)条件付きで可能各特定区域の条例による(旅館業法の制限緩和、より柔軟な条件設定が可能)

民泊新法に基づく住宅宿泊事業では、建物の延べ床面積が90㎡以下であること、年間180日以内の営業期間であることなどが基本的な条件となります。また、特区民泊の場合は、各自治体が定める国家戦略特別区域計画に基づき、より詳細な条件が定められています。

いずれの場合も、運営を検討する際には、必ず管轄する自治体の都市計画課等へ確認し、最新の条例や規制内容を把握することが極めて重要です。近隣住民への配慮を忘れず、良好な関係を築きながら運営を進めましょう。

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