宿泊コラム

1.はじめに：ゲスト満足度UPのカギは食事提供？

旅行の楽しみのひとつである食事。宿泊施設を選ぶ際も、食事は重要な要素です。 近年人気を集めている民泊では、ホテルや旅館とは異なる、よりプライベートな空間で食事を楽しめると期待するゲストも少なくありません。

ゲストが民泊に期待すること
アットホームな雰囲気
プライベートな空間
地域との交流
思い出に残る体験

実際、食事提供は、ゲスト満足度やリピーター獲得に繋がる効果が期待できます。 次の章では、民泊で食事を提供する際の基本ルールについて解説していきます。

2.民泊における食事提供の基本ルール

飲食店営業許可なしでできること、できないこと

提供形態	飲食店営業許可	必要性
有料で食事を提供する	必要	○
無料で食事を提供する	不要	×

上記のように、原則として、ゲストに料金を徴収して食事を提供する場合には、飲食店営業許可が必要となります。無許可で営業すると、食品衛生法違反に該当し、罰則が科される可能性があります。

一方、あくまでもゲストへのサービスとして、無料であれば食事の提供は可能です。ただし、無料の場合でも、食材の衛生管理やアレルギー対応など、安全面には十分配慮する必要があります。

ゲストとの共同調理はグレーゾーン？

民泊でゲストとの距離を縮めるアクティビティとして、一緒に料理を楽しむことを検討するホストもいるかもしれません。しかし、ゲストと共同で調理を行うことは、飲食店営業許可の有無に関わらず、衛生管理や食中毒のリスクが高まるため注意が必要です。

例えば、ゲストが調理に参加する場合、提供者側が意図しない形で食品に触れてしまう可能性もあります。これは食品衛生法上の問題となる可能性があり、厳しい罰則が科される可能性もゼロではありません。

食品衛生責任者の設置	調理施設の基準	提供者の責務
義務付けられている	定められた基準を満たす必要がある	安全な食品の提供

上記のように、飲食店営業許可を取得するためには、食品衛生責任者の設置や調理施設の基準など、様々な要件を満たす必要があります。共同調理はこれらの要件を満たしているか曖昧な場合が多く、グレーゾーンと言えるでしょう。

ゲストとの交流を深めたい場合は、調理ではなく、食事を共にする、地元の食材や料理を紹介するなど、他の方法を検討することをおすすめします。

注意点：テイクアウト提供やケータリング利用の場合

飲食店営業許可を取得せずに食事を提供する方法として、テイクアウトやケータリングの利用が考えられます。しかし、この場合でもいくつか注意すべき点があります。

注意点	内容
提供元の表示	テイクアウトやケータリングを利用する際は、ゲストに提供元の情報を明確に伝えましょう。メニューやレシート、店舗情報などを共有することで、ゲストは安心して食事を楽しむことができます。
食品衛生責任者の設置	自宅で調理をしない場合でも、食品衛生責任者の設置が義務付けられています。テイクアウトやケータリングを利用する場合は、提供元が適切な資格を有していることを確認しましょう。
アレルギー対応	提供元がアレルギー対応を行っているか事前に確認し、ゲストに正確な情報を伝えましょう。
食中毒発生時の責任の所在	万が一、テイクアウトやケータリングの食事で食中毒が発生した場合、責任の所在が曖昧になる可能性があります。提供元と事前にしっかりと契約内容を確認しておくことが重要です。

これらの点に注意し、ゲストが安心して食事を楽しめる環境を整えましょう。

3. 飲食店営業許可を取得するには？

必要な資格や設備、申請手順

飲食店営業許可を取得するには、施設の設備基準を満たし、保健所への申請が必要です。

必要な資格

• 食品衛生責任者資格：施設ごとに1名以上
• 調理師免許：場合によっては必要

設備基準（例）

設備	基準
調理場	必要な広さ、換気設備、排水設備、照明設備など
シンク	専用シンク（洗浄・すすぎ・消毒用）、食材用シンクなど
冷蔵庫	食材の種類や量に応じた容量、温度計の設置
食品保管庫	食材や調理器具の衛生的な保管場所

申請手順

1. 保健所への事前相談：施設の図面や営業計画などを持ち込み、相談します。
2. 施設の改修：保健所の指導に基づき、設備基準を満たすように改修します。
3. 申請書類の準備：申請書、施設の図面、設備の概要、営業計画書などを用意します。
4. 保健所への申請：必要書類を提出します。
5. 現地検査：保健所による施設の検査を受けます。
6. 許可証の交付：検査に合格すると、飲食店営業許可証が交付されます。

飲食店営業許可を取得するには、費用と期間がかかります。費用は、施設の改修費用や申請手数料など、数万円から数十万円程度かかる場合があります。期間は、申請から許可まで1～2か月程度かかることが多いです。事前に保健所に相談し、必要な準備を進めましょう。

費用や期間の目安

飲食店営業許可を取得するには、費用と期間がかかります。

主な費用は以下の通りです。

項目	費用
申請手数料	約18,000円
食品衛生責任者講習会受講料	約6,000円～
施設改修費用（場合によっては必要）	数万円～数十万円以上

申請から許可が下りるまでの期間は、通常1～2ヶ月程度です。 ただし、施設の改修が必要な場合や、申請内容に不備がある場合は、さらに時間がかかる可能性があります。

飲食店営業許可を取得するかどうかは、費用や期間、提供したいサービスの内容などを総合的に判断し、検討する必要があります。

4.【許可なし】ゲストに喜ばれる食事提供アイデア

ローカルフード体験：周辺飲食店情報やテイクアウト

飲食店営業許可を取得せずにゲストに食事を提供する場合は、近隣の飲食店情報を提供したり、テイクアウトを利用するのがおすすめです。

例えば、近隣の飲食店情報をまとめたマップやリストを作成し、ゲストに提供しましょう。

	説明
おすすめのお店リスト	ジャンル、予算、アクセス情報などを記載
グルメマップ	お店の位置を分かりやすく表示
テイクアウトメニュー表	各店のテイクアウトメニューをまとめたもの

リストやマップを作成する際には、ゲストの好みに合わせた情報提供を心がけましょう。事前にゲストの国籍や食の好みなどをヒアリングしておくと、よりパーソナルな情報提供が可能になります。

また、近隣の飲食店と連携し、デリバリーサービスを紹介したり、割引クーポンを発行するのも良いでしょう。テイクアウトを利用する場合には、ゴミ disposal の方法をゲストに事前に伝えておくことが大切です。

自炊サポート：調味料や調理器具、レシピの提供

飲食店営業許可を取得せずにゲストに食事を提供する場合、自炊サポートに力を入れる方法があります。 例えば、調味料や調理器具を充実させ、簡単な調理ができる環境を整えましょう。 レシピを提供するのも良いアイデアです。 地元の食材を使った郷土料理や、近くのスーパーで購入できる食材を使った簡単な料理などを紹介することで、ゲストに旅先ならではの食体験を楽しんでもらうことができます。

	調味料例	調理器具例
基本	醤油、味噌、砂糖、塩、胡椒、油、酢、みりん	包丁、まな板、鍋、フライパン、おたま、フライ返し
発展	オリーブオイル、ハーブソルト、ごま油、ポン酢	電子レンジ、炊飯器、トースター、ミキサー

レシピは、写真やイラストを多用して分かりやすくまとめ、調理時間や難易度も記載しておくと親切です。 これらのサポートによって、ゲストは安心して自炊を楽しむことができ、滞在中の満足度向上に繋がるでしょう。

ウェルカムドリンク＆フード：地元のお菓子や飲み物

飲食店営業許可を取得せずにゲストをおもてなししたい場合、ウェルカムドリンクやフードの提供はいかがでしょうか。 地元の特産品や飲み物を用意することで、ゲストに旅の疲れを癒してもらいながら、地域の魅力を伝えることができます。

例えば、以下のようなものを用意しておくと喜ばれます。

提供するもの	具体的な例
地元の飲み物	地ビール、ご当地サイダー、伝統的なお茶、フルーツジュース
地元のお菓子	和菓子、洋菓子、銘菓、地元で採れたフルーツを使ったお菓子など
その他	インスタントコーヒー、紅茶、ミネラルウォーター

提供する際には、アレルギー対応の飲み物やお菓子も用意しておくと、よりゲストに配慮が行き届きます。 ウェルカムドリンクやフードは、ゲストとのコミュニケーションのきっかけにもなります。 ゲストがリラックスして過ごせる空間を提供しましょう。

5.【許可あり】民泊で人気の食事提供サービス

朝食サービス：定番メニューからローカルフードまで

飲食店営業許可を取得すると、宿泊ゲストに向けて様々な朝食サービスを提供できます。定番のメニューから、その地域ならではのローカルフードまで、ゲストの旅のスタイルに合わせた朝食を提供することで、満足度を高めることができます。

朝食サービス例	説明
定番の朝食セットメニュー	和食、洋食、コンチネンタルなど、一般的なホテルと同様の朝食メニューを提供します。
ローカルフードを取り入れた朝食	地元の食材を使った料理や、その地域ならではの郷土料理を提供することで、特別な食体験を提供できます。
自家製パンやジャム	手作りの温かさが伝わる朝食は、ゲストの思い出作りに繋がります。
テイクアウト可能な朝食	早朝に出発するゲストや、観光に出かけるゲストのために、持ち運びやすい軽食や飲み物を用意しておくと喜ばれます。

朝食の内容は、事前にゲストに希望をヒアリングしておくと、より満足度の高いサービスに繋がります。アレルギーや食事制限にも対応することで、ゲストへの配慮が伝わるでしょう。

夕食提供：コース料理やBBQなど

飲食店営業許可を取得している場合、夕食の提供も可能です。ゲストの好みに合わせた様々なサービスを検討してみましょう。

提供スタイル	説明
コース料理	事前にメニューを決めておくことで、アレルギー対応などがスムーズになります。
BBQ	屋上や庭などのスペースを活用すれば、宿泊施設ならではの体験を提供できます。
オプションメニュー	メイン料理やデザートなどを、追加料金で選択できるようにしておくと、ゲストの満足度向上に繋がります。

夕食提供は、ゲストの滞在時間を充実させ、特別な思い出を作る機会となります。宿泊施設の特色を生かした、魅力的なサービスを提供しましょう。

料理教室：ゲスト参加型で交流を生み出す

飲食店営業許可を取得している場合、宿泊サービスに加えて料理教室を開催できます。ゲスト参加型の体験は、思い出作りだけでなく、ホストとゲスト、ゲスト同士の交流を生み出す良い機会になります。

料理教室のメリット	具体的な内容
ゲストとホストの距離が縮まる	一緒に料理を作ることで会話が弾み、親密な関係を築きやすくなります。
ゲスト同士の交流促進	初対面のゲスト同士でも、共通の体験を通して自然と会話が生まれ、友情が芽生えるきっかけになります。
日本の家庭料理を深く知ってもらえる	プロの料理人ではないホストだからこそ伝えられる、家庭料理の知恵や工夫を共有できます。レシピ提供にとどまらず、実際に体験できる点が魅力です。
リピーター獲得の可能性UP	料理教室という特別な体験は、ゲストの記憶に残りやすく、次回の宿泊や口コミにつながる可能性があります。

料理教室は、日本の文化を体験したいと考える外国人ゲストに特に人気があります。巻き寿司やラーメンなど、人気の日本食を提供したり、地元の食材を使った郷土料理を教えたりするのも良いでしょう。ゲストのスキルレベルや好みに合わせたメニュー選びが重要です。

6.食事提供でゲスト満足度を高めるポイント

アレルギーや食事制限への対応

アレルギーや食事制限を持つゲストは少なくありません。安全で快適な滞在を提供するため、事前にゲスト情報を確認し、適切な対応を心がけましょう。

項目	内容
事前確認	予約時やチェックイン時に、アレルギーや食事制限の有無を確認しましょう。
情報提供	提供する食事内容の詳細（食材、調味料、調理方法など）を伝え、ゲスト自身に判断してもらえるようにしましょう。
代替案の提示	アレルギーや食事制限に対応できない場合は、代替案を事前に用意しておくと安心です。近隣飲食店の情報提供なども検討しましょう。
個別対応	可能な範囲で、個別の要望に対応できるよう努めましょう。

細やかな気配りが、ゲストの満足度向上に繋がります。

事前のコミュニケーションでニーズを把握

ゲストに満足してもらえる食事提供には、事前のコミュニケーションが欠かせません。予約確定後、宿泊前にゲストのニーズを丁寧にヒアリングしましょう。

例えば、アレルギーや食事制限の有無を確認することは非常に重要です。

項目	具体的な質問例
アレルギー	特定の食材にアレルギーはありますか？
食事制限	宗教や健康上の理由による食事制限はありますか？
好み	苦手な食材や、逆に食べたいものはありますか？

事前にゲストの要望を把握することで、安心して食事を楽しんでもらえるだけでなく、ゲストに寄り添ったおもてなしとして、満足度向上に繋がります。

地域の魅力を伝える食の体験提供

食事は、その土地の文化や歴史に触れることができる魅力的な体験です。ゲストの思い出に残る、より深い民泊体験を提供するためにも、地域の魅力を伝える食の体験を提供しましょう。

例えば、以下のような方法が考えられます。

提供方法	内容例
地元の食材を積極的に使用	地元の農家から仕入れた新鮮な野菜や、地元で獲れた魚介類を使う
郷土料理や伝統的な調理法を取り入れる	その土地で昔から親しまれている料理や、独特の調理法で提供する
食材や料理にまつわるエピソードを紹介	生産者の想い、料理の由来、歴史などを伝えることで、より記憶に残る体験を提供する

これらの工夫によって、ゲストは単に食事を楽しむだけでなく、その地域への理解や愛着を深めることができます。積極的に地域の魅力を伝え、他の民泊施設との差別化を図りましょう。

7. まとめ：ルールを守って、食で思い出に残る民泊体験を！

民泊における食事提供は、ゲストの満足度を高め、特別な旅行体験を提供する上で有効な手段です。 しかし、食の提供には、飲食店営業許可の有無など、守るべきルールが存在します。

提供方法	許可	必要な場合
宿泊者以外への提供	要	飲食店営業許可の取得
調理済みの食事の提供	要	原則として飲食店営業許可が必要
食材や飲料の提供のみ	不要	食品衛生法の遵守
周辺飲食店情報の提供	不要	正確な情報の提供

許可なく食事を提供する場合には注意が必要です。例えば、ゲストが自ら調理する「共同調理」はグレーゾーンと解釈される可能性があり、トラブルを避けるためにも、事前にゲストとしっかりとコミュニケーションを取り、合意形成をしておくことが重要です。

食の提供を通してゲストに喜んでもらうためには、アレルギーや食事制限への配慮も欠かせません。事前にゲストのニーズを把握し、適切な対応を行うようにしましょう。

民泊運営における食事提供は、ルールを守り、ゲストとのコミュニケーションを大切にすることで、より思い出深い宿泊体験を提供することに繋がります。