宿泊コラム

民泊の180日ルールを超えるとどうなる? 罰則や回避策を徹底解説
1. はじめに:民泊運営で必ず知っておきたい「180日ルール」

近年、急増している民泊ですが、その運営には必ず知っておかなければならないルールが存在します。
それが「180日ルール」です。
ルール名 | 内容 |
---|---|
180日ルール | 年間の営業日数が最大180日までに制限される |
このルールを無視して営業してしまうと、厳しい罰則が科せられる可能性もあります。
本記事では、180日ルールとは何か、なぜこのルールができたのか、ルール違反をするとどうなるのか、そして180日ルールを超えて運用する方法まで詳しく解説していきます。
これから民泊を始めようと考えている方、既に民泊を運営している方も、ぜひ最後まで読んでいただき、正しい知識を身につけてください。
2. 民泊の「180日ルール」とは?

住宅宿泊事業法(民泊新法)で定められたルール
2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)によって、民泊の営業日数には制限が設けられました。
この法律では、宿泊サービスを提供する際には、住宅宿泊事業、旅館業法、建築関連法規など、それぞれの法律に基づいた適切な手続きが必要であると定められています。
そして、住宅宿泊事業法に基づいて営業を行う民泊には、年間の営業日数に上限が設けられています。これが「180日ルール」です。
法律 | 営業日数制限 |
---|---|
住宅宿泊事業法(民泊新法) | 最大180日 |
旅館業法 | 制限なし |
つまり、届出のみで比較的簡単に始められる民泊新法に基づく営業には、年間最大180日という制限が設けられている一方、旅館業法に基づいて営業許可を取得した場合は、営業日数に制限がないという違いがあります。
年間の営業日数が最大180日までに制限
住宅宿泊事業法(民泊新法)では、年間の営業日数に上限が設けられています。 具体的には、1年間(1月1日~12月31日)のうち、宿泊サービスを提供できる日数は最大180日以内と定められています。
期間 | 営業日数の上限 |
---|---|
1年間(1月1日~12月31日) | 最大180日以内 |
この制限は、住宅宿泊事業を行う全ての物件に適用されます。 例えば、1つの物件を年間を通して民泊として運用する場合、営業できる日数は最大で180日となり、残りの約半年は営業できません。
3. 180日ルールができた背景

近隣住民とのトラブル増加
民泊の普及に伴い、一部の宿泊者による騒音やゴミ問題など、近隣住民とのトラブルが増加しました。
トラブル内容 | 具体例 |
---|---|
騒音 | 深夜に大人数で騒ぐ、楽器演奏、大声での会話 |
ゴミ問題 | ゴミの分別が不十分、指定場所以外へのゴミ放置 |
無断駐車 | 指定駐車場以外への駐車、路上駐車 |
プライバシー侵害 | 住民の生活空間への侵入、写真撮影 |
不安感 | 見慣れない人が出入りすることへの不安、犯罪発生の可能性 |
このようなトラブルは、住民の生活環境を悪化させるだけでなく、地域コミュニティの崩壊にもつながりかねません。そこで、健全な民泊運営と近隣住民との共存を図るために、180日ルールが導入されることとなりました。
ホテル業界の保護
民泊の急増は、従来の宿泊施設であるホテル業界の経営を圧迫する可能性がありました。
宿泊施設 | 特徴 | 価格帯 |
---|---|---|
ホテル | サービスが充実 | 高め |
民泊 | ホテルよりも安価で、より生活に近い宿泊体験 | 低め |
上記のように、ホテルと民泊では、サービス内容や価格帯が大きく異なります。 しかし、宿泊施設としての選択肢が増えることで、価格競争が激化し、ホテル業界の収益が減少することが懸念されました。 そこで、180日ルールを設けることで、ホテル業界との適切な競争環境を維持し、その保護を図る狙いがありました。
ヤミ民泊の横行
住宅宿泊事業法(民泊新法)が制定される以前は、旅館業法の許可なく無許可で営業する違法民泊、いわゆる「ヤミ民泊」が横行していました。
問題点 | 内容 |
---|---|
近隣トラブル | 騒音、ゴミ出し問題など、近隣住民とのトラブルが多発していました。 |
安全対策の不足 | 火災時の避難経路の確保や衛生管理など、安全対策が不十分な施設が多く見られました。 |
税務上の問題 | 適切な納税が行われず、税収減につながっていました。 |
これらの問題を背景に、適正な民泊運営と観光客の安全・安心を守るため、180日ルールを含む住宅宿泊事業法が施行されました。
4. 180日を超えて営業するとどうなる?

罰則規定:6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金
180日ルールを守らずに営業を続けると、法律違反となり罰則が科せられます。
具体的には、住宅宿泊事業法(民泊新法)では、下記のように定められています。
違反内容 | 罰則 |
---|---|
180日を超えて営業した場合 | 6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金 |
無許可で営業した場合(ヤミ民泊) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金、または併科 |
つまり、180日を超えて民泊営業を行った場合は、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくは両方が科せられる可能性があります。 「知らなかった」では済まされないため、180日ルールをしっかりと理解し、適切な範囲で民泊運営を行うように心がけましょう。
悪質な場合は氏名公表や旅館業法の許可取り消しの可能性も
180日ルール違反を繰り返したり、悪質な運営を行う事業者に対しては、罰則以外にも下記のような厳しい措置がとられる可能性があります。
措置内容 | 説明 |
---|---|
氏名公表 | 悪質な違反者として、氏名や住所、違反内容などが公表されることがあります。 |
旅館業法の許可取り消し | 既に旅館業法の許可を得てホテルや旅館を運営している場合、その許可が取り消される可能性があります。 |
これらの措置は、再発防止と健全な民泊市場の形成を目的としています。180日ルールを遵守することはもちろん、近隣住民への配慮を忘れずに、適切な民泊運営を心がけましょう。
5. 180日ルールを超えないための対策

営業日数をしっかり管理
180日ルールを超過しないためには、年間の営業日数を正確に把握することが重要です。
具体的には、以下の方法が有効です。
カレンダー管理
シンプルな方法ですが、カレンダーに営業日と非営業日を明確に記録することで、年間の営業日数を把握できます。
予約管理システムの活用
民泊サイトと連携した予約管理システムを導入することで、自動的に営業日数を計算することができます。
エクセルなどでの記録
エクセルなどの表計算ソフトに入居日と退出日を記録することでも、営業日数の管理が可能です。
項目 | カレンダー管理 | 予約管理システム | エクセル |
---|---|---|---|
コスト | 低 | 中 | 低 |
精度 | 中 | 高 | 中 |
運用負荷 | 中 | 低 | 中 |
導入のしやすさ | 高 | 中 | 高 |
上記はあくまで一例です。自身に合った方法で、正確に営業日数を管理しましょう。
予約システムを活用
民泊運営において、年間の営業日数を管理することは非常に重要です。180日を超えて営業しないよう、予約システムを活用して効率的に管理しましょう。多くの予約システムでは、カレンダー形式で予約状況や営業日数を一目で確認できる機能が備わっています。
機能例 | 説明 |
---|---|
予約カレンダー | 予約受付状況をカレンダーで一元管理 |
営業日数管理機能 | あらかじめ設定した年間営業日数の上限に近づくとアラートで知らせる機能 |
予約制限設定 | 特定の期間や曜日の予約受付を制限する機能 |
自動メッセージ送信機能 | 予約確定時や宿泊日前に、宿泊者に対して自動でメッセージを送信する機能 |
これらの機能を活用することで、ダブルブッキングや180日ルール違反のリスクを軽減できます。また、予約や顧客管理を自動化することで、業務効率化にもつながります。
専門業者に相談
180日ルールを遵守しながら、効果的に民泊運営を行うためには、専門業者に相談することも有効な手段です。
専門業者とは、具体的には以下のような業種を指します。
業種 | サービス内容例 |
---|---|
民泊運営代行会社 | 予約管理、清掃、ゲスト対応、トラブル対応、法的アドバイスなど幅広いサービスを提供 |
不動産管理会社 | 所有物件の管理業務に加えて、民泊運営のサポートを行う |
税理士 | 民泊収入に関する確定申告のサポート、税務相談 |
行政書士 | 民泊に必要な許認可の取得、届出書類の作成 |
これらの専門業者に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 専門知識や経験に基づいたアドバイスを受けられる
- 時間と労力を節約できる
- 法令違反のリスクを低減できる
民泊運営に不安を感じている方や、より効率的に収益を上げたい方は、専門業者への相談を検討してみましょう。
6. 180日ルールを超えて運用する方法

簡易宿所の許可を取得
180日ルールを超えて民泊を運営したい場合は、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」の許可を取得する方法があります。 簡易宿所とは、宿泊する場所を提供する施設のことで、旅館やホテルと比べて設備やサービスが簡略化されています。
区分 | 簡易宿所の許可要件 |
---|---|
部屋数 | 原則として10人以上が宿泊できること |
面積 | 宿泊者1人あたり3.3㎡以上(個室の場合は7.43㎡以上) |
設備 | 寝具、洗面設備、トイレ、照明設備など |
その他 | 消防法令の遵守、衛生管理など |
簡易宿所の許可を取得するには、都道府県知事または保健所設置市の市長へ申請する必要があります。 許可が下りれば、180日ルールに関係なく民泊を運営することが可能になります。 ただし、簡易宿所の許可を取得するには、一定の設備投資や運営コストが必要となります。
国家戦略特区における特区民泊の認定を受ける
国家戦略特区とは、日本の経済成長を牽引するために、大胆な規制改革などを推進する区域のことです。この特区内においては、民泊に関しても特別なルールが適用されます。それが「特区民泊」です。
特区民泊の認定を受けると、180日ルールが適用されず、年間を通じて営業することが可能になります。
特区民泊 | 一般の民泊 |
---|---|
営業日数制限なし | 最大180日以内 |
ただし、特区民泊として営業するためには、それぞれの特区が定める要件を満たし、認定を受ける必要があります。
例えば、東京都大田区では、国家戦略特区における特区民泊の認定制度を活用し、区域を限定した上で、住宅宿泊事業法の特例が認められています。
マンスリーマンションとして運用
180日ルールを超えて運用する方法の一つとして、マンスリーマンションとして運用する方法があります。
マンスリーマンションは、賃貸借契約に基づき1ヶ月以上の期間、居住用として賃貸される物件です。旅館業法の適用を受けないため、180日ルールは関係ありません。
区分 | 民泊 | マンスリーマンション |
---|---|---|
法的根拠 | 住宅宿泊事業法 | 賃貸借契約 |
契約期間 | 数日から2週間程度 | 1ヶ月以上 |
180日ルール | 適用 | 適用外 |
旅館業法 | 簡易宿所の許可が必要 | 不要 |
ただし、実態として宿泊施設として営業していることが明らかな場合は、旅館業法違反となる可能性があります。マンスリーマンションとして運用する場合は、宿泊施設としてのサービス提供を行わないなど、注意が必要です。
レンタルスペースとして運用
180日ルールを超えて運用する一つの方法として、レンタルスペースとして貸し出す方法があります。レンタルスペースは、会議やセミナー、パーティーなど、一時的な利用を目的としたスペース提供です。宿泊を提供するわけではないため、180日ルールの対象外となります。
用途 | 説明 |
---|---|
会議室 | 企業の会議や研修、セミナーなどに利用できます。 |
ワークスペース | 個人や少人数での作業スペースとして貸し出すことができます。 |
イベントスペース | パーティーや展示会、ヨガ教室など、様々なイベント開催に利用できます。 |
ただし、レンタルスペースとして運用する場合でも、用途によっては旅館業法の許可が必要になる場合があります。例えば、宿泊を伴わないイベントであっても、反復継続して行う場合は「簡易宿所営業」の許可が必要になる可能性があります。事前に関係法令を確認し、適切な運営を行うようにしましょう。
シェアハウスとして運用
180日ルールは、宿泊者を短期的に受け入れる場合に適用されます。一方で、シェアハウスは、入居者が比較的長期にわたって居住することを前提としているため、180日ルールの対象外となります。
区別 | シェアハウス | 民泊 |
---|---|---|
契約形態 | 賃貸借契約 | 宿泊契約 |
居住期間 | 長期(数ヶ月~数年) | 短期(数日~数週間) |
目的 | 居住 | 旅行などの一時的な滞在 |
しかし、シェアハウスとして運用する場合でも、以下の点に注意が必要です。
- 各自治体の条例や建築基準法などの関連法規を遵守する必要があります。
- シェアハウスの運営には、消防設備の設置や管理など、一定の基準を満たす必要があります。
- 入居者間のトラブルを避けるため、明確なルールを設けることが重要です。
これらの点を踏まえ、適切な手続きを踏むことで、180日ルールを気にすることなく、シェアハウスとして物件を運用することができます。
7. まとめ:180日ルールを理解し、適切な方法で民泊運営を

民泊事業を成功させるためには、180日ルールを正しく理解し、適切な運営方法を選択することが重要です。
180日ルールを守って民泊運営を行う場合でも、そうでない場合でも、それぞれに考慮すべき点があります。
運用方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
180日ルール遵守 | 近隣住民とのトラブルリスクを低減できる | 収益が年間180日までに制限される |
180日ルール超過 | 収益を最大化できる可能性がある | 別途、許可取得や法的要件の遵守が必要となる |
上記はあくまで一例であり、それぞれの方法には、さらに詳細な要件や手続きが存在します。
ご自身の状況や目的に最適な方法を検討し、専門家にも相談しながら、適切な形で民泊運営に取り組みましょう。