宿泊コラム

民泊開業「用途地域」でつまづかないために!確認方法と注意点を解説

民泊開業「用途地域」でつまづかないために!確認方法と注意点を解説

1.はじめに:民泊開業と用途地域の重要性

民泊ビジネスを始めたいとお考えの方にとって、物件選びは非常に重要です。魅力的な立地やデザインも大切ですが、それ以上に「その場所でそもそも民泊ができるのか」という点は、開業の可否を左右する最も基本的な要素と言えるでしょう。

特に注意が必要なのが、「用途地域」と呼ばれる土地のルールです。

用途地域は、都市計画に基づき、それぞれの土地をどのように利用できるかを定めたものです。住宅を建てる場所、商業施設を建てる場所、工場を建てる場所などが細かく決められており、私たちの住環境を守る役割を果たしています。

民泊を開業するためには、検討している物件が所在するエリアの用途地域が、民泊営業を認めている地域である必要があります。用途地域を確認せずに準備を進めてしまうと、後になって開業できないことが判明し、時間や費用が無駄になってしまうリスクがあります。

スムーズな民泊開業を実現するためにも、用途地域の確認は必ず最初に行いましょう。本記事では、用途地域とは何か、民泊との関連性、確認方法や注意点について詳しく解説していきます。

2.そもそも用途地域とは?分かりやすく解説

(1)土地の使い道を定めるルール

用途地域とは、都市計画法に基づいて、それぞれの土地をどのような目的で利用できるかをあらかじめ定めたルールのことです。これにより、住宅地、商業地、工業地などが明確に区分され、無秩序な開発を防ぎ、良好な市街地環境を保つことが目的とされています。

用途地域は、大きく分けて以下の3種類、さらに細かく分けると全部で13種類があります。

  • 住居系:良好な住環境を守るための地域
  • 商業系:商業施設や業務施設の利便性を高めるための地域
  • 工業系:工業の利便性を高めるための地域
種類主な用途
第一種低層住居専用地域低層住宅のための地域
商業地域商業施設などが集まる地域
工業地域工場などが集まる地域

これらの用途地域によって、建てられる建物の種類や規模などが細かく制限されています。民泊を検討する際には、このルールを理解することが非常に重要になります。

(2)なぜ用途地域を知る必要があるのか

民泊を開業するにあたり、用途地域を知ることは非常に重要です。なぜなら、用途地域によって、その土地や建物でどのような事業が可能か、法律で定められているからです。

用途地域を確認せずに物件を取得したり、改修を進めてしまったりすると、後になって民泊営業が認められないことが判明する可能性があります。例えば、住居系の地域では、商業施設や宿泊施設の建設・営業が制限される場合があります。

用途地域を事前に確認することで、

  • 民泊営業が可能な物件か判断できる
  • 開業後の法的な問題を回避できる
  • 無駄な時間やコストをかけずに済む

といったメリットがあります。

確認ポイント重要性
用途地域民泊営業の可否を左右する根幹
関連法規制用途地域に基づき詳細なルールを確認

このように、用途地域は民泊開業の第一歩であり、法規制遵守の観点からも必ず確認すべき事項なのです。用途地域を知ることは、スムーズで合法的な民泊経営のために不可欠と言えます。

3.民泊営業が可能な用途地域は法律によって異なる

(1)旅館業法における可能性

旅館業法に基づく許可を得て民泊を運営する場合、用途地域による制限が比較的厳しい場合があります。これは、旅館業がホテルや旅館と同様に宿泊施設としての性質を持つためです。

主に、以下の用途地域で旅館業を営むことが可能です。

  • 商業地域
  • 近隣商業地域
  • 準工業地域

ただし、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域など、住居系の用途地域では原則として旅館業を営むことはできません。これは良好な住環境を保護するためです。

また、用途地域によっては、建物の規模や構造、周辺環境への影響(騒音など)に関する詳細な条件が付されることもあります。例えば、「○○平方メートル以下のものに限る」「周辺の住民の同意が必要」といったケースも考えられます。

このように、旅館業法での開業を検討している場合は、まず物件の用途地域が適しているか、そしてその地域に固有の制限がないかをしっかりと確認することが重要です。

(2)住宅宿泊事業法(民泊新法)における可能性

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき民泊を運営する場合、原則として以下の用途地域で営業が可能です。

  • 住居専用地域(第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域)
  • 住居地域
  • 準住居地域

ただし、以下の時間帯以外に限られます。

  • 午前7時から午前10時まで
  • 午後5時から午後10時まで

この時間制限は、学校の敷地の周囲100メートル以内の区域にある場合に適用されます。また、その他地域においても、地域の実情に応じて都道府県や市町村の条例で営業日・時間に関する制限が追加されることがあります。

例えば、条例によっては、住居系の用途地域では週末のみ営業可能とする、といった制限が課されるケースもあります。

用途地域営業可否(原則)備考
住居専用地域学校周辺では営業日・時間制限あり(※)
住居地域学校周辺では営業日・時間制限あり(※)
準住居地域学校周辺では営業日・時間制限あり(※)
その他地域(※※)条例で許可される場合あり

(※)学校敷地周囲100m以内の場合、上記時間帯の営業制限あり。
(※※)商業地域や工業地域など。

このように、民泊新法でも用途地域によって営業の可否や条件が異なるため、事前に確認が必要です。特に、学校周辺や自治体の条例には注意しましょう。

(3)国家戦略特別区域法(特区民泊)における可能性

特区民泊は、国家戦略特別区域に指定された一部の地域でのみ認められる制度です。旅館業法や住宅宿泊事業法とは異なり、より柔軟な要件が設定されていますが、対象となる用途地域は限定的です。

主な特徴は以下の通りです。

  • 区域限定: 国家戦略特別区域に指定されている必要があります。
  • 用途地域: 区域内の特定の用途地域に限られます。詳細な指定は自治体によって異なります。
  • 最低宿泊日数: 原則として2泊3日以上の滞在が必要です。

例えば、東京都大田区、大阪府、福岡県北九州市などが特区民泊を実施しています。ただし、特区内であっても、すべての用途地域で可能なわけではありません。

特区指定地域適用用途地域例(※地域による)
東京都大田区住居系の地域、商業地域、準工業地域など
大阪府住居系の地域、商業地域、近隣商業地域など

特区民泊を検討する場合は、まず物件が特区内にあるか、そしてその用途地域が特区民泊の対象となっているかを、該当自治体のウェブサイトや窓口で必ず確認してください。

4.要注意!用途地域以外で確認すべきポイント

(1)自治体の定める条例

民泊開業を検討する際、用途地域だけでなく、自治体が独自に定める条例の確認が非常に重要です。これは、たとえ法律上は民泊が可能とされる用途地域であっても、条例によって営業が制限されたり、特定の条件が付加されたりする場合があるためです。

例えば、多くの自治体では、良好な住環境を保護するため、住宅地における民泊の営業日数や時間帯に制限を設けています。また、学校や保育所の近隣での営業を規制する条例もあります。

具体的な条例の内容は自治体によって大きく異なります。

条例で定められる可能性のある項目
営業日数年間〇日以内、平日不可など
営業可能時間帯夜間の営業制限など
近隣施設からの距離学校、保育所、病院などからの距離制限
標識の設置義務〇〇を明記した標識の設置

開業を予定している物件がある自治体の公式ウェブサイトを確認するか、直接担当窓口に問い合わせることで、最新かつ正確な条例の内容を把握することができます。条例違反は営業停止などの重い処分につながる可能性があるため、必ず事前に確認しましょう。

(2)特別用途地区などの例外指定

用途地域は基本的なルールですが、例外も存在します。「特別用途地区」や「特定用途制限地域」といった指定がある場合、用途地域による制限がさらに強化されたり、緩和されたりすることがあります。

例えば、特定の地域で民泊施設の建設や営業が禁止されている場合や、特定の条件を満たせば許可される場合などがあります。

主な例外指定の種類は以下の通りです。

  • 特別用途地区:特定の目的に応じて柔軟な規制を行う地区
  • 特定用途制限地域:特定の建築物の建築を制限する地域

これらの例外指定は、自治体が都市計画で独自に定めているため、必ず確認が必要です。用途地域図と合わせて、これらの例外指定がないかも重ねて確認しましょう。不明な点は自治体の都市計画課などに問い合わせるのが確実です。

5.所有・検討している物件の用途地域を確認する方法

(1)オンラインでの確認(マップ、都市計画図など)

所有・検討している物件の用途地域は、インターネット上で手軽に確認できます。多くの自治体が都市計画に関する情報をウェブサイトで公開しており、都市計画図や用途地域図をPDFファイルでダウンロードしたり、GIS(地理情報システム)を活用したマップ上で確認したりできます。

オンラインでの主な確認方法

  • 自治体ウェブサイトの都市計画情報:
    • 「〇〇市 都市計画図」などで検索します。
    • 用途地域図や都市計画情報マップが提供されていることが多いです。
  • 地図サービス:
    • 一部の地図サービスでは、都市計画情報レイヤーを表示できる場合があります。(例: Googleマップ、Yahoo!地図など)
    • ただし、情報の正確性や最新性は自治体公式サイトが最も信頼できます。
確認方法メリットデメリット
自治体ウェブサイト最新で正確な情報サイト構造が分かりにくい場合
地図サービス(一部)直感的に場所が分かりやすい情報が古い、不正確な可能性

まずは、対象物件がある自治体の公式ウェブサイトを確認するのが最も確実な方法です。不明な場合は、自治体の都市計画担当部署に問い合わせるのが良いでしょう。

(2)自治体窓口での確認

インターネットでの確認が難しい場合や、より正確な情報を得たい場合は、自治体の窓口で直接確認する方法があります。主に以下の部署が窓口となります。

  • 都市計画課
  • 建築指導課

これらの部署では、専門の職員に相談しながら、対象物件の用途地域について詳細な情報を確認できます。

例えば、以下のような情報を得られます。

確認できる情報内容
正確な用途地域区分マップでは分かりにくい境界線なども確認
条例による制限の有無自治体独自の条例による影響
特別な指定の有無特別用途地区などの例外指定について

登記簿謄本や住宅地図など、物件の所在地が特定できる資料を持参するとスムーズです。疑問点があればその場で質問できるため、不安なく正確な情報を把握できます。物件購入前であれば、契約前に必ず確認しておきたい重要なステップです。

6.まとめ:用途地域を確認してスムーズな民泊開業を

民泊開業を成功させるためには、まず何よりも物件の「用途地域」を確認することが重要です。用途地域は、その土地がどのような目的に利用できるかを定める都市計画上のルールであり、民泊営業が可能かどうかを判断する出発点となります。

用途地域によっては、法律(旅館業法、住宅宿泊事業法、国家戦略特別区域法)によって民泊営業の可否が異なります。例えば、住居系の地域では民泊新法による営業が比較的容易な場合が多いですが、商業系や工業系では制限があることもあります。

また、用途地域だけでなく、自治体が独自に定める条例や、特別用途地区などの例外指定も確認が必要です。思わぬ規制がある場合も少なくありません。

物件の用途地域は、以下の方法で確認できます。

  • オンライン:都市計画図、マップサービスなど
  • 自治体窓口:都市計画課などで直接確認

開業後にトラブルにならないためにも、必ず事前に正確な情報を把握しましょう。用途地域の確認を怠らないことが、スムーズな民泊開業への第一歩となります。

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