宿泊コラム

民泊開業に必要な許可・届出は?申請書類と手続きの流れをわかりやすく解説

民泊開業に必要な許可・届出は?申請書類と手続きの流れをわかりやすく解説

1.はじめに:民泊ビジネスと必要な手続きの概要

近年、旅行者の宿泊先として、ホテルや旅館に加えて、「民泊」が注目されています。民泊とは、一般住宅の空き部屋などを宿泊施設として旅行者に提供するサービスです。
民泊は、旅行者にとって、より深くその地域を知り、暮らすように旅をすることができる魅力的な選択肢となっています。また、住宅の空き部屋などを有効活用することで、収入を得ることができるという点で、住宅所有者にとってもメリットがあります。

しかし、民泊を始めるにあたっては、安全な運営や近隣住民とのトラブル防止のために、いくつかの法律や条例に基づいた手続きが必要となります。

法律・条例概要
住宅宿泊事業法民泊の営業に関する許可制度やルールを定めた法律
消防法火災予防に関する法律
食品衛生法食品を扱う場合に必要な許可や衛生管理に関する法律
旅館業法一定規模以上の宿泊施設を営業する場合に必要な許可や届出に関する法律 (場合によっては適用)

これらの法律を遵守し、必要な手続きを適切に行うことが、安全で安心な民泊運営の第一歩となります。

2. 民泊を始めるために必要な許可・届出

2.1 住宅宿泊事業法に基づく届出

2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)は、日本国内で民泊を営むために遵守すべき重要な法律です。この法律では、一定の要件を満たした住宅を宿泊施設として旅行者に提供する事業を「住宅宿泊事業」と定義し、届出制を導入しています。

つまり、旅行者を有料で宿泊させる場合、住宅宿泊事業法に基づいた届出が必須となります。この届出を行わずに民泊を運営すると、違法となり罰則の対象となる可能性があります。

届出を行う際には、以下の表のような種類が存在し、それぞれ営業日数の上限が定められています。

届出の種類営業日数の上限
住宅宿泊事業届出(年間180日以下)年間180日以内
特区民泊各特区の条例による

ご自身の事業計画に合った届出を行うようにしましょう。詳細な要件や手続きについては、観光庁や各自治体の窓口に問い合わせることをおすすめします。

2.2 消防法令適合通知書の取得

民泊を開業するには、宿泊施設としての安全性を確保するため、消防法令に適合していることを証明する「消防法令適合通知書」を取得する必要があります。

消防法令では、宿泊施設に対して以下のような項目に関する基準が定められています。

項目内容例
火災報知設備の設置自動火災報知機、スプリンクラー設備など
避難経路の確保避難口の設置、誘導灯の設置、避難経路の幅員確保など
消火設備の設置消火器、屋内消火栓など
防火管理者の選任規模に応じて防火管理者の選任が必要
宿泊者名簿の備え付け宿泊者の氏名、住所などを記載した名簿を備え付ける
その他火気使用設備の設置基準、避難訓練の実施など

これらの基準を満たしていることを確認するため、消防署に申請を行い、現地調査を受ける必要があります。調査の結果、基準に適合していると認められれば、「消防法令適合通知書」が交付されます。消防法令適合通知書の取得には、申請から交付まで1~2か月程度かかる場合もあるため、余裕を持って手続きを進めるようにしましょう。

2.3 その他の法令確認

住宅宿泊事業法や消防法令以外にも、民泊運営に関わる法律や条例は多数存在します。特に、以下の項目については事前に確認が必要です。

法令・条例内容
建築基準法用途地域、建物の用途、設備などが建築基準法に適合しているかを確認します。
食品衛生法飲食物を提供する場合、飲食店営業許可が必要となる場合があります。
旅館業法サービス内容によっては旅館業法の適用を受ける可能性があります。
都市計画法地域によっては、民泊の営業が制限されている場合があります。
その他の条例各自治体の条例により、騒音、ゴミ処理、駐車に関するルールが定められています。

旅館業法の許可を取得する場合は、施設の構造や設備に関する厳しい基準を満たす必要があり、ハードルが高くなります。ご自身の民泊事業が旅館業法の適用対象となるかどうかも事前に確認しておきましょう。

これらの法令違反は、営業停止や罰金などの重い処分に繋がる可能性があります。事前に専門家へ相談し、必要な手続きをしっかりと確認しておきましょう。

3. 申請書類と準備の流れ

3.1 必要書類一覧

– 3.1.1 住宅宿泊事業届出書

住宅宿泊事業届出書は、民泊事業を行うために必ず提出が必要な書類です。この書類では、営業者や宿泊施設の情報、運営方法などを具体的に届け出ます。

記載項目内容
届出者の氏名・住所・連絡先個人事業主の場合は個人情報、法人の場合は法人情報
住宅宿泊事業の名称事業を行う上で使用する名称
住宅宿泊施設の名称・所在地・構造宿泊施設として提供する住宅の情報(マンション名、部屋番号を含む)
宿泊定員1つの住宅宿泊施設に宿泊できる人数の上限
営業日宿泊サービスを提供する日(曜日指定や特定日の指定など)
宿泊の受付方法予約方法(ウェブサイト、電話など)やチェックイン・チェックアウトの方法
その他その他、届出内容に付随する事項

届出書は、国土交通省のホームページからダウンロードできます。また、記入方法についても詳しく解説されているので、参照しながら正確に記入しましょう。

– 3.1.2 住宅の登記事項証明書

住宅宿泊事業届出書と合わせて、住宅の登記事項証明書の提出が必要です。この書類は、不動産の表示に関する事項(所在地、地番、家屋番号、床面積など)や権利に関する事項(所有者、抵当権など)が記載されており、法務局またはオンラインで取得できます。

取得方法
法務局で取得する場合窓口で申請書を提出します。手数料がかかります。
オンラインで取得する場合法務省のウェブサイトから申請します。クレジットカード決済が可能です。

取得した登記事項証明書は、申請前に必ず内容を確認しましょう。特に以下の点が重要です。

  • 申請する住宅と証明書の内容が一致しているか
  • 発行日から3ヶ月以内のものか

これらの点が満たされていない場合、申請が受理されない可能性があります。

– 3.1.3 住宅の図面

住宅宿泊事業の届出には、住宅の図面の提出が必要です。図面は、宿泊を提供する住宅の構造や広さを明確にし、消防法令などの基準を満たしているかを確認するために使用されます。図面は、以下の内容を満たしている必要があります。

項目内容
種類平面図
縮尺1/50 以上
記載事項・間取り
・各部屋の面積
・用途(居室、台所、トイレなど)
・窓やドアの位置
・避難経路

図面は、自分で作成することもできますが、正確性や見やすさが求められます。作成が難しい場合は、専門業者に依頼することも検討しましょう。専門業者に依頼する場合、費用はかかりますが、正確でわかりやすい図面を作成してもらえます。

– 3.1.4 賃貸借契約書および転貸承諾書(該当する場合)

住宅宿泊事業を営むためには、原則として、その物件の所有者である必要があります。賃貸物件の場合、オーナーの許可なく民泊を行うことは「無断転貸」となり、契約違反になる可能性があります。

そのため、賃貸物件で民泊を行う場合は、以下の書類が必要となります。

書類名内容
賃貸借契約書住宅を賃貸している場合に、家主との間で締結した契約書。民泊事業を営むことが可能な物件であるか、契約内容に転貸に関する条項が含まれているかを確認する必要があります。
転貸承諾書賃貸借契約書で転貸が禁止されている、または明記されていない場合に、家主から転貸の許可を得るために必要な書類です。家主の署名・捺印が必要です。

これらの書類を準備することで、賃貸物件であっても、家主の理解と許可を得た上で、安心して民泊事業を行うことができます。

– 3.1.5 管理規約および同意書(該当する場合)

マンションやアパートの一室で民泊を行う場合は、管理規約および近隣住民からの同意書の提出が求められる場合があります。

書類名内容
管理規約マンションやアパートの規約で、民泊に関する記載があるかを確認します。
同意書近隣住民に対して、民泊運営に関する説明を行い、同意を得る必要があります。

管理規約に民泊を禁止する旨の記載がある場合、原則として民泊を行うことはできません。民泊に関する記載がない場合でも、トラブルを避けるために、事前に管理組合に相談し、許可を得ることが重要です。 同意書は、近隣住民に対して民泊運営の内容を具体的に説明し、騒音やゴミ問題などに対する対策を明記することで、理解と協力を得るように努めましょう。

これらの書類は、場合によっては提出が不要なこともあります。管轄の自治体や保健所に確認することをおすすめします。

– 3.1.6 消防法令適合通知書

  • 3.1.6 消防法令適合通知書

「消防法令適合通知書」は、消防法に基づき、宿泊施設として必要な防火設備が設置されているか、避難経路が確保されているかなどを消防署が検査し、適合している場合に発行される書類です。

手続き内容
① 消防署への事前相談電話または窓口で、相談日時を予約しましょう。
② 現地調査の実施予約した日時に消防署員が現地を訪れ、建物の構造や設備を確認します。
③ 消防法令適合通知書の交付現地調査の結果、消防法令に適合していると認められれば、通知書が交付されます。

事前に消防署へ相談し、必要な手続きや書類を確認しておきましょう。

– 3.1.7 その他必要書類

上記の主要な書類に加えて、場合によっては追加の書類提出を求められることがあります。例えば、以下のようなケースです。

ケース必要書類
法人が住宅宿泊事業届出を提出する場合登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
代理人が申請を行う場合委任状
外国語で案内表示等を行う場合案内表示の内容を記載した書類およびその日本語訳
建築基準法上の用途変更等の許可等を受けた場合許可書または認定書、確認済証等
住宅宿泊事業を営む住宅の用に供する部分について賃貸借契約を締結している場合賃貸借契約書および当該賃貸借に係る転貸の同意を得ている旨を証する書類

これらの書類は、状況によって必要となるため、事前に管轄の都道府県または保健所等の窓口に確認することをおすすめします。必要書類を漏れなく準備することで、スムーズな申請手続きを進めることができます。

3.2 オンライン申請の方法

近年では、多くの自治体で民泊の申請手続きがオンラインでできるようになっています。オンライン申請を利用すれば、自宅やオフィスから24時間いつでも手続きを進めることが可能です。

オンライン申請の手順は以下の通りです。

手順説明
1. 事前準備必要書類を電子化し、申請に必要なシステムのアカウントを取得します。
2. 情報入力システムに必要事項を入力し、電子化した必要書類をアップロードします。
3. 申請内容の確認入力内容に誤りがないか確認し、申請を提出します。
4. 申請完了申請が完了すると、受付完了の通知が届きます。

オンライン申請は、時間と手間を大幅に削減できる便利な方法です。ぜひ積極的に活用しましょう。ただし、自治体によってはオンライン申請に対応していない場合もあるため、事前に確認が必要です。

3.3 申請後の流れ

申請書類を提出した後、各自治体による審査が行われます。

ステータス説明期間の目安
受付申請書類が提出され、受付が完了1週間以内
書類審査提出書類に不備がないか、要件を満たしているかなどを確認1~2ヶ月程度
現地確認(場合による)申請内容と実際の物件状況が一致しているか、施設基準を満たしているかなどを確認数週間~1ヶ月程度
審査結果の通知審査結果が通知されます。承認されれば、晴れて民泊の営業許可が下りる1~2週間程度

審査期間は、申請内容や各自治体の混雑状況によって異なります。スムーズに進めるためにも、書類は正確に作成し、不明点は事前に確認しておきましょう。もし、審査で不備や不足があった場合には、修正や追加書類の提出を求められることがあります。その場合、営業開始が遅れる可能性もあるため注意が必要です。

4. 民泊開業前に知っておくべき重要事項

4.1 近隣住民への配慮

民泊は、住宅地で行うビジネスであることを強く意識し、近隣住民への配慮を徹底することが不可欠です。トラブルを避けるためにも、以下の点に注意しましょう。

配慮事項具体的な内容
あいさつ民泊運営を開始する前に、近隣住民へ挨拶を行い、事業内容や運営方針を説明しましょう。
騒音対策ゲストに、夜間や早朝の騒音、大声での会話、窓の開閉音などに注意するよう、ルールを定め、徹底させましょう。防音対策なども有効です。
ゴミ出しゴミ出しのマナーやルールについて、ゲストにわかりやすく伝えましょう。分別方法や収集日を守らない場合は、トラブルに発展する可能性があります。
セキュリティ対策防犯カメラの設置やセキュリティシステムの導入など、防犯対策をしっかり行い、近隣住民に安心感を与えるとともに、トラブル発生時の証拠としても活用できるようにしておきましょう。
駐車場の利用ゲストの車の駐車場所については、近隣住民とのトラブルにならないよう、事前にしっかりと確認し、ルールを定めておきましょう。

これらの配慮を怠ると、近隣住民とのトラブルに発展し、最悪の場合、営業停止に追い込まれる可能性もあります。民泊は、地域社会との共存が不可欠であることを認識し、近隣住民との良好な関係を築くよう努めましょう。

4.2 安全対策

民泊では、宿泊者の安全を確保することが最も重要です。万が一事故が発生した場合、責任問題に発展する可能性もあるため、開業前にしっかりと対策を講じておく必要があります。

具体的には、以下のような安全対策の実施が重要です。

対策項目内容
緊急時の連絡体制の整備緊急連絡先を分かりやすく明記し、宿泊者に周知しましょう。緊急時の対応マニュアルを作成しておくことも有効です。
火災予防対策消火器や火災報知器の設置はもちろん、避難経路の確保や避難器具の設置など、消防法に基づいた対策が必要です。
防犯対策防犯カメラの設置やセキュリティシステムの導入など、犯罪抑止のための対策を検討しましょう。宿泊者以外の人物が敷地内に立ち入らないよう、注意喚起の看板なども有効です。
事故防止対策階段や段差に滑止めをつけたり、手すりを設置するなど、転倒や転落を防ぐための対策を行いましょう。家具の固定なども重要です。

これらの対策を講じることで、宿泊者が安心して滞在できる環境を提供できるだけでなく、事業者自身も法的責任を問われるリスクを低減できます。

4.3 税金・保険

民泊運営で得た収入は、原則として「不動産所得」として扱われ、確定申告が必要になります。所得税に加えて、住民税の納付義務も発生します。 また、事業規模によっては、消費税の課税事業者となる場合もあります。

税金の種類概要
所得税民泊運営で得た利益に対して課税される
住民税前年の所得に基づいて課税される
消費税一定の売上高を超えた場合に課税される場合がある

さらに、万が一の事故に備え、適切な保険に加入しておくことが重要です。 火災保険や賠償責任保険など、民泊運営に対応した保険商品も販売されているため、内容をしっかりと確認しましょう。

これらの税金や保険に関する情報は、税務署や保険会社に問い合わせるようにしてください。

5. まとめ:適切な手続きでスムーズな民泊開業を

民泊ビジネスは、適切な手続きと準備を踏まえることで、訪日外国人旅行者や国内旅行者にとって魅力的な宿泊施設を提供できます。

スムーズな民泊開業を実現するために、以下の点を再度確認しましょう。

手順内容
法令の理解と遵守住宅宿泊事業法、消防法などの関連法令を理解し、遵守することが不可欠です。
必要な許可・届出宿泊施設の所在地を管轄する自治体への届出や、消防署への届出など、必要な手続きを事前に確認し、余裕を持って申請を行いましょう。
申請書類の準備届出に必要な書類を漏れなく準備しましょう。不明点があれば、関連機関に問い合わせてください。
近隣住民への配慮民泊運営によって近隣住民に迷惑をかけることがないよう、騒音対策やゴミ処理など、十分な配慮を行いましょう。
安全対策の実施火災報知器や消火器の設置など、宿泊者の安全を確保するための対策を講じましょう。

これらの点を踏まえ、適切な手続きと準備を進めることで、スムーズな民泊開業を実現できるでしょう。

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