宿泊コラム

民泊物件の探し方!失敗しないためのチェックポイントを紹介
1. はじめに:民泊ビジネスの可能性と物件探しの重要性

近年、訪日外国人旅行者の増加や多様な旅行スタイルの広がりによって、宿泊施設の選択肢の一つとして「民泊」が注目されています。民泊は、従来のホテルや旅館とは異なる魅力があり、収益化の可能性を秘めたビジネスモデルとして人気が高まっています。
メリット | デメリット |
---|---|
高収益が見込める | 法規制や近隣トラブルのリスク |
独自のサービスを提供できる | 運営の手間がかかる |
空き部屋・空き家を有効活用できる | 競合が多い |
しかし、成功するためには、適切な物件選びが非常に重要になります。なぜなら、物件は民泊ビジネスの収益や運営を大きく左右するからです。立地条件や物件の条件、法規制への適合など、考慮すべき点は多岐に渡ります。
この章では、物件探しの重要性を踏まえ、失敗しないためのポイントをわかりやすく解説していきます。
2. 失敗しないための事前準備

(1) 法規制の理解:旅館業法・住宅宿泊事業法・民泊条例
民泊事業を始めるにあたって、必ず理解しておかなければならないのが関連法規です。大きく分けて「旅館業法」「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「民泊条例」の3つがあります。それぞれの法律の概要と違いを下記の表にまとめました。
法律 | 概要 | 営業日数制限 | 許可・届出 |
---|---|---|---|
旅館業法 | 宿泊施設を営業するための法律。旅館・ホテルなどが適用される | なし | 許可 |
住宅宿泊事業法(民泊新法) | 住宅を宿泊施設として貸し出す「民泊」を規定した法律 | 180日以内 | 届出 |
民泊条例 | 各自治体が条例で定める民泊に関するルール。住宅宿泊事業法よりも厳しい制限を設けている場合もある |
旅館業法上の簡易宿所営業の許可を取得する場合には、都道府県知事の許可が必要となり、建築基準法上の用途変更などの要件を満たす必要があります。
一方、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて営業する場合には、都道府県知事への届出が必要となり、住宅宿泊管理業者に管理を委託する場合には、住宅宿泊管理業の登録を受けた業者に依頼する必要があります。
さらに、各自治体が定める民泊条例も確認が必要です。例えば、営業日数や区域の制限などが定められている場合があります。
これらの法規制を理解した上で、自身の民泊事業に最適な方法を選択することが重要です。
(2) 事業計画の策定:ターゲット、収益目標、運営方針
物件探しを始める前に、どのような民泊事業を行うかという事業計画を明確にしましょう。綿密な計画が、成功への第一歩です。
項目 | 説明 |
---|---|
ターゲット | どのようなお客様をターゲットにするか? (例:外国人観光客、家族連れ、ビジネスマンなど) |
収益目標 | どれくらいの収益を目指したいのか? (例:月間売上目標、年間売上目標など) |
運営方針 | どのようなサービスを提供し、顧客満足度を高めるか? (例:セルフチェックイン、多言語対応、地域情報の発信など) |
例えば、外国人観光客をターゲットにするなら、立地は主要駅から近く、観光スポットへのアクセスが良い場所が求められます。収益目標を達成するためには、宿泊料金の設定や稼働率の見積もりが重要です。また、顧客満足度を高めるためには、快適な空間づくりや周辺情報の提供などが欠かせません。
(3) 資金計画:初期費用、運営費用、資金調達方法
民泊事業を始めるには、物件取得費や改装費などの初期費用、そして運営費用の確保が必須です。 資金計画は、これらの費用をどのように賄うかを具体的に検討するプロセスです。
項目 | 内訳例 |
---|---|
初期費用 | ・物件取得費(購入・賃貸) ・改装費(内装・設備投資) ・家具家電製品購入費 ・許可申請費用 ・広告宣伝費 |
運営費用 | ・賃料 ・光熱費 ・消耗品費 ・清掃費 ・管理費 ・広告宣伝費 ・保険料 |
資金調達方法は、自己資金だけでなく、金融機関からの融資や、補助金・助成金の活用も検討しましょう。 資金計画は事業の成功を左右する重要な要素です。 収支をシミュレーションし、無理のない計画を立てましょう。
3. 民泊物件の探し方

(1) 不動産ポータルサイトの活用
– – 一般的なポータルサイト
SUUMOやHOME’Sなどの一般的な不動産ポータルサイトでも、賃貸物件の検索条件に「民泊」を追加できる場合があります。
サイト名 | 特徴 |
---|---|
SUUMO | 物件数が多い、エリア絞り込み検索 |
HOME’S | 写真や間取り図が豊富 |
at home | 詳細な条件設定が可能 |
これらのサイトでは、民泊可能な物件が明確に表示されているとは限りません。物件情報や特記事項をよく確認するか、直接不動産会社に問い合わせて確認することが重要です。
– – 民泊物件専門サイト
近年では、民泊物件に特化した不動産ポータルサイトも増えています。これらのサイトは、民泊運営に必要な情報を網羅しており、物件探しを効率的に進めることができます。
サイト名例 | 特徴 |
---|---|
民泊物件.com | 収益シミュレーション機能が充実 |
エアビー物件検索 | Airbnbの掲載実績に基づいた物件情報 |
民泊投資.jp | 初心者向けのセミナー情報も掲載 |
これらの専門サイトでは、以下のような条件で絞り込み検索が可能です。
- 希望エリア
- 収容人数
- 価格帯
- 間取り
- 法的要件のクリア状況
- 設備
運営会社のサポート体制なども確認できるサイトも多いので、積極的に活用してみましょう。
(2) 不動産会社への相談
– – 民泊に強い不動産会社を見つける
民泊事業に精通した不動産会社は、物件探しから契約、運営までをサポートしてくれる心強い味方です。
民泊に強い不動産会社の特徴 | |
---|---|
特徴1 | 民泊物件の仲介実績が豊富 |
特徴2 | 旅館業法や住宅宿泊事業法などの法規制に精通している |
特徴3 | 民泊運営に関する相談に乗ってくれる |
インターネットで「民泊 不動産会社 〇〇(希望エリア)」などのキーワードで検索したり、民泊情報サイトで紹介されている不動産会社を参考にしたりしてみましょう。
– – 地域密着型の不動産会社
地域密着型の不動産会社は、その地域特有の不動産情報や法律に精通している点が強みです。長年その地域で営業しているため、地域住民とのつながりも強く、民泊運営に関する有益な情報を得られる可能性があります。
項目 | 説明 |
---|---|
メリット | 地域の特性に詳しい、地域住民とのつながりが強い、きめ細やかな対応 |
デメリット | 情報量が大手より少ない場合がある |
例えば、地域住民の属性やライフスタイル、観光客の動向などを把握しているため、適切な物件選びのアドバイスを受けられます。また、地域独自の規制や慣習についても熟知しているため、トラブルを回避するためにも相談してみる価値があります。
(3) その他の探し方
– – 行政の届出情報公表一覧
各自治体では、旅館業法や住宅宿泊事業法に基づいて届出のあった民泊施設の情報を公表している場合があります。これらの情報は、各都道府県や市町村のホームページで確認できるケースが増えています。
情報源 | 公開情報の内容例 |
---|---|
都道府県・市町村HP | ・届出済み民泊施設一覧 ・施設名、所在地、運営事業者名 ・許可番号、届出番号 |
公表されている情報の内容は自治体によって異なりますが、既に民泊運営が行われている地域や物件の傾向を把握する上で役立ちます。これらの情報を活用することで、競合となる施設や利用者のニーズを分析し、より効果的な事業計画の立案に繋げることが可能となります。
– – 民泊運営代行会社への相談
民泊運営代行会社とは、物件の選定から集客、清掃、宿泊客とのやり取りまで、民泊運営に関わる業務全般を代行してくれる会社のことです。
メリット | デメリット |
---|---|
物件探しから運営までワンストップで依頼できる | 代行手数料が発生する |
専門知識やノウハウを活用できる | 運営の自由度が制限される場合がある |
これらの会社では、すでに収益性の高い物件情報や運営ノウハウを保有しているケースが多く、効率的に民泊ビジネスを始めることができます。特に、初めて民泊投資を行う方や、時間的な制約がある方にとって、心強い味方となるでしょう。
ただし、代行手数料や運営方針に関する制約など、事前に確認すべき点も存在します。複数の会社を比較検討し、自身に合ったパートナーを見つけることが重要です。
4. 物件選びのチェックポイント

(1) 立地条件
– – アクセス:駅からの距離、観光地へのアクセス
物件の収益性を左右する要素の一つに、アクセスしやすさがあります。特に、旅行客をターゲットにする場合は、主要駅からの距離は重要な要素です。
アクセス | メリット | デメリット |
---|---|---|
駅近 | * 集客しやすい * 観光客にとって移動が便利 | * 賃料や物件価格が高い傾向がある |
観光地近接 | * 観光客にとって魅力的 * 周辺施設との連携で集客も見込める | * 閑散期は集客が難しい場合がある * 騒音やゴミ問題が発生する可能性がある |
駅からの距離だけでなく、空港や主要な観光地へのアクセスも考慮しましょう。バス停や路線、所要時間などを事前に確認しておくことが重要です。
– – 周辺環境:騒音、治安、商業施設
民泊物件の周辺環境は、ゲストの満足度だけでなく、近隣住民との関係にも影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
要素 | チェックポイント |
---|---|
騒音 | 幹線道路、線路、空港からの騒音 |
工場、商業施設、飲食店からの騒音 | |
治安 | 犯罪発生率 |
街灯の有無 | |
人通りの多さ | |
商業施設 | コンビニ、スーパーマーケット |
飲食店、娯楽施設 |
静かで安全な環境は、ゲストに快適な滞在を提供する上で重要です。また、近隣に商業施設が充実していると、ゲストの利便性が高まります。逆に、騒音の多い場所や治安の悪い場所は避けるべきです。例えば、幹線道路沿いや繁華街は騒音が気になる可能性があります。夜間の人通りが少ない場所や、街灯が少ない場所は、治安面で不安が残ります。
(2) 物件の条件
– – 間取り・広さ:収容人数、設備
収容人数は、収益に直結する要素であるため、事前にしっかりと検討する必要があります。個室の数や広さを考慮し、想定するターゲット層に合った間取りを選びましょう。ファミリー層向けであれば、リビングや寝室が複数ある広い物件が適しています。一方、単身者やカップル向けであれば、ワンルームや1LDKでも十分でしょう。
ターゲット | 想定人数 | おすすめの間取り |
---|---|---|
ファミリー層 | 4名以上 | 3LDK、4LDK |
グループ旅行者 | 3~4名 | 2LDK、3LDK |
カップル・夫婦 | 2名 | 1LDK、2LDK |
単身者 | 1名 | ワンルーム、1K、1DK |
また、キッチン、浴室、トイレなどの設備も重要です。長期滞在者が多い場合は、洗濯機や乾燥機、調理器具なども充実させておくと、満足度向上に繋がります。
– – 築年数・状態:修繕費用、設備の老朽化
築年数は物件の状態と深く関係しており、修繕費用や設備の老朽化は収益に直結する重要なポイントです。築年数が古いほど、内装や設備のリフォーム費用がかさむ可能性が高くなります。
築年数 | 状態 | 修繕費用 | 設備の老朽化 |
---|---|---|---|
新築 | 最新 | 低 | ほぼなし |
築浅 | 良好 | 低~中 | 少ない |
築古 | 注意が必要 | 中~高 | 多い |
築古物件の場合、魅力的な価格で提供されていることもありますが、想定外の修繕費用が発生するリスクを考慮する必要があります。例えば、給排水管の交換や屋根の葺き替えなど、高額な修繕が必要になる場合もあります。事前にしっかりと物件の状態を確認し、必要な修繕費用を見積もっておくことが大切です。また、設備の老朽化は入居者の快適性や安全性を損なう可能性があります。エアコンや給湯器などの設備の耐用年数を把握し、交換時期を見据えた計画を立てておくようにしましょう。
– – 法的要件:消防設備、避難経路
物件が消防法や建築基準法などの法的要件を満たしているかどうかも重要なチェックポイントです。収容人数によっては、住宅用火災警報器だけでなく、自動火災報知設備やスプリンクラー設備の設置が義務付けられている場合があります。
要件 | 内容 |
---|---|
住宅用火災警報器 | 全ての階に設置されているか |
自動火災報知設備 | 収容人数や建物の規模に応じて設置が必要な場合があります |
スプリンクラー設備 | 収容人数や建物の規模に応じて設置が必要な場合があります |
避難経路 | 避難口が確保されているか、避難経路が明確になっているか、非常灯が設置されているか |
これらの設備が不足している場合は、設置費用が追加でかかる可能性があります。また、消防設備の設置や避難経路の確保は、安全な民泊運営を行う上で非常に重要です。物件を選ぶ際には、必ずこれらの法的要件を満たしているか確認しましょう。
(3) 契約条件
– – 賃貸借契約:期間、更新、解約条項
賃貸借契約を結ぶ際には、契約期間、更新の可否、解約条項についてしっかりと確認することが重要です。
項目 | 内容 |
---|---|
契約期間 | 民泊運営に十分な期間が設定されているか |
更新 | 更新が可能かどうか、更新時の条件は何か |
解約条項 | 貸主・借主双方に不利な条項が含まれていないか |
特に、民泊運営では、当初の想定よりも長く運営したいと考える場合や、逆に、収益が目標に達しない場合など、契約期間の途中で解約が必要となるケースも考えられます。
契約期間中に解約する場合、違約金が発生する可能性もあるため、契約書をよく確認しましょう。
– – 管理規約:民泊に関する制限
分譲マンションや賃貸マンションの場合、管理規約によって民泊の利用が制限されている場合があります。
項目 | 内容 |
---|---|
民泊の許可・届出 | 全面禁止・条件付き許可・届出の提出義務など |
営業日数・時間帯の制限 | 週末のみ、夜間は禁止など |
宿泊者に関する制限 | 人数制限、子供・ペットの同伴禁止など |
その他の制限 | ゴミ出しルール、騒音対策など |
契約前に必ず管理規約を確認し、民泊運営に関する制限事項を把握しておく必要があります。
5. 注意点:近隣トラブルと違法民泊

(1) 近隣住民への配慮:騒音、ゴミ問題、プライバシー
民泊は、集合住宅など近隣住民がいる場所で運営することがほとんどです。そのため、近隣住民への配慮は、トラブル防止と円滑な民泊運営を行う上で非常に重要です。
配慮事項 | 具体的な内容 |
---|---|
騒音 | ・夜間や早朝の騒音を出さない ・宿泊者向けの注意書きを分かりやすく掲示する ・防音対策を検討する |
ゴミ問題 | ・ゴミ出しルールを明確に伝える ・ゴミの分別を徹底する ・必要に応じて、ゴミ置き場の設置を検討する |
プライバシー | ・宿泊者以外の立ち入りを禁止する ・近隣住民の敷地への侵入をしないよう注意喚起する ・防犯カメラの設置を検討する |
これらの配慮を怠ると、近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。最悪の場合、営業停止に追い込まれるケースもあるため、注意が必要です。
(2) 違法民泊の回避:許可・届出の確認
民泊を始めるには、旅館業法または住宅宿泊事業法のいずれかの許可・届出が必要です。無許可で営業すると違法民泊となり、罰則の対象となる可能性があります。
法律 | 概要 | 営業日数 |
---|---|---|
旅館業法 | 宿泊施設として営業許可が必要 | 制限なし |
住宅宿泊事業法(民泊新法) | 住宅に人を宿泊させるために必要な届出 | 年間180日以内 |
物件がどちらの法律に基づいて運営するのかを確認し、必要な手続きが完了しているか、賃貸借契約書の内容と齟齬がないかを確認しましょう。 また、各自治体独自の条例で民泊の営業が制限されている場合もあるため、事前に確認が必要です。
6. まとめ:成功する民泊運営に向けて

ここまで、民泊物件探しのポイントについて解説してきました。物件探しは、その後の民泊運営の成功を大きく左右する重要なプロセスです。
成功に近づくために |
---|
✓ 事前準備を入念に |
✓ 魅力的な物件を見つける |
✓ ルールを守って運営する |
上記3点を常に意識し、今回の記事で紹介した内容を踏まえながら、物件探しを進めていきましょう。
適切な物件選びと、近隣住民への配慮を忘れずに、魅力的な民泊ビジネスを展開していきましょう。