宿泊コラム

無許可営業は旅館業法違反!罰則や摘発事例、合法的に旅館を経営する方法

無許可営業は旅館業法違反!罰則や摘発事例、合法的に旅館を経営する方法

1. はじめに:無許可営業の現状と旅館業法の重要性

近年、訪日外国人旅行者の増加や多様な宿泊ニーズの高まりを受け、旅館・ホテル業界を取り巻く環境は大きく変化しています。同時に、Airbnbなどの民泊プラットフォームの普及により、無許可で宿泊施設を運営するケースも増加しており、社会問題となっています。

問題点詳細
近隣住民とのトラブル騒音、ゴミ問題など
安全性の確保衛生管理、防災設備の不備
公平な競争の阻害許可を得た事業者との格差
税収の減少脱税行為

旅館業法は、旅行者の安全と衛生を確保し、健全な旅館業の発展を図ることを目的とした法律です。宿泊施設を運営する際には、旅館業法の遵守が不可欠です。無許可営業は旅館業法違反となり、罰則の対象となるだけでなく、旅行者の安全を脅かす可能性も孕んでいます。

この章では、無許可営業の現状と旅館業法の重要性について解説します。続く章では、旅館業法違反の詳細や罰則、摘発事例、合法的に旅館を経営する方法などを詳しく説明していきます。旅館業を営む方、またはこれから旅館業を始めようと考えている方は、ぜひ最後までお読みいただき、旅館業法への理解を深めてください。

2. 旅館業法違反とは?

2-1. 旅館業法の定義と目的

旅館業法は、宿泊施設の衛生、安全、そして利用者の利益を守るための法律です。具体的には、旅館業の許可基準や営業に関するルールを定めています。 この法律ができた目的は、大きく分けて以下の3つです。

目的説明
公衆衛生の向上宿泊施設の衛生状態を良好に保ち、感染症などから利用者を守ることです。
利用者の安全確保施設の安全基準を設けることで、火災や事故などの危険から利用者を守ることです。
健全な旅館業の発展公正な競争環境を整備し、旅館業の健全な発展を促すことです。

旅館業法では、「旅館業」を「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義しています。ただし、旅館業法施行令第2条で規定されている、学校や病院などに付随する宿泊施設などは適用除外となります。

旅館業は、大きく分けて「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」の3種類に分類されます。それぞれの営業形態によって、設備やサービスに関する基準が細かく定められています。これらの基準を守ることで、利用者は安心して宿泊施設を利用できるようになります。次のセクションでは、許可なく旅館業を営むことについて詳しく解説していきます。

2-2. 許可なく旅館業を営むということ

旅館業を営むには、都道府県知事の許可が必要です。旅館業法では、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を「旅館業」と定義しています。つまり、対価を得て人を宿泊させる場合は、規模の大小にかかわらず、原則として旅館業法の適用対象となり、許可なく営業することは違法となります。

無許可で旅館業を営むということは、旅館業法で定められた安全基準や衛生基準を満たしていない可能性があり、宿泊者の安全を脅かす危険性があります。また、公正な競争を阻害し、健全な旅館業の発展を妨げることにも繋がります。

許可なく旅館業を営んでいる場合、以下のようなケースが考えられます。

ケース説明
無許可で新規に旅館業を始めるそもそも許可を取得せずに、旅館、ホテル、簡易宿所などを営業している
許可の範囲を超えて営業する例えば、許可を得た客室数を超えて宿泊客を受け入れている
許可の条件に違反して営業する例えば、許可条件で定められた設備を適切に維持管理していない

旅館業法の許可を受けずに営業することは、罰則の対象となります。具体的には、罰金刑や営業停止命令などが科される可能性があります。後ほど詳しく解説しますが、無許可営業は重大な違反であり、厳しい罰則が規定されていることを認識しておく必要があります。

2-3. 無許可営業の種類と具体例(民泊、ゲストハウス、簡易宿所など)

旅館業法の許可を受けずに宿泊サービスを提供することは、いかなる形態であっても無許可営業に該当します。近年、多様な宿泊形態が登場していますが、それぞれ旅館業法の適用対象となるか注意が必要です。主な種類と具体例を以下に示します。

宿泊形態具体例旅館業法の適用無許可営業にあたるケース
民泊Airbnb等で提供される住宅宿泊適用住宅宿泊事業法に基づく届出を行わずに営業
ゲストハウスドミトリー形式の宿泊施設適用旅館業の許可を得ずに営業
簡易宿所バックパッカー向けのカプセル型宿泊施設等適用旅館業の許可を得ずに営業
シェアハウス居住空間を共有する形態原則として非適用居住契約ではなく宿泊契約とみなされる場合
バケーションレンタル別荘やリゾートマンションの一時貸し適用旅館業の許可を得ずに営業

例えば、民泊は「住宅宿泊事業法」に基づく届出が必要ですが、この届出を行わずに営業すれば旅館業法違反となります。また、ゲストハウスや簡易宿所も、設備や運営方法によっては旅館業法の許可が必要になります。許可なく営業している場合は無許可営業に該当します。

シェアハウスは原則として居住契約のため旅館業法の適用外ですが、実態が宿泊契約とみなされる場合は適用対象となります。バケーションレンタルも同様に、許可なく営業すれば旅館業法違反となります。

多様な宿泊形態において、旅館業法の適用可否を正しく理解し、適切な手続きを行うことが重要です。

3. 旅館業法違反の罰則

3-1. 罰金刑

旅館業法違反における罰則の一つとして、罰金刑があります。無許可で旅館業を営んだ場合、罰金刑が科せられる可能性があります。旅館業法では、無許可営業に対する罰則を以下のように規定しています。

違反内容罰金
旅館業の許可を受けずに営業100万円以下の罰金

旅館業法第5条第1項に違反し、都道府県知事の許可を受けずに旅館業を経営した場合、100万円以下の罰金が科せられます。これは、無許可で旅館業を営むことの重大性を示すものです。

罰金の額は、違反の程度や期間、利益の規模などを考慮して決定されます。悪質なケースや大規模な無許可営業の場合は、高額な罰金が科せられる可能性があります。また、罰金刑以外にも、営業停止命令などの行政処分を受ける可能性もあります。

無許可で旅館業を営むことは、法律で明確に禁止されています。罰金刑は決して軽いものではなく、事業の継続に大きな影響を与える可能性があります。旅館業を始める際には、必ず事前に許可を取得し、法令を遵守することが重要です。

3-2. 営業停止命令

旅館業法違反が発覚した場合、罰金刑だけでなく、営業停止命令が下される可能性があります。これは、無許可で営業している施設や、許可を受けていても旅館業法の規定に違反している施設に対して、行政が営業の停止を命じることです。

営業停止命令は、違反の程度や内容に応じて期間が定められます。

期間内容
30日以内比較的軽微な違反の場合
6ヶ月以内悪質な違反や繰り返しの違反の場合
無期限極めて悪質な違反や、改善の見込みがない場合

例えば、施設の衛生状態が著しく悪く、宿泊客の健康に危害を及ぼす恐れがある場合や、消防設備が不備で火災発生の危険性が高い場合などは、営業停止命令の対象となります。また、近隣住民からの苦情が多数寄せられ、改善が見られない場合も、営業停止命令が出される可能性があります。

営業停止命令を受けると、その期間中は一切の営業活動を行うことができなくなります。これは、旅館経営にとって大きな痛手となるだけでなく、評判にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、旅館業法を遵守し、適正な営業を行うことが重要です。

3-3. 刑事罰と行政罰の違い

旅館業法違反には、刑事罰と行政罰の2種類があります。それぞれ内容や手続きが異なるため、ここで違いを確認しておきましょう。

区分刑事罰行政罰
目的犯罪行為に対して制裁を加え、社会秩序を維持すること違反行為を是正し、行政目的を達成すること
発動主体警察・検察都道府県知事などの行政機関
内容罰金刑(懲役刑は旅館業法にはありません)営業停止命令、許可取消
手続き捜査、逮捕、起訴、裁判行政指導、聴聞、処分
効果前科がつく前科はつきません

刑事罰は、無許可で旅館業を営んだ場合に科される罰金刑を指します。警察が捜査を行い、検察が起訴することで裁判へと進みます。有罪判決が下れば前科がつきます。

一方、行政罰は、都道府県知事などの行政機関が発動する罰です。無許可営業の是正を目的として、営業停止命令や許可の取消などが行われます。行政罰は、行政指導や聴聞を経て処分が決定されます。刑事罰とは異なり、前科はつきません。

無許可営業の場合、刑事罰と行政罰の両方が科される可能性があります。つまり、罰金を支払うだけでなく、営業停止命令を受けることもあり得るということです。旅館業法違反は重大な結果を招く可能性があるため、法令を遵守し、適正な運営を心がける必要があります。

4. 無許可営業の摘発事例

4-1. 近年の摘発事例と傾向

近年、旅館業法違反による無許可営業の摘発事例が増加しています。背景には、民泊ブームや簡易宿所の増加といった宿泊形態の多様化があります。

摘発事例の傾向具体的な内容
無許可民泊の増加Airbnbなどのプラットフォームを利用した無許可の民泊施設の摘発が増加しています。
簡易宿所の違法運営設備基準を満たしていない、または許可を得ずに簡易宿所を運営するケースが見られます。
ゲストハウスの無許可営業個室を提供する形態のゲストハウスが増加する一方で、旅館業許可を取得せずに営業している事例も存在します。

これらの事例から、無許可営業の摘発は、都市部だけでなく地方にも広がっていることがわかります。また、摘発対象も個人だけでなく、法人や不動産業者が含まれるなど多岐にわたっています。

摘発の強化は、適正な旅館経営の促進、宿泊者の安全確保、公正な競争環境の維持といった観点から重要です。無許可営業は、これらの事項を阻害する可能性があるため、厳しく取り締まられています。旅館業法を遵守し、適切な許可を取得して営業することが不可欠です。

4-2. 摘発後の流れと対応

無許可で旅館業を営んでいることが発覚し、摘発された場合、どのような流れで事態が進行し、どのように対応すべきでしょうか。迅速かつ適切な対応が求められます。

摘発後の流れは、おおむね以下のようになります。

手順内容
1. 調査関係者への聞き取り調査、現場検証などが行われます。
2. 行政指導営業停止の指導や、旅館業許可の取得に向けた指導が行われます。
3. 勧告・命令行政指導に従わない場合、勧告や営業停止命令が出されます。
4. 罰則勧告・命令に従わない場合、罰金などが科せられます。

摘発を受けた場合、まずは事実関係を正確に把握することが重要です。行政からの指示に従い、誠実に対応しましょう。

早急に弁護士や旅館業に詳しい専門家などに相談し、適切な助言を受けることをお勧めします。専門家のサポートを受けることで、状況に応じた適切な対応策を検討できます。

また、摘発を受けた事実を隠蔽したり、虚偽の報告をすることは、事態を悪化させる可能性があります。誠実な対応を心がけ、今後の旅館経営について適切な判断を行いましょう。再発防止策を講じ、コンプライアンスを遵守した運営を確立することが重要です。

4-3. 無許可営業のリスクと影響

無許可で旅館業を営むことは、様々なリスクと影響を伴います。事業者にとってはもちろん、利用者にとっても安全が脅かされる可能性があるため、決して軽視できる問題ではありません。

無許可営業のリスクと影響には、大きく分けて以下の3つの種類があります。

リスクの種類内容
法的リスク罰金や営業停止命令などの行政処分、刑事罰
社会的リスク評判の失墜、顧客の信頼喪失、風評被害
経済的リスク営業停止による収入減、違約金、訴訟費用など

例えば、摘発によって営業停止処分を受ければ、事業継続は困難になり、収入が途絶える可能性があります。また、罰金や訴訟費用などの経済的負担も大きくなります。

さらに、無許可営業が公になると、事業者の評判は大きく傷つき、顧客の信頼を失うことになります。インターネット上での風評被害も発生しやすく、事業の再開が難しくなることも考えられます。

利用者にとっても、安全面でのリスクがあります。旅館業法は、宿泊施設の衛生管理や安全対策に関する基準を定めており、許可を取得した施設は定期的な検査を受けています。無許可営業の施設はこれらの基準を満たしていない可能性があり、火災や衛生問題などのリスクにさらされる可能性があります。

これらのリスクを避けるためには、旅館業法を遵守し、適切な許可を取得することが不可欠です。

5. 合法的に旅館を経営する方法

5-1. 旅館業許可の取得手順

旅館業を合法的に始めるには、旅館業法に基づく許可を取得しなければなりません。許可取得の手順は、大きく分けて以下のようになります。

  1. 事前相談:
    まずは、管轄の保健所へ相談に行きましょう。保健所の担当者から、必要な設備基準や申請書類、手続きの流れなどについて具体的な説明を受けることができます。疑問点や不明点はこの際に解消しておきましょう。
  2. 施設整備:
    保健所との事前相談に基づき、旅館業法で定められた設備基準(客室数、浴室、トイレ、衛生設備など)を満たすように施設を整備します。消防法などの関連法規への適合も確認が必要です。
  3. 申請書類作成と提出:
    必要な書類を揃えて、管轄の保健所へ申請します。申請書類には、施設の概要、設備内容、営業計画書などが含まれます。
必要な書類の例内容
旅館業許可申請書施設の概要、営業計画などを記載
付近見取図施設の位置を示した地図
施設の平面図各階の配置図
登記事項証明書法人の場合は必要
  1. 審査:
    保健所による書類審査と現地調査が行われます。審査では、施設が旅館業法の基準を満たしているか、衛生管理体制が整っているかなどが確認されます。
  2. 許可証交付:
    審査に合格すると、旅館業許可証が交付されます。許可証は施設内に掲示する義務があります。

許可取得までの期間は、通常1~2ヶ月程度かかります。施設の規模や状況によって前後する可能性がありますので、余裕を持って準備を進めることが重要です。

5-2. 必要な設備と基準

旅館業許可を取得するには、旅館業法で定められた設備と基準を満たす必要があります。安全かつ衛生的な環境を宿泊者に提供することが求められます。具体的な設備基準は、旅館の種類(ホテル、旅館、簡易宿所など)によって異なりますが、共通する主な項目は以下の通りです。

設備基準(例)
寝室面積、換気、採光、照明、清潔さ
浴室換気、採光、清潔さ、排水設備
トイレ換気、清潔さ、流水式便器
厨房清潔さ、換気、排水設備、食品衛生法の遵守
共用部分廊下、階段、照明、避難経路の確保
消防設備消火器、自動火災報知設備、避難誘導灯
衛生管理定期的な清掃、消毒、害虫駆除

例えば、客室の面積は一人あたり原則3.3㎡以上(旅館の場合は原則7㎡以上)必要です。また、旅館の種類によっては、フロントや食堂といった設備も求められます。

さらに、旅館業法だけでなく、建築基準法、消防法、食品衛生法などの関連法規も遵守しなければなりません。例えば、建物の耐震性や防火性能、食品の衛生管理などが求められます。

これらの基準は、都道府県条例によっても異なる場合がありますので、管轄の保健所などに確認することをお勧めします。基準を満たしていない場合は、許可が下りないだけでなく、改善命令が出される可能性もあります。許可取得に向けて、事前に必要な設備と基準をしっかりと確認し、準備を進めていきましょう。

5-3. 申請書類と手続き

旅館業許可を取得するためには、必要な書類を揃えて、都道府県知事(保健所を設置している場合は保健所長)に申請する必要があります。

主な申請書類は以下の通りです。

書類名内容
旅館業許可申請書申請者の氏名、住所、旅館の名称、所在地、構造設備の概要などを記載します。
付近見取図旅館の周辺の状況がわかる地図です。
建物平面図各階の平面図で、客室数、面積、設備などを明示します。
定款または寄附行為法人の場合は必要です。
登記事項証明書法人の場合は必要です。
水質検査成績書給水設備の水質が基準に適合していることを証明する書類です。
その他消防法令適合通知書など、各自治体によって追加で必要な書類があります。

申請書類は各自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合が多いです。不明な点は、事前に管轄の都道府県または保健所に問い合わせることをおすすめします。

申請手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 事前相談:管轄の都道府県または保健所に相談し、必要な書類や手続きを確認します。
  2. 書類作成:必要な書類を正確に作成します。
  3. 申請:作成した書類を提出します。
  4. 現地調査:担当者が旅館の設備などを確認するために現地調査を行います。
  5. 許可:審査が完了し、基準を満たしていれば旅館業許可が交付されます。

許可取得までには、通常1~3ヶ月程度の期間がかかります。余裕を持って準備を進めましょう。

5-4. 許可後の運営と注意点

旅館業許可を取得後も、旅館業法に基づいた適切な運営を継続することが重要です。許可取得はゴールではなく、スタート地点と言えるでしょう。無許可営業と同様、許可後の運営においても違反行為があれば罰則の対象となります。

旅館業法を遵守し、安全で快適な宿泊環境を提供するために、以下の点に注意しましょう。

注意点内容
衛生管理の徹底定期的な清掃・消毒、寝具の交換、食品衛生管理など、宿泊者の健康と安全を守るための衛生管理を徹底しましょう。
施設の維持管理建物の安全確保、設備の定期点検、消防設備の維持管理など、快適かつ安全な宿泊環境を維持するために必要な措置を講じましょう。
宿泊者名簿の作成・保管宿泊者の氏名、住所、職業などの情報を正確に記録し、適切に保管しましょう。これは犯罪防止や安全確保の観点から非常に重要です。
表示義務の遵守旅館の名称、料金、客室数などの情報を、見やすい場所に掲示しましょう。
苦情への適切な対応宿泊者からの苦情には迅速かつ誠実に対応し、改善に努めましょう。
定期的な届出従業員の変更や施設の改修など、必要に応じて都道府県知事への届出を行いましょう。

これらの注意点を遵守することで、健全な旅館経営を継続し、宿泊者の信頼を得ることが期待できます。違反事項がないか定期的に確認し、必要に応じて専門家へ相談することも有効です。

5-5. 各種届出と変更手続き

旅館業許可を取得した後も、旅館の運営に関する変更や定期的な届出が必要です。変更内容によっては、改めて許可が必要になる場合もありますので、注意が必要です。

旅館の運営に関して変更が生じた場合は、速やかに届出を行いましょう。主な変更届出は以下の通りです。

変更事項届出内容
営業者の氏名または名称の変更旅館業営業者変更届出書
旅館の所在地の変更旅館の所在地変更届出書
構造設備の主要な変更旅館の構造設備変更届出書
その他軽微な変更旅館の軽微な変更届出書

例えば、建物の増改築など構造設備の主要な変更を行う場合は、事前に管轄の保健所へ相談し、必要な手続きを確認しましょう。変更内容によっては、改めて旅館業許可を取得する必要がある場合もあります。

また、旅館業法では、毎年1回、営業状況を報告する義務があります。営業状況報告書には、宿泊者数や売上高等の情報を記載し、期日までに提出する必要があります。

これらの届出や報告を怠ると、旅館業法違反となる可能性があります。適切な手続きを行い、法令を遵守した旅館運営を心がけましょう。届出方法や必要書類など、詳細は管轄の保健所にお問い合わせください。

6. 旅館業法に関するよくある質問(FAQ)

6-1. 許可が必要な規模は?

旅館業を営む場合は、規模に関わらず旅館業法に基づく許可が必要です。よく「小規模だから許可は不要」という誤解がありますが、これは正しくありません。宿泊料の有無や営業日数、部屋数なども関係なく、不特定多数の人に対し宿泊を提供する場合は、原則として旅館業許可を取得しなければなりません。

具体的に、どのような場合に許可が必要となるのか、代表的な例を挙げて説明します。

提供する宿泊場所の形態許可の要否
ホテル必要
旅館必要
モーテル必要
ペンション必要
民宿必要
ゲストハウス必要
民泊必要
簡易宿所必要
住宅の一部を間貸しする場合必要
山小屋・キャンプ場のコテージ必要

一見、小規模に見えるような宿泊施設でも、許可が必要となるケースが多いです。例えば、自宅の一室を間貸しする場合でも、不特定多数の人を対象に宿泊サービスを提供しているのであれば、旅館業許可が必要です。

許可が必要か迷う場合は、各自治体の担当窓口に相談することをお勧めします。規模の大小にかかわらず、無許可で旅館業を営むと罰則の対象となる可能性がありますので、事前に確認し、適切な手続きを行いましょう。

6-2. 既存の建物を利用する場合の手続きは?

既存の建物を利用して旅館業を始める場合、新規で建物を建てる場合と比べて、手続きや確認事項が異なります。主な違いは、既存建物の構造や設備が旅館業法の基準に適合しているかの確認と、必要な改修工事です。

まず、既存の建物が旅館業法の構造設備基準を満たしているかを確認する必要があります。基準には、客室の広さ、換気設備、防火設備、衛生設備など、様々な項目があります。

項目基準(例)
客室の広さ1人あたり3.3㎡以上
換気設備各室に設置
防火設備自動火災報知設備、消火器など
衛生設備トイレ、洗面所など

これらの基準を満たしていない場合は、改修工事が必要になります。改修工事には費用と時間がかかるため、事前にしっかりと確認することが重要です。

次に、旅館業許可申請の手続きを行います。既存の建物を利用する場合も、新規の場合と同様の手続きが必要です。申請書類には、建物の図面や設備の概要、消防署の検査済証などを添付します。

既存の建物を利用する場合は、以下の点に注意しましょう。

  • 建物の構造や設備が旅館業法の基準に適合しているか、事前に専門家に確認しましょう。
  • 必要な改修工事の内容と費用を把握し、計画的に進めましょう。
  • 許可申請前に、管轄の保健所や消防署に相談し、必要な手続きや書類を確認しましょう。

これらの手続きを適切に行うことで、既存の建物を利用してスムーズに旅館業を始めることができます。

6-3. 民泊との違いは?

旅館業と民泊は、どちらも宿泊サービスを提供しますが、法的な根拠や運営方法に大きな違いがあります。民泊は、旅館業法ではなく、「住宅宿泊事業法」(民泊新法)に基づいて運営されます。

主な違いは以下の通りです。

項目旅館業民泊(住宅宿泊事業法)
根拠法旅館業法住宅宿泊事業法
営業日数制限なし年間180日以内
許可・届出都道府県知事等への許可が必要都道府県知事等への届出が必要
設備基準厳しい基準あり(客室面積、浴室、トイレなど)比較的緩やかな基準(消防設備、衛生管理など)
管理者常駐義務あり不要(不在型可)

旅館業は、安全・衛生面で厳しい基準が設けられており、許可取得には一定の設備投資や運営体制の整備が必要です。一方、民泊は、比較的簡易な手続きで始められますが、営業日数に制限があり、近隣住民への配慮も求められます。

簡単に言うと、旅館業は、継続的に宿泊サービスを提供するビジネスモデルである一方、民泊は、自宅の空き部屋などを活用した副業的な側面が強いと言えるでしょう。どちらを選択するかは、事業規模や運営方針、提供したいサービス内容などを考慮して決定する必要があります。

6-4. 許可取得にかかる費用と期間は?

旅館業許可の取得にかかる費用と期間は、申請する旅館の種類や規模、地域によって異なります。

費用は大きく分けて、

  • 申請手数料
  • 登録免許税
  • 建物検査費用
  • 消防設備検査費用
  • その他、コンサルタント費用など

がかかります。

項目費用
申請手数料数千円〜数万円
登録免許税数万円〜数十万円
建物検査費用数万円〜
消防設備検査費用数万円〜
コンサルタント費用数十万円〜

申請手数料と登録免許税は自治体によって金額が定められています。建物検査費用や消防設備検査費用は、建物の規模や設備の内容によって変動します。また、専門のコンサルタントに依頼する場合は、別途費用が発生します。

期間は、申請書類の準備から許可が下りるまで、通常3ヶ月〜6ヶ月程度かかります。

  • 必要な書類の収集や作成
  • 建物の改修工事
  • 審査期間

などが期間に影響する主な要因です。

スムーズに許可を取得するためにも、事前に自治体の担当窓口に相談し、必要な手続きや費用、期間を確認することをおすすめします。余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。

7. まとめ:旅館業法を遵守し、健全な旅館経営を

旅館業を始めるにあたって、旅館業法の遵守は必須です。無許可営業は重大な違法行為であり、罰則規定も厳しくなっています。摘発事例も後を絶たず、事業への深刻な影響を与える可能性があることを認識しなければなりません。

健全な旅館経営のためには、旅館業法の理解を深め、適切な手続きを行うことが重要です。許可取得には一定の時間と費用がかかりますが、安全で快適な宿泊環境を提供するためにも、必要な投資と言えるでしょう。

旅館業法遵守のメリット無許可営業のリスク
顧客からの信頼獲得罰金・営業停止
健全な事業運営評判の低下
地域社会への貢献刑事罰

旅館業法を遵守することは、事業の持続可能性を高めるだけでなく、お客様の安全を守り、地域社会との良好な関係を築く基盤となります。

以下、旅館経営を始めるにあたってのポイントです。

  • 旅館業法の規定内容を理解する
  • 必要に応じて専門家へ相談する
  • 適切な許可・届出を行う
  • 安全で快適な宿泊施設を提供する

これらのポイントを踏まえ、旅館業法を遵守した健全な旅館経営を目指しましょう。お客様に安心して宿泊していただける環境を提供することは、旅館経営者の重要な責務です。適切な対応を心がけ、地域社会に貢献できる魅力的な旅館を作り上げていきましょう。

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