宿泊コラム

もう迷わない!旅館とホテルの5つの違い|宿泊施設の法律や定義もわかりやすく解説
1. はじめに:旅行選びの悩みどころ「旅館」と「ホテル」の違いとは?

国内旅行の宿泊施設を選ぶ際、「旅館」と「ホテル」、どちらにしようか迷った経験はありませんか? どちらも魅力的な宿泊施設ですが、その違いを明確に理解している方は意外と少ないかもしれません。
区分 | 旅館 | ホテル |
---|---|---|
イメージ | 畳敷きの部屋で布団、温泉旅館など | ベッドで洋室、シティホテルなど |
上記のように、漠然としたイメージはあっても、具体的に何が違うのか説明するのは難しいのではないでしょうか。
実は、「旅館」と「ホテル」は、提供されるサービス内容や歴史的背景、さらには法律上の定義まで明確に異なる点があります。
この章では、旅行選びをもっと楽しく、そして納得のいくものにするために、「旅館」と「ホテル」の違いについてわかりやすく解説していきます。
2. 旅館とホテル、それぞれの定義と歴史を紐解く

(1)「旅館」とは:日本の伝統的な宿泊施設 – 旅籠の歴史から紐解く
旅館とは、日本の伝統的な様式で宿泊客をもてなす宿泊施設です。その歴史は古く、江戸時代に旅人向けに宿泊や食事を提供していた「旅籠(はたご)」にまで遡ります。
時代 | 特徴 |
---|---|
江戸時代 | 参勤交代や旅行の普及とともに街道沿いに発展。庶民向けの簡素な宿から、富裕層向けの豪華な宿まで多様な形態が存在した。 |
明治時代以降 | 西洋文化の影響を受け、「ホテル」が都市部を中心に広まる。 旅籠は旅館へと名称を変え、伝統的なサービスを維持しながら近代化を遂げていく。 |
このように、旅館は長い歴史の中で旅行者のニーズに合わせて変化し続けてきました。現代では、温泉や和食、畳敷きの客室など、日本の伝統文化を体験できる宿泊施設として、国内外から多くの旅行者に愛されています。
(2)「ホテル」とは:西洋から来た近代的な宿泊施設
「ホテル」は、西洋から日本に伝わった近代的な宿泊施設です。
語源はフランス語の「hôtel」で、元々は貴族の邸宅や都市部の宿泊施設を指していました。
19世紀後半、日本が近代化を進める中で、外国人旅行者に対応するために西洋式のホテルが建設されるようになりました。
今日では、都市部を中心に、観光地やリゾート地など、様々な場所にホテルが存在しています。
時代 | 出来事 |
---|---|
1868年(明治元年) | 横浜に日本初の西洋式ホテル「グランドホテル」が開業 |
1889年(明治22年) | 東京・上野に「帝国ホテル」が開業 |
1964年(昭和39年) | 東京オリンピック開催を機に、都市型ホテルが続々と開業 |
このように、ホテルは時代のニーズに合わせて進化を遂げてきました。
3. 旅館とホテルを見分ける5つのポイント

(1) 提供されるサービスの違い:食事、布団敷き、温泉
旅館とホテルでは、提供されるサービスに違いがあります。旅館とホテルのサービスの違いを、食事・布団敷き・温泉の3つの観点から見ていきましょう。
サービス | 旅館 | ホテル |
---|---|---|
食事 | 朝夕2食付きが基本 | 朝食のみ、または食事なし |
布団敷き | 夕食後に係が敷く | 自分でベッドメイク |
温泉 | 大浴場がある場合が多い | ない場合もある |
旅館では、宿泊客にくつろいでもらうため、きめ細やかなサービスを提供していることが特徴です。例えば、食事は朝夕2食付きが基本で、夕食後には係の人が部屋に布団を敷いてくれます。また、大浴場を完備している旅館も多く、温泉を楽しむことができます。
一方、ホテルでは、宿泊客が自分のペースで過ごせるように、必要最低限のサービスにとどめている場合が多いです。
(2) 客室の設備:畳敷き、ベッド、バス・トイレ
旅館とホテルでは、客室の設備にも違いが見られます。
最もわかりやすい違いは、床が畳敷きかフローリングかという点でしょう。
一般的に、旅館は畳敷きの和室、ホテルはフローリングにベッドを置いた洋室であることが多いです。
設備 | 旅館 | ホテル |
---|---|---|
床 | 畳敷き | フローリング |
寝具 | 布団 | ベッド |
バス・トイレ | 共有の場合もある | 客室に完備されている場合が多い |
近年では、旅館でもベッドを導入した客室や、ホテルでも和室を用意している場合も少なくありません。
しかし、旅館は畳敷きの部屋で布団に寝て過ごすという、日本ならではの宿泊体験ができる点が大きな魅力と言えるでしょう。
(3) 建築様式と内装:伝統的な和の空間、近代的な洋の空間
旅館とホテルは、建築様式や内装にも違いが見られます。
区分 | 旅館 | ホテル |
---|---|---|
建築様式 | 木造建築、瓦屋根、数寄屋造りなど | 鉄筋コンクリート造、高層建築など |
内装 | 畳敷き、障子、襖、床の間など | カーペット敷き、ベッド、ソファなど |
旅館は、日本の伝統的な建築様式である木造建築や瓦屋根が多く、客室は畳敷きで、障子や襖、床の間などが設置されていることが一般的です。一方、ホテルは、近代的な鉄筋コンクリート造や高層建築が多く、客室はカーペット敷きで、ベッドやソファなどが置かれています。
このように、旅館とホテルでは、建築様式や内装にもそれぞれの特徴があります。旅行の際には、自分がどのような雰囲気の空間に滞在したいかを考慮して選ぶと良いでしょう。
(4) 立地条件:温泉街、観光地、都市部
旅館とホテルは、その立地条件にも違いが見られます。
施設 | 立地 | 特徴 |
---|---|---|
旅館 | 温泉街 | 温泉街に位置し、温泉や自然を満喫できる |
旅館 | 観光地 | 寺社仏閣や史跡に近いなど、観光に便利な立地 |
ホテル | 都市部 | 駅近など交通アクセスが良く、ビジネスやショッピングに便利 |
ホテル | 観光地 | リゾート地など、多様なニーズに対応 |
このように、旅館は温泉街や観光地など、自然や文化に触れられる場所に立地していることが多いです。一方、ホテルは都市部や観光地など、アクセスや利便性を重視した場所に多く見られます。
(5) 宿泊料金:サービス内容や立地条件によって異なる
旅館とホテルでは、宿泊料金も大きく異なる場合があります。一般的に、旅館の方がホテルよりも宿泊料金が高くなる傾向があります。 これは、旅館が提供するサービス内容の充実度や、温泉地などの立地条件が影響していると考えられます。
項目 | 旅館 | ホテル |
---|---|---|
宿泊料金 | 高め | 安め |
サービス | 食事付き、布団敷きサービスあり | 食事なし、布団敷きサービスなし |
立地 | 温泉街、観光地 | 都市部、駅周辺 |
旅館では、宿泊料金に夕食・朝食が含まれている場合が多く、さらに布団敷きサービスなど、きめ細やかなサービスが含まれているため、宿泊料金が高額になる傾向があります。 一方、ホテルは宿泊料金に食事が含まれていないことが多く、シンプルながらも快適な滞在を提供することに重点を置いているため、比較的宿泊料金がリーズナブルな傾向です。
4. 旅館とホテル、それぞれのメリット・デメリットを比較!旅行の目的に合わせて選ぼう

(1) 旅館のメリット・デメリット
旅館に宿泊するメリット・デメリットは以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | ・ 日本ならではの「おもてなし」を受けられる ・ 温泉や周辺の自然など、その土地の魅力を満喫できる ・ 畳の部屋でくつろげる |
デメリット | ・ ホテルと比較して料金が高め ・ 部屋のデザインや設備が古い場合がある ・ プライバシーが確保しづらい場合がある |
旅館は、布団敷きや食事の提供など、きめ細やかなサービスで「おもてなし」の心を感じられる点が魅力です。また、温泉地に多く立地しているため、温泉やその土地ならではの自然を満喫できるのもメリットと言えるでしょう。
一方で、ホテルと比較して宿泊料金が高めに設定されている場合が多い傾向にあります。また、建物の老朽化や設備の古さが気になる場合もあるかもしれません。さらに、他の宿泊客と共有スペースを利用することも多いため、プライベート空間を重視したい場合は注意が必要です。
(2) ホテルのメリット・デメリット
近代的な設備とサービスが充実しているホテルは、快適さと利便性を重視する旅行者に最適です。 しかし、その反面、旅館とは異なる点もいくつかあります。 ホテルのメリット・デメリットを理解した上で、宿泊施設を選ぶようにしましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
洋室中心でベッドなので、和室に抵抗がある人でも快適に過ごせる | 旅館と比べると、日本らしさを感じにくい場合がある |
サービスが標準化されているため、安心して宿泊できる | サービスが画一的で、温かみに欠けると感じる場合がある |
都市部や観光地など、アクセスが良い場所に立地していることが多い | 比較的料金が高め |
ホテルは、利便性や快適さを求める旅行者にとって、多くのメリットがあります。 一方で、画一的なサービスや料金の高さなど、デメリットに感じる点もあるかもしれません。 これらのメリット・デメリットを踏まえて、自身の旅行の目的に最適な宿泊施設を選択しましょう。
5. 法律で定義!旅館業法と旅館・ホテルの関係

(1) 旅館業法とは何か?
旅館やホテルなど、宿泊施設を営業するには、「旅館業法」という法律を守ることが義務付けられています。旅館業法は、宿泊施設における衛生管理や安全対策などを定めることで、旅行者にとって安全・安心な宿泊環境を確保することを目的としています。
具体的には、次のような項目が定められています。
項目 | 内容例 |
---|---|
営業許可 | 宿泊施設を営業するには、都道府県知事の許可が必要 |
施設基準 | 客室の広さや設備、消防設備などに関する基準 |
衛生管理 | 寝具の消毒や清掃、食品衛生に関する基準 |
安全管理 | 防犯対策、避難経路の確保などに関する基準 |
旅館業法は、宿泊施設の営業者と利用者双方にとって重要な法律と言えます。
(2) 旅館業法における旅館・ホテルの分類
実は、旅館業法では「旅館」と「ホテル」を明確に区別しています。 具体的には、以下の表の通り、施設の構造や設備によって分類されます。
旅館業法上の区分 | 説明 |
---|---|
旅館 | 和式構造が基本で、客室に畳を敷き詰め、布団を敷いて寝る構造を持つもの |
ホテル | 洋式構造が基本で、客室にベッドや椅子、テーブルなどを設置しているもの |
旅館とホテルでは、求められる設備基準が異なります。 例えば、ホテルにはフロントやロビーの設置が義務付けられていますが、旅館には義務付けられていません。 このように、旅館業法では、利用者が安全かつ快適に宿泊できるよう、それぞれの施設に合わせた基準が設けられています。
6. 【意外と知らない】旅館・ホテル以外の宿泊施設

(1) 簡易宿泊所
「簡易宿泊所」は、旅館やホテルとは異なる独自のルールに基づいて営業されている宿泊施設です。 比較的リーズナブルな料金で宿泊できることが多く、バックパッカーや長期滞在者などに人気があります。 宿泊日数が短い旅行者にとっても、コストを抑えたい場合に魅力的な選択肢となるでしょう。
簡易宿泊所は、旅館業法では「宿泊する場所を多数人に提供することを目的とする施設」と定義されており、以下のような特徴があります。
特徴 | 説明 |
---|---|
寝室の広さ | 原則として、宿泊者1人あたり3.3平方メートル以上(東京都の場合) |
共有スペースの設置 | トイレ、洗面所、浴室などを共有スペースとして設置 |
サービス | 食事の提供や布団敷きなどのサービスは簡略化されている場合が多い |
料金 | 旅館やホテルに比べて比較的安価 |
簡易宿泊所は、都市部から観光地まで、様々な場所に点在しています。 宿泊施設を選ぶ際には、それぞれの施設のルールや特徴を事前に確認しておくことが大切です。
(2) リゾートホテル
リゾートホテルとは、観光地などに立地し、リゾート気分を満喫できる施設やサービスを備えた宿泊施設です。
具体的には、以下のような特徴があります。
特徴 | 説明 |
---|---|
立地 | 海辺、高原、温泉地など、自然豊かなリゾート地 |
施設・サービス | プール、スパ、ゴルフ場、レストラン、アクティビティなど、滞在を楽しめる施設やサービスが充実していることが多い |
客室 | 広々とした客室、バルコニー、オーシャンビューなど、リゾート気分を盛り上げる設備 |
このように、リゾートホテルは、日常を忘れてゆったりと過ごしたい旅行者に最適な宿泊施設と言えるでしょう。
(3) ビジネスホテル
ビジネスホテルは、主にビジネスマンをターゲットにした宿泊施設です。そのため、都市部や駅周辺などアクセスが良い場所に多く立地しています。宿泊料金を抑える代わりに、シンプルなサービスと機能的な客室を提供している点が特徴です。
特徴 | 説明 |
---|---|
立地 | 都市部や駅周辺などアクセスが良い場所 |
ターゲット | ビジネスマン |
サービス | シンプルなサービス(無料Wi-Fi、朝食など) |
客室 | コンパクトで機能的、デスクやインターネット環境が充実していることが多い |
料金 | 比較的リーズナブル |
近年では、女性専用フロアを設けたり、大浴場やレストランを併設したりするなど、サービスの向上を図るビジネスホテルも増えています。
(4) カプセルホテル
カプセルホテルは、その名の通りカプセル型の個室が並んだ宿泊施設です。1979年に日本で誕生した、まさに日本独自の宿泊スタイルと言えるでしょう。
カプセルホテルの特徴 | 説明 |
---|---|
部屋 | カプセル型の個室で、ベッドと最低限の設備のみ |
共用設備 | トイレ、シャワー、洗面所などは共用 |
料金 | 一般的に他の宿泊施設より安価 |
利用シーン | 宿泊費を抑えたい旅行者、終電を逃した人など |
従来のカプセルホテルは男性専用のイメージが強かったですが、近年では女性専用のフロアやカプセルホテルも増えています。また、個室内の設備を充実させたり、共用スペースにラウンジを設けたりするなど、快適性を追求したカプセルホテルも登場しています。
(5) ゲストハウス
近年、人気が高まっている宿泊施設の一つに「ゲストハウス」があります。ゲストハウスは、他の宿泊施設と比べてどのような特徴があるのでしょうか?
ゲストハウス最大の特徴は、宿泊者同士の交流が生まれやすい点にあります。ドミトリーと呼ばれる相部屋形式の客室が多く、共有スペースで他の宿泊者と交流を楽しむことができます。
項目 | 説明 |
---|---|
客室タイプ | ドミトリー、個室 |
料金 | 格安〜 |
設備 | 共有キッチン、シャワー、トイレなど |
サービス | 基本セルフサービス |
雰囲気 | アットホーム、交流重視 |
ゲストハウスは、宿泊費を抑えたいバックパッカーや、一人旅で他の旅行者と交流したい方に人気です。アットホームな雰囲気で、旅の情報を共有したり、新たな出会いを楽んだりすることができます。
7. まとめ:あなたの旅の目的にぴったりの宿を見つけよう!

この記事では、旅館とホテルの違いについて、定義や歴史、見分け方、メリット・デメリット、法律、その他の宿泊施設といった多角的な視点から解説してきました。
旅行の目的やシーンに最適な宿選びの参考になったでしょうか?
最後に、それぞれの宿泊施設が持つ代表的な魅力を下記にまとめます。
宿泊施設 | こんな人におすすめ! |
---|---|
旅館 | ・温泉や和食など、日本の伝統文化に触れたい ・丁寧なおもてなしを受けたい ・旅先でゆったりとくつろぎたい |
ホテル | ・観光やビジネスなど、目的に合わせて利便性を重視したい ・スタイリッシュで機能的な空間に泊まりたい ・プライベートな時間を大切にしたい |
今回の内容を踏まえて、旅館とホテルの特徴を理解した上で、自分にぴったりの宿を見つけて、最高の旅行体験を!